米国の仮想通貨取引所大手コインベースが2日、機関投資家向けにデジタル資産を管理する「コインベース・カストディー」を立ち上げたと発表した。コインベースは機関投資家の100億ドルほどが手付かずのまま放置されていると考えており、今回その取り込むに向けて一歩前進した形だ。

 「コインベース・カストディー」は2017年末から立ち上げが計画されていて、機関投資家の一番の懸念材料であるセキュリティーの強化を目指してきた。コインベースは過去6年間、200億ドルもの顧客の仮想通貨を保管してきたが、今後、米国証券取引委員会(SEC)に準拠し金融取引業規制機構(FINRA)のメンバーであるエレクトロニック・トランザクション・クリアリング(ETC)社によってカストディアン業務が遂行されることになるという。米国の規制機関の動向に敏感な機関投資家に配慮した形だ。

 現在、「コインベース・カストディー」を使うことができるのは米国と欧州の機関投資家で、扱う仮想通貨はビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)。コインベースは「年末までに」アジアの機関投資家にも開放して、扱う仮想通貨の種類を増やす計画を示した。

 「コインベース・カストディー」が行うセキュリティー対策は多岐に渡っており、例えば「オンチェーンにおける仮想通貨の分離」や「オフライン、マルチシグと地理的に分散された取引の保護」に加えて「コールドストレージに対する厳格な監視と報告」の実行を謳っている。また「安全に分離されたホットウォレット」などの導入も計画しているという。さらにコインベースは、将来的には新たな機関投資家に対して「プルーフ・オブ・ステークと分散化されたガバナンスを通じた仮想通貨エコシステムへの参加」を促す体制を整えるという。

 コインベースは5月、「手付かずの機関投資家の100億ドルほど解放する」ことを目指して様々な商品を発表していて、「コインベース・カストディー」はその中で一番最初に立ち上がることになった。

 コインベースは、完全にSECに規制されたブローカー・ディーラーになるべく証券業者を買収したり、銀行ライセンスの取得を模索したりしている。また先月には純資産100万ドル以上または年収20万ドル以上の大口投資家を対象にインデックス・ファンドを開始。さらに利用者を増やすために日本に進出する計画も明かした。

 ただ急速な成長に対する懸念の声も上がっている。米デジタルメディアのマッシャブルは先月、成長スピードについていけず顧客対応など全く準備ができていないなどコインベースに対する不満が書かれた134ページに及ぶファイルを明らかにした