「株式投資や投資信託などで資産を増やしたいけれども、どの銘柄を選べば良いかわからない」と考えている人も多いのではないだろうか。そのような人には、投資先の選定や運用などをAIがサポートしてくれる「ロボアドバイザー」がおすすめだ。
ロボアドバイザーであれば、投資の知識や経験が浅い人でも、効果的に資産を形成できる可能性がある。本記事では、ロボアドバイザーの特徴やメリット、デメリット、利用が向いている人の特徴などをわかりやすく解説していく。

ロボアドバイザーとは
ロボアドバイザーとは、簡単にいえば投資家の資産運用をAI(人工知能)がサポートするサービスだ。年齢や年収、保有する金融資産額などの質問に答えると、投資家に応じた資産の組み合わせ(ポートフォリオ)を提案してくれる。
ロボアドバイザーには、「アドバイス型」と「投資一任型」の2種類がある。アドバイス型は、投資家に対して最適と考えられる資産配分のアドバイスのみをするロボアドバイザーだ。投資一任型は、AIが提案したポートフォリオを投資家が承認すると、実際に銘柄を買い付けてくれる。
また、定期的に金融商品の組み合わせの見直し(リバランス)をしてくれるのも、投資一任型の特徴だ。たとえばポートフォリオ内の株式や債券、投資信託などの価格が変動して当初の割合が崩れてしまったとき、投資一任型であれば最適な配分となるように銘柄や口数を選定してくれる。
アドバイス型のロボアドバイザーは、原則として無料で利用できるが、提案されたポートフォリオに沿って実際に商品を買い付けるのは投資家自身である。対して投資一任型は、手数料はかかるものの、資産運用のすべてを任せることが可能だ。
ロボアドバイザーのメリット
ロボアドバイザーを利用するメリットは、主に以下の3点だ。
- 知識や経験がなくても投資ができる
- 比較的低コストで利用できる
- 少額から投資をはじめられる
一般的な投資では、金融商品の選定や商品の発注、リバランスなどをすべて投資家自身がしなければならない。商品を選定したりポートフォリオの配分を考えたりするためには、投資の知識や経験が求められる。それがロボアドバイザーであれば、ポートフォリオの構築から商品の買い付け、リバランスまでのすべてが自動で行われる。
またロボアドバイザーは、ファンドラップのような類似サービスと比較して低コストで利用が可能だ。ファンドラップは、AIではなく人が投資のアドバイスや商品の買い付けを代行してくれるサービスである。ファンドラップの手数料は、預かり資産のおおむね3%であるが、投資一任型のロボアドバイザーの場合、1%程度で利用できる。
ロボアドバイザーの最低入金額は、高くても10万円ほどだ。100円や500円から始められるものもあるため、手持ち資金が少ない人でも気軽に投資を始めやすいといえる。
ロボアドバイザーのデメリット・注意点
ロボアドバイザーのデメリットと注意点は、主に以下のとおりである。
- 元本が保証されているわけではない
- 短期間で利益が見込めるわけではない
- NISAに対応していない場合がある
ロボアドバイザーは、投資信託やETFを通じて株式や債券、不動産などで運用するため、元本が保証されているわけではない。AIが提案してくれたポートフォリオとはいえ、必ず利益が出るわけではなく元本を下回る可能性はある。
またロボアドバイザーは、長期間にわたって着実に資産を増やすことを目的としたサービスであるため、株式やFXなどとは異なり短期間で高い利益は期待できない。ロボアドバイザーの利用を始めたあとは、利益や損失が発生したとしてもすぐに解約・売却をしないほうが良いだろう。
NISAは、一定金額までの投資に対する利益が非課税となる制度だ。株式や投資信託などの取引で利益が出た場合、通常であれば20.315%の税金がかかるが、NISA口座を通じ購入した商品については非課税となる。ロボアドバイザーの多くはNISAに対応していないため、利益が発生したときは基本的に税金の支払いが発生する。
ロボアドバイザーがおすすめな人
ロボアドバイザーの利用が向いている人、おすすめの人の例は、以下のとおりだ。
- 投資する時間を確保するのが難しい人
- 初めて投資をする人
- 長期的に資産形成をしたい人
投資一任型のロボアドバイザーであれば、ポートフォリオの構築から商品の買い付け、リバランスまでのすべてを任せられる。運用で損をしないように、税金の調整をしてくれるサービスもあるのだ。
仕事や家事、子育てなどで商品を選んだり知識を付けたりする時間が取れない人は、 ロボアドバイザーを利用して投資をすると良いだろう。また投資の経験が浅く、銘柄を選ぶのが困難である人もロボアドバイザーを利用することで、効果的に資産形成が期待できる。
ロボアドバイザーは、長期的な資産形成を前提としたサービスだ。「子どもの進学に備えて資金を貯めておきたい」「老後の生活資金を準備したい」など、時間をかけてまとまった資金を準備しようと考えている人は、ロボアドバイザーの利用を検討すると良い。
なお一定の投資経験があったとしても、自分自身が許容できるリスクを知りたい人や、理想的な資産配分を教えて欲しい人は、ロボアドバイザーの提案を参考にしてみるのも方法だ。
ロボアドバイザーをおすすめしない人
一方で以下に当てはまるような人は、ロボアドバイザーの利用があまり向いていない、おすすめできない可能性がある。
- 金融商品を選ぶのが好きな人
- 投資の知識や経験を身につけたい人
市場の動向や企業の業績などを調べ、自分自身で金融商品を選ぶことが好きな投資家もいる。ロボアドバイザーは、投資家の代わりにAIがポートフォリオの構築や商品の選定をするため、自分自身で調べて商品を選びたいと考える投資家にとってはあまり向いていないといえるだろう。
また、ロボアドバイザーを使うと、投資家自身は自分で投資戦略のすべてを考えるわけではなくなる。とくに投資一任型を選ぶと、投資家は商品の買い付けやリバランスもしなくて良くなるため、一般的な投資と比べて知識や経験が身につきにくいと考えられる。投資の経験を積み、知識を磨きたいのであれば、自分自身で考えて投資先を選んだほうが良いだろう。
代表的なロボアドバイザーを比較
最後に2022年1月現在における代表的なロボアドバイザーの特徴やサービス内容などを比較していく。
WealthNavi(ウェルスナビ)
WealthNaviは、2021年3月末時点において、預かり資産運用者数が No.1のロボアドバイザーである。
〇WealthNaviの特徴
WealthNaviは、入金・出金・積立のすべてがスマホでできるため、スキマ時間で手軽に取引や資産状況の確認ができる。最低投資金額は1万円であるため、気軽に投資を始めたい人におすすめできるロボアドバイザーだ。手数料は預かり資産の1%だ。
WealthNaviが提供するポートフォリオは、投資家のリスク許容度に応じて1〜5に分かれている。数値が低いほど、ポートフォリオに含まれる安全資産の割合が高くなり、数値が高くなるにしたがってハイリスクな資産の割合が増えていく。
またWealthNaviには「おまかせNISA」が搭載されており、ロボアドバイザーとしては珍しくNISAの非課税メリットを活用した投資が可能だ。
楽ラップ
楽ラップとは、楽天証券が提供するロボアドバイザーだ。
〇楽ラップの特徴
- 手数料のコースを選択できる
- 5種類の運用コース
- 下落ショックを軽減する「DRC機能」
楽ラップでは、手数料のコースを「固定報酬型」と「成功報酬併用型」から選択できる。固定報酬型は、預かり資産に対して0.715%の手数料がかかるコースだ。ロボアドバイザーの平均的な手数料が、預かり資産の1%程度であるため、楽ラップの料率は低いといえる。成功報酬型は、預かり資産の0.605%と、運用益の5.5%の手数料が発生するコースだ。
楽ラップの運用コースは、慎重に運用したい人向けの「保守型」や、積極的に収益を追求したい人向けの「かなり積極型」などの全5種類がある。また保守型以外には、下落ショック軽減機能(DRC機能)を付けられる。
下落ショック機能があると、株式市場の値動きが大きい状況が続いたとき、ポートフォリオに占める株式の比率が自動で引き下げられるため、損失が緩和される可能性がある。
THEO+ docomo(テオプラス ドコモ)
THEO+ docomoは、投資一任型のロボアドバイザー「THEO」を提供する株式会社お金のデザインと、NTTドコモが提携して提供するサービスだ。特徴は、以下のとおりである。
〇THEO+ docomoの特徴
- 資産運用しながらdポイントがたまる
- 手数料は年0.715〜年1.10%
- 自動で行われる節税機能「Tax Optimizer」
THEO+ docomoであれば、運用資産額に応じて毎月dポイントが付与される。またドコモ回線を契約していれば、獲得できるポイントは1.5倍となる。手数料は、年0.715〜年1.10%であり、資産の額が増えるほど手数料率は低くなっていく仕組みだ。
Tax Optimizerとは、実質利益が発生しているときに、自動的に銘柄を売却して税負担を軽減してくれる制度だ。たとえば配当金の受け取りやリバランスでの取引で実質利益が出たとき、ポートフォリオ内で含み損が出ている銘柄を売却して損失を発生させることで、税負担を軽減してくれる。
ロボアドバイザーを使う際はメリット・デメリットを正しく把握しておこう
ロボアドバイザーは、忙しい人や投資初心者の資産形成の一助となる可能性がある。しかし、1%の手数料でも長期の運用で資産が積み重なれば軽視できなくなることも考えられる。ロボアドバイザーを使う際は、自分で投資戦略を立てて実行する手間や時間の節約と、手数料などメリット・デメリットの両方を考慮しよう。
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