中国政府やWeChat、アリペイの仮想通貨への強硬姿勢:何が起きたのか?なぜ起こったのか?

 中国政府は先週、ウィーチャット(WeChat)の仮想通貨関連アカウント、ブロックチェーン関連イベント、デジタル資産取引所を相次いで取り締まり、仮想通貨取引とイニシャル・コイン・オファリング(ICO)市場への否定的な態度を一層硬化させている。

WeChatの禁止、そして中央銀行のICOへの警告

 コインテレグラフは8月22日、月間1億人以上のアクティブユーザー数を誇る中国最大のメッセージングアプリWechatが、仮想通貨関係の投資家、ユーザー、企業のアカウントを停止させたということを報じた

 この時、現地の金融関連の報道機関であるLanjingerは、ディープチェーン、フォビ・ニュース、ノードキャピタルが出資しているジンセ、コインデイリーなどのアカウントが凍結されたか永久停止されたと伝えていた。ICOや仮想通貨取引の宣伝が「インスタント・メッセージ・ツールにおける公共情報サービスの作成に関する暫定的規定」と名付けられたポリシーに違反しているためだという。

 コインデイリーが、10万人以上のフォロワーを擁する自社チャンネルをWeChatに凍結されたと認める一方、香港ビットコイン協会のレオンハルト・ウィーズ会長は、コインテレグラフの取材に対し、今回一時的にまたは永久的に凍結されることになった多くのアカウントは、実際には仮想通貨とは別のデリケートな問題のせいで停止されたのだと述べた。

これらのアカウントはワクチンに関するスキャンダルを報じたせいで停止された。仮想通貨のせいではない。直感に反するようだが、こうしたスキャンダルを報じるのは、仮想通貨を報じたり取り扱ったりするよりもずっとデリケートな問題になる。これらのアカウントは、1週間、あるいは1か月ほどで復帰するだろう」

WeChatのアカウント停止は仮想通貨と無関係?

7月末、中国の医療業界には大規模なスキャンダルが持ち上がった。同国の製薬業を監視する機関が、品質の悪いワクチンを製造し現地の規制当局を欺いているとして製薬会社2社を告発する調査結果を発表したのだ。

 フォーチュン誌の報道によると、特に深圳バイオテクノロジー社はデータを偽造し、実際には効果のないジフテリア、百日咳、破傷風ワクチンを25万個以上販売したという。

 中国、そして世界の製薬業界でのこのスキャンダルの深刻さから、コインデイリー、ディープチェーン、フォビ・ニュースなどの大規模な仮想通貨アカウントを除いた、他の多くのアカウントは、このスキャンダルに関する誤った情報を拡散したために停止させられた可能性の方が高いというのがウィーズの主張だ

 だがWeChatがLanjingerに対して公式に認めた通り、中国政府はICOやトークンセールの取り締まりをより一層強化する姿勢を確固として示している。中国のソーシャルメディアプラットフォームも、17年末に政府が禁じた中国市場でのICOを宣伝するのに用いられている個人や企業のアカウントの停止措置を続けている。

 「ICOや仮想通貨取引の投機に関する情報を公開した疑いがある[ことから、アカウントの永久停止措置に踏み切った]」と、WeChatはメディアに述べている

 サウス・チャイナ・モーニング・ポストが入手した声明では、フォビ・ニュースのチームはアカウントの停止が政府の仮想通貨規制と関連していることを否定し、むしろWeChatによる「業界内メディアを標的にした広汎な規制」によるものだとしている。

フェイスブックの中国展開に影響も?

 08年から中国での利用が禁じられていたフェイスブックは、18年7月、中国国内にオフィスを設置するためのライセンスを取得した。ソーシャルメディア界のコングロマリットである同社は、3000万ドル規模の子会社フェイスブック・テクノロジーを杭州に開業し、新興のスタートアップやテクノロジー関連の取り組みに資金を提供する。

 「浙江に中国の開発者、イノベーターやスタートアップを支援するイノベーション・ハブを設置したいと考えている」。フェイスブックはヴァージにそう語っている

 フェイスブックがグローバル市場に自前の仮想通貨を投入したがっているという噂もある。仮想通貨の導入あるいは自社製のブロックチェーン・プラットフォームのローンチという構想があるとすれば、それが現在の同社の中国政府との関係に影響を与えるかどうかはまだ不透明だ。

 百度やウィーチャットといった中国のソーシャルメディアプラットフォームに関しては、仮想通貨やブロックチェーン関連の構想があるという噂は中国国内や世界の仮想通貨コミュニティには見当たらない。おそらく、現地の金融規制当局との衝突を避けるためだろう。

中国人民銀行、ICOに警告

 8月25日、中国の中央銀行である中国人民銀行はICOに対する警告を発表し、トークンセールを通じた資金調達は中国では違法であるということを明確に宣言した。人民銀行と現地の金融規制当局は公式声明の中で、たとえ国内で行われたトークンセールであっても、ICOで行われた取引を追跡・監視することは難しいと付け加えている。

「こうした違法な活動による資金の多くは海外に行き、監督や追跡は非常に難しい」

 人民銀行はさらに、中国はブロックチェーン技術の開発や商業利用を奨励するものの、ICOを合法的なブロックチェーンの運用・開発と見なすことはできないと強調した。声明には次のように書かれている。

 こうした活動は実際にはブロックチェーンテクノロジーに基づくものではなく、違法な資金調達、ピラミッドスキームや詐欺のための投機的なブロックチェーンのコンセプトを実践に移すものだ。主な特徴は次のとおりである。

  1. 違法な活動、規制のおよばない海外の市場、そしてICOで行われた取引の監督や追跡が不可能であるということのリスク
  2. 詐欺的で、不透明で、秘匿された資金調達方法。投資の機運を誇大宣伝して投資家を惹きつけるため、有名人やインフルエンサーに頼っている
  3. 利益を生み出すピラミッドスキームや、『金融のイノベーション』と銘打ってネズミ講を行うなどの違法な運営

 中国人民銀行参事の盛松成氏も、国営の中国経済網に対し、政府がICOの取り締まりの強化を決めたこと、トークンセールの情報を宣伝している公開のアカウント、チャンネル、コミュニケーション・プラットフォームを取り締まっていることを認めた

OTC取引の増加と、アリペイの強硬姿勢

 昨年12月、仮想通貨市場がピークを迎え、全ての通貨の合計評価額が総額9000億ドルを記録していた時、中国の国家インターネット金融安全技術専門家委員会(政府が支援する研究グループ)は、ビットコインの店頭取引(OTC)市場の取引額が急速に増えていると報告した

 「店頭取引が非常に増えている。今後も注視が必要だ」とこの研究グループは述べている。

 当時、サウスチャイナ・モーニング・ポストの取材に対し、香港ビットコイン協会のウィーズ会長はテレグラムが大規模な店頭取引を行うプラットフォームになっていると述べていた。WeChatは現地の金融規制当局との結びつきが強いためだ。しかし、少数の投資家たちは未だに中国製のメッセージングプラットフォームを使用しているとも言っていた。

テレグラムは大口の店頭取引の場として非常に人気があるWeChatを使っているのはそこまでプライバシーに気を使わない人間だ

 複数の仮想通貨取引所や、タイドビットを含むOTCプラットフォームが、ビットコインのOTC市場の取引の増大を認めている。中国市場で取引ができなくなった投資家たちが、ピアツーピアでビットコインに投資できる代替手段を探し始めたことにも触れている。

 今週、中国国内でもっとも普及しているフィンテックプラットフォーム、アリペイが、アリペイネットワーク上でのOTC取引を公式に禁止しアリペイのモバイルアプリからはビットコインやデジタル通貨購入の取引ができなくなった

 仮想通貨の研究者であり、中国の仮想通貨コミュニティ8BTCの創設者でもあるレッド・リーは、アリペイがビットコインのOTC取引にかかわっているアカウントの停止措置を取り始めていることを明らかにした。銀行や金融ネットワークに対し、仮想通貨取引プラットフォームに資金を送るために利用しうるすべての支払いチャネルを遮断するよう、政府から要請があった可能性が高いという

 アリペイが公表した声明の抄訳によると、仮想通貨に投資するためビットコイン取引所に資金を送ろうとしていると合理的な範囲で疑われるアカウントを、同社は永久に停止させるつもりだとしている。

 アリペイを用いた仮想通貨のOTC取引が禁じられたことで、現地の投資家が資金を仮想通貨市場に送るために残された唯一の手段が、香港の仮想通貨取引所となった。

 中国の投資家たちが、依然として香港のペーパーカンパニーの銀行口座に何百万ドルも送金し、同地の不動産市場で何百万ドルもする物件を購入していることから、現地の銀行口座を使って香港の仮想通貨プラットフォームから投資を行うという可能性はまだ残っている。

 だが中国の強力な資本統制と、税金逃れのために使われている証券口座や定期預金口座を追跡するという政府の新しい取り組みのため、中国から海外市場に資金を送りだすことはさらに難しくなるかもしれない

仮想通貨イベントの禁止

 先週、1日あたりの取引高では世界最大となる仮想通貨取引所のバイナンスが、北京で8月23日に予定していた仮想通貨イベントのキャンセルを余儀なくされた。政府が商業的なブロックチェーン関連会議やミートアップの禁止を公表したためだ。

 北京・朝陽区は、ICOや分散型の資金調達を厳重に取り締まる広汎な取り組みの一環として、ホテルや大型のイベント会場に対し、仮想通貨に関連するイベントの開催を禁じる   通達を出したことを明らかにした

 ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、バイナンスの広報担当者は、世界各地で数多くのイベントを主催しているために、北京でのイベントの中止は把握していなかったと述べている

「世界各地でたくさんのミートアップを開催していますから、何らかの理由でキャンセルになることもあります」

 中国共産党が発行する人民日報は、ベンチャーキャピタルが背後についている中国の報道機関が、ICOの誇大宣伝によって多額の富を手にしているが、こうしたメディアが長期的にICOの宣伝を続けられるかどうかは不透明である報じている。この記事により、現地当局が今後数カ月のうちに、ICOを宣伝する独立系報道機関を標的にするかもしれないという見方が、投資家の間に広がるかもしれない。

 

「これらの『報道』機関は、仮想通貨の投機の波に乗って巨大な富を手にしている。だがその性質からして、こうした野蛮な成長がどこまで続きうるのかは定かではない」

 結論として、ここ2カ月の間、中国政府はそのリソースの大部分を投じて仮想通貨取引とICO市場の取り締まりを強化している。

 ウィーチャットやアリペイ、その他のプラットフォームが行った検閲と、北京での仮想通貨イベントの禁止を踏まえると、同国でのブロックチェーン技術と仮想通貨開発は今後失速していくことも考えられる。中国は今年、ブロックチェーンのプロジェクトに30億ドル以上を出資してきたのだから、これは皮肉な事態だ。