株式投資で利益を得るには、株を安く買って高く売る必要がある。株価はさまざまな要因で変動するため、買った株が将来値上がりするかはわからない。しかし、テクニカル分析を使って過去の値動きを分析すれば、株価予測の精度を上げられる。

テクニカル分析を使うには、株価チャートを読めるようになることが大切だ。今回は株価チャートの概要やトレンド、売買タイミングを見極めるポイントについて解説する。


株価チャートとは

株価チャート

出所:SBI証券 トヨタ自動車(7203)

株価チャートとは、一定期間(1日、1週間、1カ月など)の株価の値動きをグラフ化したものだ。現在の株価を見ただけでは、その株価が高いのか安いのか判断できない。株価チャートには過去の値動きが表示されているため、投資判断の参考になる。

基本的な株価チャートは、「ローソク足」「移動平均線」「出来高」の3つで構成されている。

テクニカル分析では、株価チャートに表示された過去の値動きのパターン、トレンド、ローソク足の形状、時間軸などから将来の株価を予測する。株価チャートを読めるようになれば、株の売買タイミングを判断しやすくなるだろう。


ローソク足

ローソク足とは、株価の動向を示す4本値(一定期間の始値、高値、安値、終値)を1本の棒状で示したものだ。

  • 始値(はじめね):最初に取引された価格
  • 高値(たかね):最も高く取引された価格
  • 安値(やすね):最も安く取引された価格
  • 終値(おわりね):最後に取引された価格

ローソク足を見ればいくらで取引が始まり、どのような値動きをして、いくらで取引を終えたのかがわかる。

ローソク足陽線の解説

ローソク足陰線の解説
始値より終値が高い場合を「陽線」、始値より終値が低い場合を「陰線」という。一般的には、陽線は白または赤、陰線は黒または青で表示される。しかし、仮想通貨チャートなどは陽線と陰線の色が逆になっているケースが多々あるので注意しよう。

株価チャートは、1本のローソク足が示す期間の変更も可能だ。主な期間の種類は以下の通りだ。

  • 分足(ふんあし):1分の株価の動きを示す
  • 日足(ひあし):1日の株価の動きを示す
  • 週足(しゅうあし):1週間の株価の動きを示す
  • 月足(つきあし):1カ月の株価の動きを示す

たとえば、短期投資では分足や日足チャート、中長期投資では週足や月足チャートを使うなど、投資期間に応じて使い分けると良いだろう。

ローソク足は、その形状からいくつかの種類に分類できる。形状に注目すると、その銘柄の値動きの状態をある程度把握できるだろう。基本的なローソク足の種類をまとめた。

代表的なローソク足一例


たとえば、「大陽線(だいようせん)」は終値が始値を大きく上回っているため、買いの勢いが強まっていると判断できる。「大陰線(だいいんせん)」は、大陽線とは反対に買いの勢いが弱まっているため、売りが続くと考えられる。

ローソク足は種類が多いので、まずは基本的な形を理解することから始めよう。


移動平均線

移動平均線とは、一定期間の株価(終値)の平均値をつなぎ合わせたものだ。移動平均線を確認すれば、1日だけイレギュラーな値動きがあったとしても、大きな流れの中で値動きを把握できる。株式市場や投資銘柄のトレンドをつかむのに便利だ。

移動平均線は、「短期」「中期」「長期」の3種類がよく使われる。日足の場合、短期は5日、中期は25日、長期は75日の移動平均線が株価チャートに表示される。5日移動平均線であれば、過去5日間の終値の平均値を線でつなぐ。

短期投資なら短期線、長期投資なら長期線を重視するなど、投資スタイルに合わせて使い分けるといいだろう。ただし、短期投資であっても、長期のトレンドを確認することは重要だ。短期線と長期線がともに上向きなら、買いの勢いが強いと判断できる。


出来高

出来高(できだか)とは、一定期間中(1日、1週間、1カ月など)に成立した株式の売買数量のことで、売買高とも呼ばれる。ローソク足チャートの下に棒グラフで表示され、その銘柄に対する投資家の注目度がわかる。

出来高が多い銘柄は多くの投資家が取引に参加しているため、注目度が高いと判断できる。逆に出来高が少ない銘柄は、注目度が低い不人気株だと考えられる。出来高の増減に注目することで、売買タイミングの判断に役立つ。


株価にはトレンドがある

トレンドとは、株価の大きな流れのことだ。株価チャートを見てトレンドを確認すれば、売買タイミングを判断しやすくなる。株のトレンドには「上昇トレンド」「下落トレンド」「もみ合い局面」の3種類がある。


上昇トレンド

上昇トレンドの解説図


上昇トレンドは、株価チャートが右肩上がりになっている状態だ。株価は上昇と下落を繰り返しているが、大きな流れでは上昇傾向にある。一度上昇トレンドに入ると長く続き、株価が大きく値上がりすることもある。

上昇トレンドに入ったタイミングで株を購入できれば、大きな利益を得られる可能性がある。投資を考えている銘柄の株価が上昇トレンドに入ったら、基本的には買いと判断していいだろう。

日足チャートでは上昇トレンドでも、週足・日足チャートを見ると上昇トレンドではないパターンもあるため注意が必要だ。


下落トレンド

下落トレンド解説図

下落(下降)トレンドは、株価チャートが右肩下がりになっている状態だ。株価は上昇と下落を繰り返しているが、大きな流れでは下落傾向にある。

一度下落トレンドに入ると長く続き、予想を超えて株価が値下がりすることもある。保有銘柄が下落トレンドに入ったら、基本的には売りと判断するといいだろう。

下落トレンドであっても株価が上下するタイミングを見極めれば、短期売買を繰り返して利益を上げることも可能だ。

日足チャートでは下落トレンドでも、週足・日足チャートを見ると下落トレンドではないパターンもある。特に長期投資の場合は、長期のトレンドを確認して売買タイミングを判断することが大切だ。


もみ合い局面

もみ合い局面解説図
もみ合い局面は、株価が一定の値幅で上下しており、チャートが横ばいの状態だ。買い手と売り手が均衡しているため、相場の方向性が定まらない状況にある。投資を考えている銘柄がもみ合い局面の場合、基本的には様子を見るのがいいだろう。

株価の上下するタイミングを見極めることができれば、もみ合い局面でも短期売買を繰り返して利益を出すことは可能だ。

もみ合い局面がしばらく続いた後、上昇トレンドに転じることがある。上昇トレンドに転じるタイミングをうまく捉えられれば、大きな利益を得られるだろう。一方で、下落トレンドに転じて株価が値下がりすることもあるので注意しよう。


トレンドラインで判断する

トレンドラインを結ぶとトレンドのむきがわかる
出所:SBI証券 トヨタ自動車(7203)のチャートより作成

株価のトレンドは、トレンドラインで判断しよう。どんなトレンドにあっても、株価は上下を繰り返して小さな山と谷を形成している。山の頂点を結んだ線を「レジスタンスライン(上値抵抗線)」、谷の底を結んだ線を「サポートライン(下値支持線)」という。

レジスタンスラインとサポートラインの方向性に注目すると、その銘柄のトレンドを把握できる。


株価チャートから売買タイミングを見極めるポイント

株価チャートから売買タイミングを見極めるには、トレンドの変化に注目するのがポイントだ。テクニカル分析では、株価チャートの移動平均線やローソク足の動き、出来高を使って分析を行う。具体的には以下のような方法がある。


ゴールデンクロスとデッドクロス

ゴールデンクロスの解説図

デッドクロスの解説

ゴールデンクロスとは、短期移動平均線が長期移動平均線を下から突き抜けることだ。上昇トレンドに転じたサインであるため、買いシグナルと判断できる。

ゴールデンクロスが現れると、上昇トレンドがしばらく続くことがある。ただし、ゴールデンクロスが現れたときにはすでに株価が高くなっているケースもあるので、柔軟に判断することが大切だ。

反対に、短期移動平均線が長期移動平均線を上から下へ突き抜けることをデッドクロスという。下落トレンドに転じたサインであるため、売りシグナルと判断できる。

デッドクロスが現れると、しばらく下落トレンドが続く傾向にある。投資スタンスにもよるが、保有銘柄の売却を検討するのが基本だ。


ダブルボトムとダブルトップ

ダブルボトムの解説図

ダブルトップ解説図

ダブルボトムは、株価が底値をつけたことを示すチャートパターンだ。株価が2回底値をつけ、「W」の字を描くようなチャートになる。

1番底と2番底は、ほぼ同じ株価水準になるのが特徴だ。2番底の後に株価がネックライン(前回の高値)を超えると、上昇トレンドに入ったサインと判断できる。ネックラインを超えたところで株を購入できると、大きな利益を得られる可能性がある。

ダブルトップは、ダブルボトムとは反対に株価の天井を示すチャートパターンだ。株価が2回天井をつけ、「M」の字を描くようなチャートになる。

2番天井の後にネックライン(前回の安値)を超えると、下落トレンドに入ったサインと判断できる。ネックラインを超えた後は、株価が大きく下がることがあるので注意が必要だ。


三角保ち合い

三角保ち合い(さんかくもちあい)は、株価がもみ合いを続けて上下の動きがだんだん小さくなっていき、チャートが三角形のようになる状態のことだ。レジスタンスラインとサポートラインが1点に収束するあたりから、株価は上か下へ大きく動く。

レジスタンスラインを超えて上昇すれば買いシグナル、サポートラインを超えて下落すれば売りシグナルと判断できる。

三角保合い解説図

一般的には、三角保ち合いの状態が長く続くほど、その後株価が大きく動くと言われている。


出来高の増減

出来高の増減に注目して、売買タイミングを見極める方法もある。出来高は、株価の動きと一緒に見るのがポイントだ。

たとえば、株価が安値圏にあるときに出来高が急増した場合は、買いシグナルと判断できる。何らかの材料が出て注目を集め、投資家の買い注文が増加したと考えられるからだ。

一方で、株価が高値圏にあるときに出来高が急増した場合は、売りシグナルと判断できる。利益確定の売り注文が増えて、株価が下落に転じる可能性がある。


株価チャートが読めると売買のタイミングを判断しやすい

株価チャートを読めるようになると、自信を持って株の売買タイミングを判断できるようになる。株式投資で利益を上げられるように、株価チャートの読み方をマスターしよう。

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