米国は「ハイテクの冷戦」で中国に負けているとリップルの共同創業者が警鐘を鳴らした。

8月21日づけのザ・ヒルによると、リップル共同創業者クリス・ラーセン氏は、中国がデジタル通貨でリーダーシップを発揮している背景には、世界の準備通貨としての米ドルをデジタル人民元で置き換える「1世紀に1度」のチャンスがあると指摘。米国がデジタル通貨開発で大きく水を開けられていることに危機感を示した。

ラーセン氏によると、デジタル人民元はすでにデジタル決済をアリペイやウィーチャットを通して普遍的に使えるレベルに達成している。中国の中央銀行である人民銀行がまもなくデジタル人民元を発行する境目であるのに対して、米国は公式に未だにデジタルドルのイニシアチブを始めていない。

また、中国にビットコイン(BTC)のマイナーがひしめき合っていることも付け加えた。

「仮想通貨マイニングの少なくとも65%が中国に集中している。つまり、中国政府がそうしたプロトコルをコントロールする過半数を持っているということだ。取引記録をブロックしたり逆戻りさせたりできる」

さらに同氏は中国による香港国家安全維持法の施行にも言及。中国は、「1国で2つのグローバル金融センターを持つ唯一の国になった」とし主張した。

その上でラーセン氏は、「強いハイテク企業をアメリカに持つこと」は国の安全保障上の問題と主張し、中国のハイテクと仮想通貨分野でのリーダーシップに挑戦することを促した。

「ブロックチェーンへの関与を強化せよ」

ラーセン氏は6月にも、次世代の金融システムを巡る米中テック冷戦について警鐘を鳴らしていた。ラーセン氏は「米国政府はブロックチェーンにもっと関与する必要がある」と語っている。中国がデジタル人民元の開発やブロックチェーンの導入において「我々の先を行っている」状況に警鐘を鳴らしている。

「我々はこのゲームで遅れを取っている。米国は2017~18年のICO(イニシャル・コイン・オファリング)がひどかった時のスタンスから変わらなければならない。私たちはICOとの戦争では勝った。今、私たちは中国とどのように競争するのか、どのように追いつくのかに切り替える必要がある」

ブロックチェーンやフィンテックを巡る競争は、次世代のグローバルな金融システムを巡る「テック冷戦」だと、ラーセン氏は語る。

米国とその同盟国がこの冷戦に敗れることになれば、中国が次世代の金融システムを支配することになる。そうなれば、米国や西側の企業がグローバルば金融システムからブロックされるという「壊滅的な」結果をもたらすと、ラーセン氏は警告していた。

デジタル人民元と政治

ただ、デジタル人民元の技術的な完成がすなわち普及につながるわけではないだろう。

中国国内や一帯一路構想に賛同する国々の間でまずは流通するかもしれないが、日本や米国、欧州を含めてほとんどの国ではデジタル人民元が使われる見込みはない。とりわけ、中国の領土的な野心や国際合意の反故に対する批判は高まっており、いわゆる自由主義諸国で包囲網を作ればなおさらデジタル人民元が使われなくなる理由になる。

YouTubeチャンネルでお伝えしたように、Fisco取締役の中村孝也氏は、中国政府が長年掲げてきた「中国の夢」がデジタル人民元の普及の足かせになってしまうかもしれないという見方をしている。