複利と単利のどちらで資産を運用するかによって、将来築ける資産に大きな差がでる。限られた時間で資産を増やすためには、複利効果の活用が必要不可欠だ。

一方、複利という言葉を聞いたことがあっても、単利と複利で運用成績にどれほどの違いがあるのか知らない人も多いだろう。

そこで本記事では、資産運用の基本として、単利と複利の違いや、複利効果で効率的に資産を増やす方法をわかりやすく解説する。

「利率」「単利」「複利」のおさらい

複利効果を説明する前に「利率」について理解する必要がある。利率とは、元金に対する利息の割合で、多くの場合で1年間の利息割合を表す「年利」が用いられる。たとえば、元金1000円を1年間預けて利息が10円付いた場合、年利は10円÷1000円÷1年間×100=1%だ。

「単利」と「複利」は、どちらも利息の計算方法である。元金と利率が同じであっても、単利か複利かによって、資産が増えていくスピードは大きく異なる。

単利は、元本にのみ利息がついていくことだ。たとえば、元本が10万円、年利が1%の場合、単利だと利息が毎年1000円つく。1年目も2年目も3年目も利息はそれぞれ1000円だ。たとえば、分配が毎月行われる投資信託のように運用益が再投資に回されない金融商品は単利である。
                    
一方で複利は、元本と利息の合計金額に利息が付くことだ。仮に元本10万円、年利1%である場合、1年目の利息額は単利と同じ10万円×1%=1000円である。しかし、2年目の利息は、1年目の元利合計10万1000円×1%である1010円となる。同様に3年目は(10万1000円+1010円)×1%=1020円、4年目は(10万2010円+1020円)×1%=1030円が利息となる。年数が経過するごとに利息額が増えていき、それに伴って元利合計も増えていくのが、複利の特徴だ。

複利効果が得られるのは、分配金を含む運用益が再投資される投資信託が代表的である。仮想通貨においても、利益が出た場合に出金するのではなく、再投資に回すことで複利効果を得られる。

単利と複利の運用成績の違い

単利と複利は、投資期間が長いほど大きな差となる。たとえば、100万円の元本を年利5%で20年にわたって運用した場合、単利と複利それぞれの元利合計額は以下の通りだ。

単利と複利それぞれで運用した時の元利合計は、投資期間が長いほど差がつく
20年後の元利合計金額は、手数料や税金等は考慮しない場合、単利が200万円、複利は約265万円と約65万円の差が生じる結果となった。

グラフを見ると、単利は、投資期間に比例して運用資産が増えているのに対し、複利の運用資産はより大きく増加しているのがわかる。 

単利と複利、資産を2倍に増やすには何年かかる?

単利、複利運用で資産を2倍に増やすのに必要な期間を計算するには「72の法則」と「100の法則」を使う。

「72の法則」とは、複利での運用において資産を2倍にするために必要な期間を計算する方法だ。72を利率で割ると、元利合計が元金の2倍になる年数の目安を計算できる。たとえば、利率が4%である場合、運用資産を2倍にするためには72÷4=18年必要となる。

一方で「100の法則」とは、単利で運用した場合に、資産が2倍になる年数を計算する方法。100を利率で割ると、2倍になる期間を算出できる。

72の法則と100の法則を用いて、運用資産が2倍になる期間を計算すると、以下の通りとなった。

単利と複利で資産を2倍にするのに必要な期間の比較表単利のほうが複利よりも、資産を2倍にするのに長い期間が必要となるのがわかる。

また複利で運用しても、利率が高くなければ運用資産を2倍にするのに長い期間がかかる。
たとえば、利率が0.01%だと、複利で運用したとしても資産が2倍になるのは7200年後と、途方もなく先だ。

複利効果で効率よく資産を増やす方法

複利効果で効率的に資産を増やすためには「長期的にわたって投資する」「分散投資」を心がけることが大切だ。

長期間投資する

複利効果を生かすためには長期間の投資が必要

複利効果で資産を運用する際は、できるだけ運用期間を長くする必要がある。運用期間が短いと、複利効果の恩恵を十分に得られないためだ。

たとえば、元本300万円を年利3%、運用期間25年の場合、単利と複利で元利合計金額の差は、約103万円である。しかし運用期間が3年間だと、約8000円、6年間だと約4万2000円程度しか差がつかない。

金融商品には、価格変動リスクがあるため、運用する途中で保有資産額がプラスになったり、マイナスになったりすることもあるだろう。特に仮想通貨は、株式や投資信託などと比較してハイリスク・ハイリターンであるため、価値の変動が激しい。

しかし保有資産額が大きく変動したからといって、慌てて利確をしたり損切りをしたりすると、複利効果が得られなくなってしまう。短期的なプラスやマイナスに一喜一憂せずに、長期間にわたって資産を育てていくことが、複利効果を得るうえで大切なポイントだ。

複数の銘柄に分散投資をする

複数の資産に分散投資することでリスクの軽減を長期間にわたって運用し、複利効果が得られたとしても、一つの銘柄に集中投資をすると、元本割れするリスクが大きくなる。投資によるリスクを減らすためには、複数の投資先にできるだけ分散投資することが大切だ。

たとえば、日本の株式のみに投資をしていると、日本株が暴落したときに資産が大きく減ってしまう。そこで日本株だけでなく、米国の株式にも投資していると、日本株が暴落したとしても米国株がプラスであれば資産全体の減少幅を抑えられる。

仮想通貨に投資する場合も同様に、1つの通貨に集中投資するのではなく、複数に分散投資することでリスクを抑えられる。ただし過度に分散投資すると、リターンが減少してしまうため、価値の上昇が見込める銘柄を厳選すると良い。

資産形成では複利効果を利用しながら資産運用することが重要だ。長期・分散・積立投資でリスクを軽減しつつ資産を増やしていこう。

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