カルダノ創設者のチャールズ・ホスキンソン氏は、次世代の仮想通貨プロジェクトが生き残るためには、より協調的なアプローチを採用する必要があると語った。背景には、米国の規制整備が進むなかで巨大な中央集権型テック企業がWeb3分野に参入しつつある現実がある。
ホスキンソン氏は、パリ・ブロックチェーン・ウィークでの講演で、仮想通貨および分散型金融(DeFi)業界に対する主な批判として、「循環型経済」の構造を挙げた。これは、あるトークンの価格上昇が別のトークンからの資金流入によって支えられることであり、業界全体の成長を妨げているという。
講演するホスキンソン氏 Source: Cointelegraph
ホスキンソン氏は、次のように述べている。
「現在の仮想通貨業界における問題は、トークノミクスや市場構造が本質的に対立的で、ゼロサムであることにある。争うのではなく、協調的均衡を可能にするトークノミクスや市場構造を構築する必要がある」
つまり、あるプロジェクトの成功が他のプロジェクトの犠牲の上に成り立つような構造では、業界全体としての健全な成長は望めないという。特に今後、アップル、グーグル、マイクロソフトといった時価総額数兆ドル規模の企業がWeb3に本格参入すれば、このような内向きな構造では太刀打ちできないと警鐘を鳴らした。
「こんなやり方ではグローバルなエコシステムは構築できないし、勝つこともできない。なぜなら、既存の巨大企業は我々よりはるかに大きいからだ」と述べている。
実際、米国においてはステーブルコイン規制や仮想通貨規制の整備が進展しており、今後数か月以内に法制化されると期待されている。
テック大手による参入と仮想通貨業界の課題
規制が整備されれば、テック大手による仮想通貨分野への本格参入は時間の問題となる。ホスキンソン氏は、市場構造に関する法案は9月までに可決される可能性があると見ており、次のように語った。
「その障壁が取り払われたとき、フェイスブック、マイクロソフト、アマゾン、グーグル、アップルらが仮想通貨業界に参入することになる。そして、彼らのプラットフォームを所有するのは誰か? 彼ら自身だ。つまり、30億人のユーザーを抱えている」
「そのとき我々は、iPhoneにバンドルされたAppleウォレットにどう対抗するのかを問われることになる」と続け、仮想通貨業界も巨大IT企業が利用可能なインフラ構築に取り組む必要があると述べた。
こうした文脈の中で、カルダノでは「Minotaur(ミノタウルス)」と呼ばれるマルチリソース合意プロトコルの開発を進めている。このプロトコルでは、複数の合意アルゴリズムやネットワークが協力して同時にブロック報酬を受け取る仕組みが採用されている。
「ユーザーは望む通貨で支払いができ、複数のネットワークがシステムの安全性を支えることで、それぞれに経済的インセンティブが生まれる」とホスキンソン氏は説明した。