ブロックチェーンや仮想通貨を推進する米業界団体「デジタル商工会議所(CDC)」は1月21日、米国証券取引委員会(SEC)とテレグラム間で進行中の訴訟について、アミカスキュリエ(Amicus Curiae。法廷助言人)として意見書(アミカスブリーフ)を提出した

アミカスキュリエは、「判決がどのような効果をもたらすか」、 「採用した法解釈がどのような事態をもたらすか」 などについて、当事者以外の第三者が裁判所に対して専門的な情報・知識の提供を行うという制度。日本においても、アップル日本法人と韓国サムスン電子間におけるスマートフォンおよびタブレット端末に関する知的財産権訴訟(2013年)で用いられ、国内外から意見書が寄せられた。

CDCは、2014年に設立された非営利の業界団体。投資信託企業フィデリティ、法人向けブロックチェーンコンソーシアムR3、ステーブルコイン「トゥルーUSD(TUSD)」を発行するトラストトークン、コンサルティング企業アクセンチュアなど、多くの仮想通貨・ブロックチェーン関連企業が加盟している。

今回CDCが提出したアミカスブリーフでは、ニューヨーク州地方裁判所裁判所がデジタル資産をどのように検討すべきかまとめられているという。

投資契約に関する明快な基準を要求

SECは2019年10月、テレグラムの独自トークン「グラム(GRM)」が未登録証券にあたると発表。11月には、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)で調達した資金17億ドル(約1837億円4000万円)の使途公表をするようニューヨーク州の連邦裁判所に申し立てた

CDCは、アミカスブリーフの内容が、テレグラムのGRM販売が証券取引に該当するかどうかの見解ではない点を強調。デジタル資産に適用される規制について、十分な明確さの確保を目指していると説明した。

「CDCは、GRM提供・売却が証券取引に該当するかどうかについて、見解は示さない。CDCは、投資契約の基礎となる、デジタル資産に適用される法的枠組みの明快さおよび一貫性を保証する点に関心を持っている」

またCDCは、投資契約対象であるデジタル資産の用語と、証券取引における用語を区別するよう裁判所に提案した。証券取引で提供される投資契約があるか、投資契約対象が従来の商取引で売買できる商品かどうかといった個別の分析が必要と指摘した。

トークン販売が投資契約を構成するか・証券の提供を構成するのかという問題は、SECとテレグラム間の訴訟の争点となっており、テレグラムは1月7日、GRMについて、購入・売却・保有による(将来の)利益獲得は期待できないこと、投資商品ではないこと、価値低下リスク、金銭的価値をすべて失うリスクがあることを発表した

デジタル資産のすべてを証券として規制すべきではないと主張

CDCは、すべてのデジタル資産について、ブロックチェーン技術基盤という理由だけで証券として規制すべきではないと主張。さらに、デジタル資産投資家に対して証券法による保護が与えられるべきだが、証券法で要求する開示は「デジタル資産自体の商取引に関して、ほとんど目的を果たせていない」と指摘した。

このほか、すべてのデジタル関連取引が証券法の保護を必要とするわけではないこと、SEC以外にも多数の関連規制当局が存在することを強調した。

また裁判所に対して、SECとテレグラムの訴訟で決定を下す際は、複数の規制制度を検討するよう提案した。

「関連する活動に応じ、購入者または取引相手を保護する目的で、複数の規制制度が存在している。例えば、特定のデジタル資産取引における詐欺・市場操作では、(事実・状況に応じ)米商品先物取引委員会(CFTC)の対象となる。

デジタル資産に関するその他の活動は、銀行秘密法(Bank Secrecy Act)、国および州の消費者保護法、州の送金ライセンス法ほか、ニューヨーク州仮想通貨ビジネス活動法など州固有の仮想通貨取引規制の場合もある」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン