香港を拠点とするアニモカ・ブランズが、米国市場での株式上場を検討している。同社は、トランプ米大統領による仮想通貨規制の緩和姿勢を「世界最大の資本市場に進出する好機」と捉えている。
アニモカ・ブランズのヤット・シウ会長は、フィナンシャル・タイムズの取材に対し、上場に関する正式な発表が近く行われる可能性があると述べ、現在は株式保有構造などの選定を進めている段階だと明かした。
シウ氏は、「市場環境に左右されるというよりも、タイミングと戦略的な位置づけが決め手になる」と語った。
アニモカ・ブランズは2020年、ガバナンスや一部仮想通貨の扱いをめぐる問題でオーストラリア証券取引所から上場廃止となったが、その後、オープンシー、クラーケン、コンセンシスなど多数の有力企業への出資を通じて、強固な投資ポートフォリオを築いてきた。
2024年12月期の決算は、売上高3億1400万ドルに対し、純利益9700万ドルを計上。前年から大幅に増加している。
シウ氏によると、アニモカは非金融系では世界最大の仮想通貨企業として、3億ドル相当の現金およびステーブルコイン、さらに5億3800万ドル以上のデジタル資産を保有しているという。
また、同社の出資先である米クラーケンを含め、他のポートフォリオ企業も2025年から2026年にかけて米国での上場を検討している可能性があると指摘した。
仮想通貨企業、米市場への“回帰”を模索
バイデン政権下では、米連邦機関による仮想通貨企業への提訴や強制執行が相次ぎ、規制の厳格化が進められていた。シウ氏は、こうした姿勢がイノベーションを阻害し、海外企業の米国参入を思いとどまらせていたと批判する。
一方、トランプ大統領は政権復帰以降、仮想通貨業界への支持を明言し、規制当局による取り締まりの縮小が見られている。シウ氏は「これは歴史的なタイミングだ」と述べ、「この機会を活かさなければ、大きな損失になる」と強調した。
実際、米証券取引委員会(SEC)は、仮想通貨企業に対する十数件の執行措置を取り下げまたは保留しており、米司法省も最近、仮想通貨に特化した執行部門の解散を発表している
こうした実務レベルでの規制緩和は、業界全体の米国への回帰を促している。たとえばOKXは、米当局との5億400万ドルの和解から数カ月後に、カリフォルニア州サンノゼに米国本社を設立する計画を公表した。
また、2022年末に「規制の不透明性」を理由に米国市場から撤退していたネクソも、4月28日に再参入を発表している。