少子高齢化が進む日本では、以前のように年功序列制度による賃金上昇や年金制度に頼れなくなっている。家族を守り老後に備えるためには、自ら積極的に資産運用をしていく必要がある。

本記事では、資産形成において重要となる「長期・分散・積立投資」について詳しく解説する。

資産運用の基本は長期・分散・積立投資

資産運用の手段には、貯蓄のほか、投資信託株式投資、FX(外国為替証拠金取引)、仮想通貨投資などさまざまなものがある。

そして資産運用成功への近道となる戦略が「長期・分散・積立投資」である。長期投資、分散投資、積立投資それぞれについて、詳しく説明しよう。

長期投資とは

長期投資とは、短期間で売買を繰り返すのではなく、5年や10年といった長期にわたり金融商品を保有し続ける投資である。一度購入した金融商品を長い間保有し続けて、長期的に資産を増やすことを目指していく。

一方で、短期投資は「安く買って高く売る」を繰り返すもので、保有している金融商品が値上がりしたらすぐに売り、また値下がりしている金融商品を買って売る。

資産運用において、短期投資よりも長期投資が重要な理由は、長期投資の「複利効果」が期待できるからだ。

複利効果とは、投資の元本から生じた利益を再投資することにより得られる効果のことである。

複利では、元本の金額が大きくなるにつれて利息も雪だるま式に増えていき、投資した元本にしか利息が付かない「単利」よりも、大きく資金を増やせる可能性がある。

例えば100万円を元本として、年5%で運用する場合を考えてみよう。

単利の場合は、何年たっても毎年5万円の利息しか付かない。10年運用した際の利息合計は50万円である。

一方で複利の場合、2年目に元本の100万円と利息の5万円が再投資されて105万円が元本になり、得られる利息は10万2500円になる。10年運用した際の利息合計は62万8894円となる。

複利では年を追うごとに得られる利息は増えていき、資産は雪だるま式に増えていく。

単利だと元本の100万円が2倍まで増えるのは20年後だが、複利なら15年後と、なんと5年も早く到達できてしまう。

複利効果のイメージ図

・長期投資のメリット

最大のメリットは、時間を味方につけて資産を大きく増やせる可能性があることだ。

長期的に値上がりする金融商品に投資できれば、複利効果の恩恵を受けて、資産を大きく増やせるだろう。

短期的に売買を繰り返す必要がなく、一度投資環境さえ整えてしまえば手間がかからない「ほったらかし投資」ができるため、時間をかけずに資産を増やせる点も見逃せない。

仕事などで忙しく、投資のために多くの時間を割けない人にも、最適な投資といえるだろう。

・長期投資のデメリット

長期投資は、何年もの時間をかけて資産を増やしていくことを目指すため、数日や数週間、数か月といった短期間で大きく資産を増やすことは難しい。

ハイリスクでも短期間で大きな利益を得たい人には、あまり向いていないだろう。

また長期投資では、特に運用コストに注意する必要がある。

たとえば投資信託の場合、保有している限り「信託報酬」という費用がかかり続ける。

保有額に応じて所定の料率をかけた金額が徴収されるものだが、商品によってその料率には大きな違いがある。

運用コストの高い商品を選んでしまうと、運用コストがかさみ、せっかくの利益が目減りしてしまうことがあるので注意したい。

分散投資とは

分散投資でリスクを軽減できる

分散投資とは、ひとつではなく、複数の金融商品に投資することである。

ひとつの投資先に集中的に資金を置いてしまうと、その投資先の値動きに大きな影響を受けてしまう。

投資先や投資するタイミングを分散させておくことで、リスクを抑えることができるのだ。

投資の世界には「タマゴをひとつのカゴに盛るな」という有名な格言がある。

タマゴをひとつのカゴに盛っていると、カゴを落とした時に全部のタマゴが割れてしまうかもしれない。

しかし複数のカゴに分けてタマゴを盛っておけば、ひとつのカゴを落としてタマゴが割れてしまっても、他のタマゴは無事ですむ。

タマゴを一つのカゴに盛るな

同じように投資の世界でも、ひとつの商品だけに投資するのではなく、複数の資産クラス・複数の商品に投資してリスクを分散させた方がよいというわけだ。

例えば国内株式だけでなく、海外株式や国内債券、海外債券などにもバランス良く分散投資することで、もし国内株式市場が悪化しても、多くの資産を守ることができる。

・分散投資のメリット

分散投資の最大のメリットは、リスクを分散できることだ。

特定の投資先が値下がりしてしまっても、ほかの投資先の値上がりでカバーできることもある。

さらに、短期的な値動きを意識せずにすむというメリットもある。

株式やFXといった短期的な投資では、変動する値動きに振り回されてしまう人が少なくない。

少し値下がりしたら怖くなって売ってしまったり、少し値上がりしただけで得をした気分になって早々に売ってしまったりするのだ。

短期的な値動きに一喜一憂していると、長期的に資産を形成していくことは難しい。

・分散投資のデメリット

分散投資は、特定の投資先に集中するよりも、得られる利益が小さくなる場合がある。

ある投資先が大きく値上がりした場合、その投資先に集中投資していれば大きな利益を得られる。

しかし分散投資により、その投資先に全体資金の一部しか投入していなければ、集中投資していた場合よりも、得られる利益は少なくなってしまう。

また自らさまざまな金融商品を購入して分散投資を行う場合、複数の商品を管理しなくてはならない煩雑さもある。

なるべく手間を減らしたいなら、幅広い投資先をカバーしている「バランス型」の投資信託を購入してもよいだろう。

全世界に投資するような投資信託なら、より手軽に分散投資をすることができる。

積立投資とは

積立投資は資産形成の基本
積立投資とは、時間をかけて、一定の金額を継続的に投資していくことである。

積立投資で重要となる投資手法が「ドル・コスト平均法」というものだ。

難しそうな響きであるが、実際にはごくシンプルな仕組みで、価格が変動する商品を定期的に一定額で購入するだけだ。

たとえば1カ月1万円ずつなどと、金額を決めて投資信託を購入する。

購入金額を一定にすることで、自動的に、価格が下がった時には多くの数量を購入し、価格が上がった時には少ない数量を購入することになる。

投資信託Aの値動きと1万円で購入できる口数

※1口=1円の場合


・積立投資のメリット

積立投資は常に値動きを見ながら売買のタイミングを見計らう必要がない。買い付けるタイミングを分散させることで、値動きのリスクを抑え、効率的に資産を増やしていくことが可能となる。

長期投資と組み合わせることで、より安定的な資産運用を目指すことができるだろう。

また積立投資は少額からでも始めることができるので、投資資金が少ない人でも始めやすい。

投資信託の積立サービスのなかには、1日100円から始められるものもある。

・積立投資のデメリット

積立投資は少しずつ投資資金を積み立てていくため、資産が増えるまでには時間がかかる。

短期的な利益を追い求めるのではなく、気長に資産が増えていくのを待つ心構えが重要だ。

ただし元本割れのリスクもあるため、生活資金まで投資に回すようなことはせず、あくまで余裕資金で投資するなどしてリスクに備えたい。

長期・分散・積立投資をしよう

資産運用において、長期・分散・積立投資は基本戦略として欠かせない。

特に積立投資は少額からでも始めることができ、投資初心者にもチャレンジしやすいといえるだろう。

例えば水筒を持参して、職場で毎日買っている100円のペットボトルを買うのをやめ、1日100円の積立投資を始めてみるのはどうだろう。

健康が気になり「そろそろ禁煙しようかな」と考えているなら、禁煙してタバコ代の代わりに1か月3000円の積立投資を始めてみるのもいいかもしれない。

「最近忙しくてジムに行けていないな」という人は、ジムのプランを見直して、毎日利用できる1カ月1万円のプランから、平日夜だけの1カ月5000円のプランに変更し、浮いた5000円を積立投資に回すという手もある。

無理をして大きな資金を用意しなくても、生活習慣を少し変えるだけで、資産運用を始めて将来に備えることができるのだ。

これを機に、長期・分散・積立を意識しながら、資産運用を始めてみてはいかがだろうか。

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