子どもの進学や住宅の購入などのライフイベントでは、一般的に数百万〜数千万円ほどの費用が必要となるため、計画的に資金を準備することが大切だ。

しかしながら、生活を切り詰めてまで貯蓄や投資をすると、今の人生を楽しめない恐れがある。ライフイベントに向けて計画的に資金を貯めるためには、「ライフプランニング」をすることが非常に重要だ。ライフプランニングをすれば、いくらをいつまでに、どのような金融商品に投資しながら必要な資金を準備するかを明確にできる。

本記事では、ライフプランの立て方や特に計画的に準備する必要がある資金について解説する。


ライフプランニングとは

ライフプランとは、今後の人生計画を立てることだ。「子どもには大学に進学して欲しい」「2年後に住宅を買いたい」「6年後に車を買い替えたい」など、自分や家族が今後どのような人生を送るのかを考える。

ライフプランの実現に向けて、将来の予定を考慮し具体的な資金計画を立てるのが「ライフプランニング」だ。

ライフプランニング

ライフプランニングの方法

ライフプランニングでは、「ライフイベント表」と「キャッシュフロー表」を作成する必要がある。ライフイベント表やキャッシュフロー表は、EXCELやGoogleスプレッドシートなどで自作できる。自作が難しい場合は、金融広報中央委員会の「生活設計診断」や金融庁の「ライフプランシミュレーション」など、年齢や職業、家族構成などの質問に答えるとライフプランのシミュレーションができるツールを使う方法もある。

また、ファイナンシャルプランナーにライフイベント表やキャッシュフロー表を作成してもらうのも有効な手段だ。より正確な金額を計算してもらえるだけでなく、ライフプランが実現可能かどうかや、有効と考えられる運用手段などのアドバイスも受けられる。


ライフイベント表を作成する

ライフイベント表とは、家族の年齢とライフイベント、予算を時系列で表したものだ。イメージは、以下の通り。

ライフイベント表記入例

ライフイベント表出所:日本FP協会提供の表に記入し作成


ライフイベントの項目に記入するのは「子どもの進学」や「住宅の購入」など、まとまった支出が生じるものだ。ライフイベントの発生時に必要となる資金は、現在の価値で記入するのが一般的である。

資金計画を立てるときは、最初にライフイベント表を作成し、資金が必要となるタイミングや金額を把握することが大切だ。


キャッシュフロー表を作成する

キャッシュフロー表とは、ライフイベント表の項目に加えて世帯の年間収支や貯蓄残高などを記載した表だ。具体的な資金計画を立てるためには、キャッシュフロー表を作成して、世帯におけるお金の動きを確認することが重要となる。

キャッシュフロー表

出所:日本FP協会提供の表に変動率を加える等の改変後、記入し作成

収入の項目には、年収から所得税や住民税、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)を差し引いた金額である「可処分所得」を記載する。

支出項目には「基本生活費(食費・光熱費など)」「住居費」「車両費」「教育費」「保険料」などを記載する。交際費やレジャー費などは「その他の支出」としてまとめて記入しよう。世帯の支出を把握していない場合は、家計簿を付けることから始める必要がある。

年間の収入から支出を差し引いた金額を金融資産残高に加えていき、ライフイベントの発生時に必要な資金が準備できているかを確認する。

なおキャッシュフロー表に記載する金額は、「変動率」を加味するのが一般的だ。例えば生活費には、将来的な物価上昇を考慮して、前年の金額に任意の「物価上昇率」を乗じて計算する。また金融資産残高を計算するときは、前年の残高に任意の「運用利率」を乗じ、年間収支を加える。


収支の見直し・運用方法の選定

キャッシュフロー表を作成した結果、年間の収支が赤字となっており、ライフプランの実現が難しい場合、支出や収入の見直しが必要となる。

たとえば支出の見直しについては、「家賃の安い家に引っ越す」「不要な保険を解約する」など、固定費を削減するのが代表的だ。収入を増やす方法については「パートを増やす」「副業を始める」などが考えられる。

収支の見直しと併せて行いたいのが、設定した運用利率が期待できる金融商品の選定だ。2021年現在、日本は非常に低金利であるため預貯金をはじめとした元本保証のある金融商品だけでは、資産は増えていかない。運用利率を1.0%や2.0%などの値に設定したのであれば、投資信託、株式などの金融商品を組み合わせる必要がある。


人生の3大資金と準備するポイント

ライフプランを立てるときは「教育資金」「住宅購入資金」「老後資金」の3大資金を意識することが特に重要だ。

人生の3大資金は、いずれも高額だ。計画的に準備しなければ「希望する学校に進学できない」「夢のマイホームが購入できない」「老後の生活が苦しい」などの支障が出るだろう。


教育資金

教育資金教育資金とは、授業料や入学金など、子どもを育てるために必要な費用の全般を指す。進学ルートにもよるが、幼稚園(保育園)から大学まで通った場合の学習費は、総額で約1000万を超えるケースも少なくない。幼稚園から大学まですべて私立に通わせると、教育費は2000万円を超えるといわれている。

中でも大学への進学費用は高額になりやすい。日本政策金融公庫の調査によると、入学費用と在学費用の合計は、国公立大学で約539万円、私立大学で約968万〜1064万円である。

また大学で親元を離れて暮らす場合、下宿先の入居費用(敷金・礼金・前払い家賃など)や、家具・家電の購入費用が必要となる。どのように進学するか決めるのは、主に子どもだ。親は子どもが願うルートで進学できるよう、計画的に資金を準備するのが望ましい。

教育ローンや奨学金などの借り入れでも、教育資金は賄える。しかし教育ローンを借り入れると、利息を上乗せしたうえで返済しなければならない。奨学金は、教育ローンより利息負担が低い傾向にあるものの、子どもが返済義務を負ってしまう。借り入れに頼ることのないよう預貯金や学資保険などの金融商品を用いて、計画的に準備するのが良いだろう。

教育資金は、必要となるタイミングがある程度決まっている。資金が必要なときに元本割れする確率を下げるためには、リスクの小さい方法で資金を準備することが大切だ。

親や祖父母などから、教育資金を援助してもらうのも有効な手段だ。他人から年間で合計110万円を超える財産を贈与された場合、贈与税がかかるが、必要なタイミングで贈与してもらった教育資金は、非課税となる。また要件を満たすと特定の親族から贈与された教育資金が、一定金額まで非課税となる制度もある。

住宅購入資金

住宅購入資金住宅の購入価格は、一般的に数千万円と高額であるため、多くの人が住宅ローンを組んで購入する。2021年5月現在、住宅ローンは歴史的な低金利であり、住宅購入資金のすべてをローンで賄うことも可能だ。

しかし住宅ローンを組むとしても、頭金や諸費用(印紙税や仲介手数料など)を支払うために、ある程度まとまった自己資金を準備するのが望ましい。低金利とはいえ、借入額が増えると毎月の返済負担が家計を圧迫する恐れがあるためだ。

国土交通省の調査によると、実際に住宅を購入した人は、購入資金の平均27.2〜48.5%を自己資金で準備している。

住宅購入資金に占める自己資金の割合出所:国土交通省「令和元年度 住宅市場動向調査報告書~調査結果の概要~」

一方で自己資金の準備に時間がかかると、住宅ローンの借り入れが遅れて返済負担が老後にさしかかる恐れがある。住宅を購入する際は、今後のライフプランを踏まえたうえで現実的な購入予算を決め、自己資金額や借入額を検討することが大切だ。

3〜5年ほどの短期間で購入資金を準備する場合、価格変動リスクの低い金融商品を中心に選ぶと良い。運用期間が短いにもかわらず、価格変動リスクの大きい金融商品を選んでしまうと、住宅を購入しようと考えていたタイミングで元本割れする確率が高まるためだ。

また教育資金と同様に親や祖父母などから、住宅購入資金の援助を受けるのも選択肢の一つだ。2021年12月末までに親や祖父母などから資金提供を受けた場合、一定の要件を満たすと一定金額まで贈与税がかからなくなる「住宅取得等資金の贈与の特例」制度が利用できる。

老後資金

老後資金

2019年6月、金融庁の報告書に「老後生活を送るためには2000万円の資金を自助努力で貯める必要がある」と、記載されたことが大きな話題となった。

実際に準備すべき老後資金額は、家族構成や生活背景などによって異なるため、必ずしも2000万円を貯める必要はない。だが老後資金は、教育資金や住宅購入資金のように、借り入れによる資金調達が困難であるため、自助努力での準備は必要だ。

老後の生活費や受給できる年金額、退職金額などを確認・試算し、自分や配偶者が望む暮らしをするために必要な資金を計画的に準備しよう。

かつて老後資金を貯める方法は「財形年金貯蓄」や「個人年金保険」などが一般的であった。しかし低金利にある現在では、こうした元本保証がある金融商品の利率は大きく低下している。準備期間が20〜30年と長期にわたるなか、数千万円の老後資金を元本保証がある金融商品だけで準備するのは、かえって非効率かもしれない。

そこで老後資金を準備する際は、投資信託をはじめとした金融商品を活用すると良い。2021年現在では「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA」など、一定金額までの投資に対する利益が非課税となる制度も利用できる。

人生の3大資金と準備するポイントまとめ

ライフプランを立て、貯めるべきお金を把握しよう

ライフプランを立てる際は、今後自分や家族に訪れるライフイベントを考えて「ライフイベント表」を作成しよう。その後、世帯の収支や金融資産残高を記入した「キャッシュフロー表」を作成し、ライフプランが実現できなければ収支を改善する必要がある。

3大資金といわれる教育資金や住宅購入資金、老後資金にそれぞれいくら必要なのか、いつ必要になるのかを把握することが、資産形成において重要だ。はやく計画を立てるほど準備期間が長くなり、資産を賢く運用しながら増やしていける。

2021年現在の日本は、歴史的な低金利だ。低い利息負担で、住宅ローンをはじめとした借り入れができる一方、預貯金を含む元本保証のある金融商品だけでは資産は増えていかない。より効率的に必要な資金を準備するためには、投資を活用することが大切だ。

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