タイの中央銀行は、国のデジタル通貨である「デジタルバーツ」へのスマートコントラクトと分散型金融(DeFi)の実装を検討する可能性がある。

8月13日、タイの中央銀行であるタイ銀行による中央銀行デジタル通貨(CBDC)プロジェクト「インタノン(Inthanon)」のシニア開発者であるビジャック・セタプート氏が、金融政策関連のシンクタンクである「公的通貨金融機関フォーラム(OMFIF)」のポッドキャストの中で、タイのCBDC開発の進展について語った。

このポッドキャストは、セタプート氏のほか、OMFIFのコマーシャルディレクターであるクリス・オストロウスキー氏、ニューヨークに拠点を置くブロックチェーン企業サイファリウム(Cypherium)のスカイ・グオCEOが参加。グローバルなCBDCの実装と相互運用性について議論した。

ポッドキャストの中でグオ氏は、世界各国の中央銀行がDeFiモデルを借り、資格のある当事者が不動産や株式などの実世界の資産に裏打ちされたデジタル資産を発行できるようにし、CBDCのローンを確保するための担保としてそれらを使用する可能性を語った。そのような展開は経済に途方もない流動性をもたらす可能性があると指摘している。

セタプート氏は、中央銀行はDeFi業界の最近の動向を追跡していると述べたが、タイのデジタル通貨に新しいテクノロジーを採用する前に、中央銀行は顧客の識別とプライバシーという2つの主要な課題を解決する必要があると述べている。

セタプート氏は、スマートコントラクトの展開は、「インタノン」プロジェクトの次のフェーズで主要な焦点であるとも述べた。

「スカイが説明したように、スマートコントラクトの機能を調査した。債券のライフサイクルを模倣し、債券自体でクーポンを支払ったり、当事者間で交換したりできる。私たちは、買戻しと呼んでいる。これにより、それを売却して、別の時間に取り戻したり、取引したりできる」

セタプート氏のコメントは、DeFi業界を巡る大きなハイプの中で出てきた。DeFiは、仮想通貨(暗号資産)起業家が、企業や政府の管理下にない、分散型アーキテクチャで従来の金融商品を再作成できるように設計された新しいツールだ。DeFi業界は2020年に世界中の投資家から多くの資金が流入している。

DefiPulse.comのデータによると、現在DeFi市場でロックされている資金の合計は52億4000万ドルに達している。

7月の報道によると、タイ銀行はいくつかの大企業との金融取引のためにそのCBDCを既に展開している。タイ銀行の副総裁であるバチラ・アロムディー氏は、デジタルバーツ開発の第3段階に入り、より多くの事業を計画していると語っていた。さらに、タイ銀行は2020年9月にも香港の中央銀行である香港金融管理局との取引にデジタル通貨を使う予定だという。

またタイ銀行では、金融取引のコストを削減するためにデジタルバーツの使用を一般にも拡大することを考えていると、アロムディー氏は述べている。しかし、商業銀行への潜在的な悪影響を防ぐために包括的な調査を実施する必要があるとも語っている。

タイのデジタルバーツのプロジェクト「インタノン」は2018年8月からスタートしたプロジェクトだ。これは米フィンテック企業R3の分散型台帳技術コルダを基盤にしているといわれている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン