暗号資産やステーブルコインは、決済の効率化や既存金融システムの最適化手段として、伝統的金融(TradFi)分野でも注目を集めている。
金融の文脈における担保管理とは、ローンやデリバティブなどの取引を保証するために差し入れられる担保を管理し、信用リスクを軽減しながらスムーズな取引を実現するプロセスを指す。
DTCC Digital Assetsによる最近のパイロットプログラムでは、ステーブルコインなどのデジタル資産が、この重要な担保管理機能の近代化と簡素化に大きく寄与する可能性があると示された。プログラム名は「グレート・コラテラル・エクスペリメント(Great Collateral Experiment)」。
「未決済のデリバティブ、清算済みのデリバティブ、中央清算機関、レポ取引、その他あらゆる担保に関しても、デジタル資産は担保管理の完璧なユースケースだ」と、DTCC Digital Assetsのプロダクトディレクターであるジョセフ・スピロ氏は、トロントでのConsensus 2025のパネルで語った。
担保管理には、事前に定められた間隔でのみ適切な当事者に引き渡す必要があるなど、複雑な要件があるため、手作業による処理が多くなる傾向にある。
「このすべてが、デジタル資産とスマートコントラクトによって、より速く、効率的に処理できるようになる」とスピロ氏は述べ、「手動処理の多くは不要になる」と付け加えた。
このパイロットは、米国でステーブルコインに関する明確な規制枠組みが検討される中で実施された。
5月14日には、60人以上の主要な暗号資産プロジェクト創業者がワシントンD.C.に集まり、米国ステーブルコインの国家的革新を導くことを目的とした「GENIUS法案(Guiding and Establishing National Innovation for US Stablecoins)」を支持した。この法案は、5月8日の投票で民主党からの支持を得られず、いったん否決されている。
この法案は、ステーブルコイン発行者に対する担保要件を定め、マネーロンダリング対策(AML)法への完全準拠を義務付ける内容だ。
5月8日の否決に際しては、一部の民主党議員が、ドナルド・トランプ米大統領が自身の暗号資産関連事業を通じて利益を得る可能性があると懸念を示したことも影響したとされている。
ステーブルコインが融資と決済を簡素化
全米信用組合管理庁(NCUA)のカイル・ホープトマン議長は、従来の法定通貨を担保とするローンにステーブルコインを組み込むことで、TradFiの融資・決済プロセスがさらに簡素化される可能性があると語った。
「ローン返済プロセスの透明性と効率性が向上する」とホープトマン氏は同パネルで述べ、「現在は月末にまとめて決済される煩雑な仕組みだが、ステーブルコインのプログラム可能性を活かせば、遥かにスムーズになる」と続けた。
「信用組合による決済の負担が軽減されるだけでなく、少額の取引にも適用できるようになる。そして借り手にとっても、従来の大規模な債券発行のような特性を持つことで、より有利な条件を得られるようになる。ステーブルコインの導入によって、流動性が生まれるからだ」と語った。
別の法案である「STABLE法案(Stablecoin Transparency and Accountability for a Better Ledger Economy)」は、4月2日に下院金融サービス委員会で32対17の賛成多数で可決されており、現在は下院本会議での審議・採決を待っている。