インデックス投資は、個人の資産形成で紹介されることが多い投資方法の1つだ。仕組みがシンプルで少額から投資を始められるため、初心者でも始めやすい。
ただし、投資である以上は元本割れする可能性もある。実際にインデックス投資を始める前に、特徴や注意点について理解を深めておくことが大切だ。
今回は、インデックス投資の仕組みやメリット・デメリット、投資初心者の資産形成におすすめな理由について詳しく解説する。
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インデックス投資とは
インデックス投資とは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった特定の指数に連動する投資信託(インデックスファンド)を購入して、市場全体に投資する方法だ。インデックス投資の手法は「パッシブ運用」とも呼ばれる。
個別株へ投資する場合、多くの上場企業の中から投資銘柄を選ばなくてはならない。投資銘柄の株価によって運用成果は変わるため、投資先企業の業績や事業内容などを常にチェックする必要がある。
一方、インデックス投資は、投資対象となる指数の値動きによって資産が増減する。国内外の政治や経済、社会のニュースに影響を受けるので、インデックス投資なら初心者でも情報収集しやすいだろう。
インデックスファンドの仕組み
インデックスファンドは、特定の指数に連動する値動きを目指して運用されるのが特徴だ。
TOPIXに連動するファンドであれば、基準価額がTOPIXの値動きと連動するように投資銘柄を組み入れて運用を行う。TOPIXが値上がりすれば、ファンドの基準価額も同程度上がる。
ベンチマーク(運用目標)にする指数に合わせて機械的に投資銘柄を選定するため、投資対象となる指数が同じなら、ファンドによるリターンの差はほとんどない。ただし、販売手数料や信託報酬、信託財産留保額といった運用コストはファンドによって異なる。
インデックスファンドは、国内外のさまざまな指数に連動する商品が多数販売されている。また、1本で世界中の株式に分散投資ができる「全世界株式型」、1本で国内外の株式、債券、不動産に分散投資ができる「バランス型」と呼ばれるタイプの商品もある。
インデックスファンドとアクティブファンドとの違い
投資信託は、大きく「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の2つに分けられる。
アクティブファンドとは、特定の指数の値動きを上回る投資成果を目指して運用される投資信託だ。ファンドによって運用方針や資産配分、銘柄選択の基準は異なる。成長性や割安性などから銘柄を選んで運用するファンドもあれば、特定の投資テーマに関連する銘柄に投資を行うファンドもある。
アクティブファンドは、インデックスファンド(市場平均)を上回るリターンが期待できるのがメリットだ。ただし、投資銘柄の選定・運用に時間と手間がかかるため、インデックスファンドに比べると運用コストが高い傾向にある。
代表的なインデックスとパフォーマンス
【日本株式】TOPIX(東証株価指数)
TOPIXは、東証一部に上場する全銘柄を対象とする株価指数だ。TOPIXに連動するインデックスファンドを購入すれば、東証一部上場企業全体に分散投資ができる。TOPIXは時価総額が大きい銘柄の影響を受けやすいという特徴がある。
1968年1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化している。日本経済の動向を示す代表的な経済指標であり、毎日のように経済ニュースで値動きが伝えられている。
2016年4月~2021年3月の5年間において、TOPIXのパフォーマンス(1年平均騰落率)は約5%となっている。
【国内債券】NOMURA-BPI
NOMURA-BPIとは、日本の公募債券市場全体の動向を示す指数で、国内債券の代表的な指標として利用されている。NOMURA-BPIに連動するインデックスファンドを購入すれば、国内の債券市場全体に分散投資ができる。
インカム収入を考慮した時価総額加重平均型インデックスで、1983年12月末を100として日次ベースで算出される。
2016年4月~2021年3月の5年間において、NOMURA-BPI(国債)のパフォーマンス(1年平均騰落率)は約1%となっている。
【先進国株式】MSCIコクサイ・インデックス
MSCIコクサイ・インデックスは、日本を除く先進国の株価動向を示す代表的な指数だ。MSCIコクサイ・インデックスに連動するインデックスファンドを購入すれば、先進国の株式市場全体に分散投資ができる。
構成銘柄は、日本を除く先進国22カ国に上場する大型株・中型株だ。国別の構成比は米国が最も高く、時価総額全体の約65%を占めている。
2016年4月~2021年3月の5年間において、MSCIコクサイ・インデックス(配当込み)のパフォーマンス(1年平均騰落率)は約9%となっている。
【先進国債券】FTSE世界国債インデックス(除く日本)
FTSE世界国債インデックス(除く日本)は、日本を除く世界主要国の国債の動向を示す指数だ。対象国の国債の総合収益率を、各市場の時価総額で加重平均して算出される。
FTSE世界国債インデックス(除く日本)に連動するインデックスファンドを購入すれば、日本を除く世界主要国の国債に分散投資ができる。
2016年4月~2021年3月の5年間において、FTSE世界国債インデックス(除く日本)のパフォーマンス(1年平均騰落率)は約1%となっている。
【新興国株式】MSCIエマージング・マーケット・インデックス
MSCIエマージング・マーケット・インデックスは、新興国の株価動向を示す代表的な指数で、新興国26カ国の大型株・中型株で構成されている。
MSCIエマージング・マーケット・インデックスに連動するインデックスファンドを購入すれば、新興国の株式市場全体に分散投資ができる。
2016年4月~2021年3月の5年間において、MSCIエマージング・マーケット・インデックスのパフォーマンス(1年平均騰落率)は約8%となっている。
インデックス投資のメリット
投資成果がわかりやすい
インデックス投資は仕組みがシンプルで、指数と同じように基準価額が変動するため、投資成果がわかりやすいのが特徴だ。個別企業の業績や動向を確認する必要がなく、指数の値動きに注目するだけで済むので、初心者でも始めやすい投資方法といえる。
運用コストが低い
インデックスファンドは、アクティブファンドに比べて運用コストが低い傾向にある。信託報酬の平均は、インデックスファンドが年0.6%程度であるのに対し、アクティブファンドは年1.4%程度だ。
投資信託の信託報酬は、運用期間が長くなるほど運用成果に大きな影響を与える。金融庁の資料によれば、100万円を投資して信託報酬控除前リターンが4.5%の場合、信託報酬が1%違うと20年間で運用成果に約33万円の差が生じる。
ただし、同じ指数に連動するインデックスファンドであっても、商品によってコストは異なる。複数の商品を比較して、運用コストが低い商品を選ぶことが大切だ。
長期投資に適している
インデックス投資は、インデックスファンドを通して市場全体に投資する方法だ。インデックスファンドは投資テーマが古くならないので、旬のテーマを追う必要がない。そのため、長期投資で時間をかけて資産を増やす場合に適している。
長期ではアクティブファンドを上回るパフォーマンスが期待できる。
アクティブファンドは、市場平均を上回るリターンを目指して運用される。しかし、長期ではインデックスファンドのパフォーマンスはアクティブファンドを上回っている。
金融庁の資料によれば、日本籍公募投信の5年累積リターンの平均は以下の通りだ。
5年累積リターン平均 パッシブ(インデックス) |
5年累積リターン平均 |
|
全ファンド |
22.60% | 9.70% |
国内株式 |
40.00% | 30.90% |
先進国株式 |
37.00% | 12.00% |
新興国株式 |
15.20% | 12.80% |
グローバル株式 |
32.60% | 8.20% |
この結果から、長期投資の場合はアクティブファンドよりインデックファンドが有利といえる。
インデックス投資のデメリット
元本割れリスクがある
インデックス投資は個人の資産形成に適した投資方法だが、元本割れの可能性もある。株価は常に上昇と下落を繰り返しており、過去には50%を超える暴落も発生しているため、一時的には損失が生じるかもしれない。
インデックス投資に取り組むときは、預貯金などの元本保証商品を一定割合確保して、リスクをとりすぎないことが大切だ。また、資産や地域を分散した積立投資を長期間続けることで、元本割れの可能性が低くなることも分かっている。
投資のリスクを下げるためにも、短期の値動きに一喜一憂せず、積立・分散投資を長く続けることを心掛けよう。
市場平均を超えるリターンは期待できない
インデックス投資は、市場平均のリターンを得ることが目標であるため、ベンチマークする指数(市場平均)を超えるリターンは期待できない。市場平均を超えるリターンを目指す場合は、アクティブファンドや個別株への投資を検討しよう。
ただし、長期投資におけるインデックスファンドのリターンはアクティブファンドを上回っている。初心者が、アクティブ運用で市場平均を上回るリターンを得るのは簡単ではないだろう。
資産が増えるまでに時間がかかる
インデックス投資は、インデックスファンドの長期保有が前提であるため、資産が増えるまでに時間がかかる。短期間で資産を大きく増やしたい場合は、他の投資方法を検討しよう。ただし、短期投資は手間がかかり、リスクも高まるので注意が必要だ。
長期投資ならインデックス投資から検討しよう
インデックス投資はインデックスファンドを購入して長期保有するだけなので、初心者でも取り組みやすい。運用コストが低く、長期的にはアクティブファンドを上回るパフォーマンスが期待できるのも魅力だ。
将来に向けて資産を増やしたいなら、インデックス投資による資産運用を検討してみよう。
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