投資の代表格といえば株式投資だ。しかし、株式投資に対して「難しそう」や「怖い」というイメージをもつ人は少なくない。 株式は数ある金融商品の中でもリスクが高いと言われているが、高いリターンが期待できるという魅力がある。

本記事では、これから株式投資を始めたいと考えている人のために、利益を得る方法や始め方、注意点などをわかりやすく解説する。

株式投資の初心者向け解説

株式とは?

株式とは、企業が資金を調達するために発行する有価証券のことだ。企業が新規事業を始めたり設備を増やしたりする際には、資金が必要となる。そこで企業は、株式を発行して投資家に購入してもらい、資金を調達するのだ。

株式を購入した人は「株主」となり、会社の所有者となる。株主は、株式会社の最高意思決定機関である株主総会に出席して意見を述べられるだけでなく、企業の方針を決める際の決議において議決権の行使(投票)が可能だ。議決権は、保有する株式数に応じて決まり、株式数が多いほど議決権が多くなるのが一般的だ。

株式は、世界各国にある「証券取引所」で取引されている。日本の中心は「東京証券取引所」であり、東京証券取引所は「第一部」「第二部」「マザーズ」「JASDAQ(ジャスダック)」という4つの「株式市場」に分かれている。株式が証券取引所で取り扱われることを「上場」という。上場するには、投資家の保護を目的とした証券取引所の厳しい審査を通過しなければならない。

1株あたりの値段を「株価」という。ただし実際の株取引は、通常1単元(100株)ごとに行われる。たとえば株価が1000円である場合、最低でも1000円×100株=10万円の資金がないと、その企業の株式は購入できない。しかし最近では、最低購入単位が1株から、または1000円からなど、少額から株式投資ができるサービスが人気を集めている。

株式とは  まとめ

株式投資で得られる利益は3つ

株式投資で得られる利益には、大きく分けて「キャピタルゲイン」「インカムゲイン」「株主優待」の3種類がある。

キャピタルゲイン

キャピタルゲインとは、株式を購入したときと売却したときの株価の差によって生じる売買益のことだ。

株式は、証券取引所で「競り」のように取引されている。企業の利益が上がると、多くの人がその企業の株式を購入しようとする。株式を欲しがる人が増えると、株価があがる仕組みだ。今後成長が期待できる企業の株式を購入し、株価が上がったタイミングで売却することで売買益を得られる。

実際の売買益は、株式を売却したときに確定する。株式の保有中に株価が上がったことで、仮の利益が出ている状態を「含み益」、株価が下がり損失が発生している状態を「含み損」という。

キャピタルゲインに対しては、20.315%の税金が課せられるため、株式を売却して利益を得てもすべてが手元に入るわけではない点に注意しよう。 

キャピタルゲイン

インカムゲイン

株式投資におけるインカムゲインとは、「配当」のことを指す。配当とは、企業の業績が好調であったときに、株式を購入してくれた株主に利益の一部を還元してくれる制度だ。企業が定める「権利確定日」に株式を保有していると、保有株式数に応じた配当を受け取れる。

企業の儲けが増えると、配当も増えるのが一般的だ。一方で企業の儲けが少なければ、配当も少なくなる傾向にあり、利益次第では配当がないこともある。

1株あたりの配当金を株価で割ったものを「配当利回り」という。たとえば、1株あたりの配当が100円、株価が1株3000円であった場合、配当利回りは、100円÷3000円=約3.3%だ。

配当利回りは2%程度が一般的である。日本取引所グループによると、2021年5月現在、東京証券取引所の第一部に上場している全銘柄のうち、配当金を分配する企業の平均配当利回りは1.86%である。

中には、配当利回りが5%を超える企業もある。たとえばソフトバンクは、2021年5月14日の株価(終値)は1430.5円、1株あたりの配当は86円であり、配当利回りは86÷1430.5=6.01%であった。

ただし、配当利回りが高い企業の中には、自社の資産を取り崩す「タコ足配当」をしている企業もある。タコ足配当を行っている企業は、経営が危機的な状況にある可能性が高いため手を出さない方が賢明だ。

なおインカムゲインついても、キャピタルゲインと同様、利益に対して20.315%の税金が課せられる。

インカムゲイン

株主優待

株主優待とは、株式を多く買ってもらうために企業が用意する特典・プレゼントを指す。株主優待の内容は「自社商品の詰め合わせ」や「お食事券」「割引券」「カタログギフト」など、企業によってさまざまだ。たとえば、2021年3月発送分におけるライオン株式会社の株主優待は、ハミガキやハブラシをはじめとした自社商品の詰め合わせセットである。

株主優待を目的に投資する銘柄を選ぶ場合は、優待内容だけでなく優待の対象となる条件を必ず確認しよう。株主優待を実施する企業の多くは「権利確定日」に、一定数以上の株式を保有していなければならない。中には、株主優待を実施していない企業もある。 

また企業によっては、保有期間や保有株式数に応じて優待内容が変わる場合がある。たとえば、オリックス株式会社の2020年の株主優待であるカタログギフトは、100株以上の株式を3年以上継続保有していると、選択できる商品のグレードがアップする。

株主優待
株式投資を始めるには

株式投資は、どのように始めるのだろうか?ここでは、株式投資を始めるときの手順を紹介する。

株式に投資する目的を決める

自分自身が株式投資を始める目的を考えたうえで「長期投資」と「短期投資」のどちらかを選択することが大切だ。 

長期投資とは、5年や10年などの長期間にわたって株を保有して配当を得て、値上がりしたタイミングで売却する株式投資だ。短期投資とは、短い期間で株式の売買を繰り返し、少しずつ利益を積み重ねることをいう。株式投資を始める目的を決めていなければ、長期投資と短期投資のどちらが自身に合っているのかが判断できない。

たとえば「老後資金として退職までに2000万円貯める」「子供が大学に進学する年齢に達するまでに300万円貯める」など、将来的に必要となる資金を準備する目的で株式投資を始める場合、長期投資をすると良い。日々の株価の変動に惑わされず、長期的な視点を持って投資をし、売買益と配当の両方を得ることで、着実な資産形成が期待できる。

一方「多少リスクをとってでも、短期間で出来るだけ資産を増やしたい」という人は、短期投資を選ぶと良い。日々の株価の変動をチェックし、利益が出た瞬間に売却をする取引を繰り返すことで、短期間のうちに資産を大きく増やせる可能性がある。

「長期投資」と「短期投資」については、リンク先の記事で詳しく解説している。
 

証券会社を選ぶ

株を売買するためには、証券会社に証券口座を開き、取引に必要な資金を投入する必要がある。証券会社には、実店舗を構える「店舗型証券会社」と、インターネット上で取引をする「ネット証券」の大きく分けて2種類がある。

店舗型証券会社には、野村證券や大和証券をはじめとした大手証券会社の他にも、中堅の証券会社や地域密着型の小規模な証券会社(地場証券)がある。店舗型証券会社のメリットは、投資方法や投資先を対面で担当者に相談できる点だ。ただし店舗型証券会社は、人件費や設備費がかかるため、手数料が高めに設定されている。

ネット証券には、SBI証券や楽天証券、LINE証券などがある。人件費や設備費などの経費が少ないため店舗型証券会社よりも手数料は低いが、口座の開設や売買の注文などは自分自身で行わなければならない。

口座を開設する証券会社は、自分の考えや投資スタイルに合わせて選ぶことが大切だ。たとえば、投資先や市場の動向などをプロに相談したい人は店舗型証券会社を、プロに頼らずとも自力で調べられる人は手数料の低いネット証券で口座を開設すると良いだろう。

口座を開設する

証券会社で開設できる証券口座には「特定口座」と「一般口座」の2種類がある。特定口座とは、株式の取引で生じた税金を証券会社が計算してくれる口座で、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類がある、

株式投資でキャピタルゲインやインカムゲインを得た場合、確定申告をして税金を納めなければならない。しかし源泉徴収ありを選んだ場合、証券会社が株取引による損益を自動で計算して税金を納めてくれるため、確定申告は不要だ。源泉徴収なしの場合は、証券会社が発行する年間取引報告書をもとに確定申告をして税金納める必要がある。

一般口座とは、株式取引で利益が発生した場合に、自分自身で確定申告をして税金を納める必要があるだけでなく、特定口座とは違い年間取引報告書の発行もされない。一般口座を選ぶメリットは少ないが、一部の未上場企業の株式は特定口座での取引ができないため一般口座を開設する必要がある。

他にも、NISA口座を開く選択肢もある。NISAとは、年間投資額120万円まで、投資期間5年まで、トータル600万円の投資に対する利益が非課税となる制度だ。年間の投資額が120万円以下であるなら、NISA口座を開設すると良い。        

投資する株式を選ぶ

投資する株式を選ぶ際は、企業の業績をチェックするのが基本だ。業績を確認することで、会社の成長が期待できる「成長株(グロース株)」や、会社の業績の割に株価が割安な「割安株(バリュー株)」を判断できる。業績は、証券会社のサイトや東洋経済新報社が発行する「会社四季報」などで確認できる。

投資先を選ぶ際は、条件に合った銘柄を絞り込んで検索する「スクリーニング」の利用が便利だ。たとえば、投資金額で銘柄を検索すると、予算内で購入できる銘柄を探しやすくなる。

他にも「仕事や趣味などで関わりのある業界の株を選ぶ」「流動性の高い株を選ぶ」などの選び方がある。流動性とは、株式の取引頻度を表す。流動性が低いと、望むタイミングで売買できない確率が高まるといわれている。

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株式を取引する

株取引のできる時間帯は、証券取引所によって異なる。たとえば東京証券取引所の場合、午前中の取引は午前9時〜11時半、午後の取引は12時半〜15時までとなる。外国株を取引する場合は現地の証券取引所の取引時間をチェックする必要がある。なおネット証券会社であれば、取引時間以外でも注文を出すことが可能だ。

株式を注文するときは、買いたい銘柄や株数、注文方法、有効期限(当日や今月など)を指定する。注文方法の種類には「成行」と「指値」がある。成行とは、注文を出したときの価格で取引が成立する(約定する)取引だ。指値は金額を指定して株式を売買する方法であり、条件に合わない場合は約定しない。

また株の注文には、手数料がかかる。1回の取引ごとに手数料がかかるものもあれば、取引回数にかかわらず定額の場合もある。株式投資を始めたばかりで取引回数があまり多くない場合は、1回ごとの手数料タイプを選んでおくと良い。

株式投資の始め方 まとめ

株式投資をする際の注意点

株式投資をするときは「リスクを分散する」「インサイダー取引をしない」の2点に注意する必要がある。


リスクを分散する

株式投資には以下のようなリスクがあり、他の金融商品と比較してハイリスク・ハイリターンといわれている。

  • 価格変動リスク:株価が変動して利益や損失が発生するリスク
  • 信用リスク:株式を購入した会社が倒産して株価がゼロになるリスク
  • 流動性リスク:株式が市場で売買できなくなるリスク

また外国株式の場合は、国や地域での紛争や政治的な不安定によって株価が変動する「カントリーリスク」や、為替の変動によって株価も変動する「為替リスク」にも注意が必要だ。

投資の対象を狭めるとリスクが大きくなるため、銘柄や国、投資時期などを分散してリスクをコントロールしたうえで利益を積み上がることが、株式投資においては特に重要だ。

たとえば、複数の銘柄に分散投資することで、1つの銘柄が値下がりしても他の銘柄の値上がりでカバーできる。投資信託や債券など、株式とは値動きが異なる金融商品に分散して投資するのも有効なリスク対策だ。また株式を一度に購入するのではなく、複数回に分けて購入し時間を分散させる方法もある。

ただし分散投資をしすぎると、管理が難しくなる点は要注意だ。保有する銘柄の管理が難しくなると、値下がりしたときに売り逃してしまい損失が拡大する恐れがある。

何よりリスクを抑えると、リターンが少なくなってしまう。どの程度リスクが取れるのかは、投資の目的や保有資産によって異なるため、株式投資を始める際は自身がどこまでリスクを取れるのかを考えることが大切だ。

投資におけるリスクとリターンについては、リンク先の記事で詳しく解説している。

インサイダー取引をしない

インサイダー取引とは、会社の社員や関係者から株価が変動するような、企業の重要な内部情報を得て株取引をすることだ。買収や合併、新製品・新技術の開発など、公開される前の重要な情報を用いて株取引をすることは、証券取引法で禁止されている。

もしインサイダー取引が発覚した場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられる恐れがある。インサイダー取引になると認識していなかった場合や、会社関係者の家族がインサイダー取引をした場合も罰則の対象となる。

インサイダー取引は、専門機関による取引審査や、会社の内部告発などで発覚する。たとえ資産を増やしたいと考えていても、インサイダー取引だけは絶対に行わないようにしよう。

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