仮想通貨を支えるマイニングとは

ビットコイン(BTC)など仮想通貨の「マイニング」とは、ブロックチェーンに新たな取引記録を追加する際に、その内容に不正や改ざんがないか検証・承認することで、その報酬として仮想通貨を獲得する行為だ。マイニングとは日本語で採掘を意味する。マイニングをする人をマイナーと呼び、仮想通貨取引の真正性はマイナーによって保たれている。仮想通貨の種類によってマイニングの内容は多少異なり、ネム(NEM)はこの承認作業をマイニングではなくハーベスティング(収穫)と呼び、リップル(XRP)など一部の仮想通貨はマイニングをしない。ここではビットコインのマイニングについて説明する。

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ビットコインのマイニングとは

ビットコインでは、約10分間の間に世界中で行われたトランザクション(取引データ)をまとめて1つの「ブロック」と呼ばれる固まりに格納する。そして、過去のブロックと時系列でつなぎ合わせて、全ての取引履歴を繋げたブロックチェーン上で管理される。新たなブロックを1つ生成する時、トランザクションが過去のものも含め全て正しいものであることを検証・承認されると、検証を行ったものに対して新規にビットコインが発行される。このビットコインはブロックの検証作業を一番早く行ったマイナー1人に報酬として取引手数料とともに支払われる。これがビットコインのマイニングだ。1人にしか支払われないため、日々トランザクションの検証や承認の計算合戦が行われている。

マイニング報酬は2021年2月現在6.25BTCであり、約4年に1度のペースで1ブロックあたりの報酬は半減するようプログラムされている。ビットコインの発行枚数は2100万枚と決まっており、2140年に全てのビットコイン発行が終了する。それ以降はトランザクションを検証するインセンティブ(ビットコイン報酬)が取引手数料のみになるため、ネットワークを検証するインセンティブが低くなる。そのため、どのようにビットコインのネットワークを維持していくのかの議論が将来行われるだろう。

マイニングの仕組み

マイナーはブロックを生成するために、具体的には何をしているのか。

1つのブロックには、主にいつ・どこで・誰がいくら送ったという「取引データ」と、1つ前のブロック情報の要約を表す「ハッシュ値」、マイナーが生成する新たなブロックのランダムな値である「ナンス値」が書き込まれる。重要なのはこの「ナンス値」を見つけることだ。マイナーからはナンス値の正解はわからないため、32ビットの適当な数値をブロックに入れるしかない。そのため、マイニングではマイニング専用のコンピューターを使って、他のマイナーに先んじて正解のナンス値を一番に見つける膨大な計算競争をしている。ブロックの生成と報酬の獲得は一番にナンス値を見つけたマイナーにのみに与えられる権利だ。ナンス値はハッシュ関数にいろいろな値を総当たりで代入して求めている。

ナンス値を見つけ新たなブロックをブロックチェーンにつなぐのがマイナーの役割
ハッシュ関数とは、入力したデータを元に、全く別の文字列(=ハッシュ値)を出力する関数だ。ビットコインのブロックチェーンのハッシュ関数はSHA256が採用されている。例えば「コインテレグラフ」のSHA256ハッシュ値は「6241397ea07c1b09c524fa6c84394817759288c8db45856e387d37173386a824」となる。入力を「コインテレクラフ」と一文字変えると出力は「c3af60f47119d924d9a0ea5039279620a967521e2ee69c4a26bd709aafb27eba」となり全く別の値になる。

ビットコインでは、ハッシュ値をブロックに含めるためには、一定数以上の0がハッシュ値の先頭に並んでいるという条件がある。例えば、21年2月15日午前7時58分に生成された67万637番目のブロックのハッシュ値は「000000000000000000022b7feae833431ff23d433fdf920af05f053b4de343e2」だ。

この条件を満たすハッシュ値を出力するための入力値(=ナンス値)を、マイナーは数字を一つ一つハッシュ関数に総当たりで代入して求めている。総当たりで代入しないといけないのは、ハッシュ値からは入力データを逆算できないように設計されているからだ。

ナンス値を最初に発見した人にビットコイン報酬が支払われるコンセンサスアルゴリズムをPoW(プルーフ・オブ・ワーク=仕事量の証明の意味)と言うが、これはナンス値を求めるのに莫大な計算量を投入することに由来している。

誰がマイニングしているのか?

ビットコインのマイナーには、マイニングの計算力を提供できる人であれば誰でもなれる。51%攻撃と呼ばれるビットコインのブロックチェーンに対するハッキングを防ぎ、ネットワークをより強固に保つためには、マイナーの数は多い方が良く、世界に分散していることが望ましい。しかし、ビットコインのマイニングは電力消費が大きく、電気代の高い国でマイニングをすると損失を出すことがあるため、マイナーは電気代の安い国・地域や熱効率の高い北国に偏在している。


マイニングの種類

マイニングには、「ソロマイニング」「プールマイニング」「クラウドマイニング」の3種類がある。

ソロマイニング

ソロマイニングは1人でマイニングをすることをいう。ビットコインが誕生したばかりの時は自宅で使うようなPCでもマイニングが可能だったが、マイニング用に高速かつ低消費電力に作られた「ASIC(Application Specific Integrated Circuit)」搭載のマイニング機の登場やマイニング計算の難易度(ディフィカルティ)の上昇により、自宅用PCでは報酬獲得はほぼ見込めなくなった。最新のASICを使っても個人がマイニングに成功するには十数年かかる可能性が高く、電気代ばかりがかかり赤字になるだろう。

プールマイニング

プールマイニングは現在主流の方法で、チームでマイニングをすることをいう。各人がインターネットを通じて計算能力を提供し合い、チーム内の誰かが獲得したマイニング報酬は、提供した計算能力に応じてメンバー全員に分配される。実際にマイニングできなくても報酬が得られ、ソロマイニングより安定した収入が期待できるが、プールマイニングでも利益を出すためには高性能なGPUやASICが必要になる。マイニングを行う集団をマイニングプールと言い、代表的なビットコインのマイニングプールにはF2PoolPoolinAntPoolがある。マイニングプールに参加するには、手数料として報酬の数%をマイニングプールの管理者に支払う必要がある。

クラウドマイニング

クラウドマイニングは、マイニング企業にお金を支払いマイニングを代行してもらう方法。ソロマイニングとプールマイニングは自分でマイニング機を用意し管理する必要があるが、クラウドマイニングではマイニング企業がそれら全ての作業を行う。そのため初期費用が抑えられ、マイニング機を管理する知識などが不要だ。ユーザーは支払った金額、購入したハッシュパワー(計算量)に応じてマイニング報酬の分配を受ける。自分でマイニングをするというよりは投資に近い。代表的なクラウドマイニング企業には、Genesis MiningHashFlareがある。手軽に始められるが手数料が高く、また、多くは1年契約を結ぶため、相場が悪くなり赤字になりそうでもマイニングをやめることができない、企業が倒産するなどのリスクがある。

マイニングのやり方

マイニングは仮想通貨のネットワークを支える重要な要素だ。そのため、報酬目的以外にも、技術に関心がある人、仮想通貨を支持したい人はぜひ試してみてほしい。

マイニングに必要な道具

自宅でマイニングをするのに必要な道具は以下のとおり。

  • マイニング用ASIC搭載マイニング機 or グラフィックボード(GPU)
  • パソコン
  • マイニングソフトウェア
  • 仮想通貨ウォレット

ASIC搭載マイニング機Antminer S19 Pro

ASIC搭載マイニング機Antminer S19 Pro 出所:BITMAIN

マイニング用ASIC搭載のマイニング機でもグラフィックボードでも、通常はマイニングできる通貨が複数ある。例えば、マイニングアルゴリズムがSHA256だったら、ビットコイン、ビットコインキャッシュ、ビットコインSVなどをマイニング可能だ。ASICのマイニング機は1台30万〜70万円するものが多く高額だが、一般的にビットコインのマイニングにはASICが向いている。
ASICは買えないけれど家にグラフィックボードがあるという人は、そのグラフィックボードでマイニングできる通貨を調べてみてほしい。収益化できる通貨も中にはあるだろう。イーサリアムはビットコインと比較してGPUによるマイニングが活発だ。

パソコンとソフトウェアはマイニング機をビットコインのネットワークに接続したり、マイニング状況をモニタリングしたりするのに使う。マイニングソフトウェアは、ハッシュパワー取引サービスのナイスハッシュ(NiceHash)は初心者にも優しいインターフェースで使いやすい。提供したハッシュパワーに応じてマイニング報酬を獲得でき、効率よく稼げる通貨を自動で選択してくれる。

仮想通貨ウォレットはマイニング報酬を受け取るのに必要で、取引所で使っているアドレスでも代用可能だ。

マイニングに必要な知識

マイニングに必要な知識は以下のとおり。

  • ハッシュレート
  • ディフィカルティ
  • マイニングソフトや機器のセットアップに関する知識

ハッシュレートとは、マイニングの採掘速度を表す数値のことだ。マイニング機器のマイニング効率やビットコインなどの仮想通貨のマイニング速度を測る際に用いられる。マイニング機のハッシュレートが110Th/s(テラハッシュ セカンド)と表示されていたら、ナンス値を求める計算を1秒間に110兆回できることを意味する。通貨全体のハッシュレートはBlockchain.comなどのサイトで確認でき、2021年2月のビットコインのハッシュレートは過去最高の158EH/s(エクサハッシュ セカンド、1エクサ=100京)だ。

ビットコインのハッシュレートの変遷

ディフィカルティとは、マイニング計算の難易度のことだ。ビットコインは10分に1回の間隔でナンス値を見つけられるように設定されている。しかしハッシュレートなどが高くなり計算能力が上がると、ナンス値が早く見つかってしまう。そのため、約2週間に一度自動的にこのディフィカルティが調整される。ビットコインのブロックが10分に1つのペースで生成されるという意味は、10分間の取引データを機械的にまとめてブロックを生成しているのではなく、正確にはナンス値を求める計算に約10分かかるということだ。このディフィカルティもマイニングの競争率を知るのに役立つ指標だ。

ビットコインのディフィカルティの変遷

また、マイニングソフトや機器のセットアップに関する知識も必要になる。マイニングするとマシンが熱を持つため冷却効率を考えて組み立てたり、ソフトウェアでマイニング機の動作速度や消費電力を調節するなどの管理が必要になる。パソコンにある程度詳しくないとマイニングに苦戦するかもしれない。


マイニングは儲かるのか

具体的にマイニングではどれくらい儲けられるのかF2Poolのサイトを元に計算してみる。(21年2月 BTC=484万8000円、ETH=18万5000円、MONA=269円 東京電力の料金プランを元に1kWh当たりの電気代29.58円で計算)

ASIC

Antminer S19 Pro(ビットコインなどアルゴリズムSHA256採用通貨向け)

ビットコインをマイニングする場合
スペック:ハッシュレート 110Th/s、消費電力3250W、20年5月発売
収益 3481円ー 電気代 2294円 =利益 1187円/日

24時間稼働すれば1カ月で収益は約3万5000円になる。Antminer S19 Proは公式サイトの価格は約40万円(関税、送料抜き)で、元をとるだけでも1年近くかかる計算だ。ビットコイン価格が高騰している最中、同機種は入手困難なようで海外の各通販サイトでは70万円〜100万円で売買されている。ASIC耐性のないビットコインでこの結果であるため、通常のグラフィックボードでマイニングした際は収益化はほとんど困難になる。

GPU

NVIDIA GeForce GTX 1080 Ti(イーサリアムなどのアルゴリズムEthash、モナコインなどのアルゴリズムLyra2REv2採用通貨向け)

イーサリアムをマイニングする場合
スペック:ハッシュレート 440Mh/s、消費電力2150W、17年12月発売
収益 5083円ー 電気代 1518円 =利益 3565円/日

24時間稼働すれば1カ月間の収益は約10万7000円になる。NVIDIA GeForce GTX 1080 TiのGPUを採用したグラフィックボードは高くて10万円程度だ。中古品も多数ある。特にグラフィックボードが家に余っている人はイーサリアムのマイニングにチャレンジしてみても良いだろう。

モナコインをマイニングする場合
スペック:ハッシュレート 512Mh/s、消費電力2150W
収益8.47円ー 電気代 1518円 =損益 1509円/日

24時間稼働すれば1カ月間の損益は約4万5000円になる。別のGPUを選んだりモナコインに注力しているマイニングプールを選べば結果はましになる可能性はある。

ハッシュレートやディフィカルティ、仮想通貨価格は常に変化しているため、マイニング収益も変動的になる。ここの計算はそれらの変動を考慮しておらず、また、マイニングの収益が過去最高レベルの21年2月に計算していることに留意してほしい。

マイニングの収益にかかる税金

マイニングで得た仮想通貨には税金がかかる。マイニングの所得計算で注意が必要なのは、マイニングした仮想通貨を受け取った時点とマイニングした仮想通貨を売却した時点の2回収益を計算する点だ。

例えば、1BTC=100万円の時に、0.1BTCをマイニングしたら10万円が収益となる(1回目の収益計算)。さらに1BTC=120万円に値上がりした時に、その0.1BTCを売却した場合、12万円(値上がり後)-10万円(取得時点の価格)=2万円が売却益となる(2回目の所得計算)。
マイニング時の収益である10万円と売却益の2万円を合わせた、計12万円から経費(マイニング機や電気代)を引いたものが課税対象になる。

仮想通貨取引と同様、マイニングによる収益は雑所得に分類される。給与所得など他の所得と合算して総所得を求める必要がある。

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