日本は、世界各国と比較してとくに社会保障が手厚い。病気・けがをしたときや、老後生活が始まったときなどに公的な給付が受けられる「社会保険」に加入できるためだ。

民間の保険会社で販売されている生命保険や医療保険などは、基本的に社会保険の保障(補償)をカバーするために加入する。そのため民間保険に加入する際、社会保険について理解していないと、余分な保障に加入してしまい保険料が家計を圧迫しかねない。

そこで本記事では、社会保険の種類や保障(補償)内容、民間保険との違いなどをわかりやすく解説していく。

社会保険とは

社会保険とは、国民の生活に潜むリスクに対処するための公的保険制度だ。加入者(被保険者)やその家族に、病気、けが、死亡、失業などの事態が発生した場合、支払われた保険料の中から給付を行う。

加入条件に当てはまる人は、社会保険に加入して被保険者となり保険料を支払う必要がある。また制度によっては、被保険者を雇用する事業所(勤務先)も保険料を負担する。

社会保険には、以下の5種類がある

  • 医療保険
  • 年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険(労働者災害補償保険)

それぞれの保障(補償)内容や加入者、保険料の決まり方を解説していく。

社会保険5つの代表的な保障内容まとめ

医療保険

医療保険のイメージ

日本は「国民皆保険」を導入している。国民皆保険とは、病気やけがになったときに安心して医療が受けられるよう、国民一人ひとりが公的医療保険に加入して保険料を出し合い、病気やけがを負った人を支え合う仕組みだ。国民皆保険により日本国民は、医療機関を自由に選択でき、高度な医療を安価な医療費で受けることができる。


医療保険の保障内容

公的医療保険に加入し保険料を支払うと、健康保険証が発行される。病気やけがで、医療機関を受診したときに、支払い窓口に健康保険証を提示すると、かかった医療費の3割負担で済む。なお義務教育に修学する前の児童や70〜74歳の人は2割負担、75歳以上の負担は1割負担となる。

また、ひと月(1日〜月末)までで自己負担した医療費が、所定の上限を超えた場合「高額療養費制度」を申請すると、超過した金額を払い戻してもらえる。

ほかにも、妊娠4カ月(85日)以上の人が出産したとき1児につき42万円を給付する「出産育児一時金」や、出産をするために会社を休んだときの給付である「出産手当金」、病気やけがで働けなくなった場合の「傷病手当金」などがある。


医療保険の種類と保険料

公的医療保険に加入するのは、原則としてすべての日本国民だ。ただし、職業に応じて加入する公的医療保険は異なる。たとえば自営業やフリーランスの多くは、自治体が運営する「国民健康保険」に加入している。国民健康保険の保険料は、簡単にいえば世帯の収入や家族の人数、住んでいるのエリアなどで変わる。

会社員や公務員、一定の要件を満たすパート・アルバイトは「健康保険(被用者保険)」に加入する。傷病手当金や出産手当金を受け取れるのは、原則として健康保険に加入している人のみだ。

健康保険の保険料は、標準報酬月額に保険料率を乗じて算出する。標準報酬月額とは、毎年4〜6月までの平均給与(報酬月額)に応じた等級ごとに定められた報酬額だ。保険料率は、勤務先や居住地などで異なる場合がある。なお健康保険の保険料は、被保険者と事業所が半分ずつ納める。

また健康保険には、扶養の仕組みがあり、収入が一定以下の配偶者や子どもを、扶養に入れて被扶養者にすることで、被保険者本人とほぼ同等の給付を受けられる。扶養に入れた人の保険料は支払う必要がない。

医療保険まとめ

年金保険

年金保険イメージ

年金保険とは、老後や死亡、障害など所定の状態になった人に対して、最低限の生活を保障するための年金を支給する制度だ。日本は「国民皆年金」を導入しており、要件に当てはまる人は、国民年金や厚生年金に加入して保険料を支払う必要がある。

国民年金に加入するのは、原則として20歳以上60歳未満の人だ。社会保険の適用事業所である法人や個人事業者で働く人は、国民年金と合わせて厚生年金にも加入する。なお公務員や私立学校の教職員などが加入していた共済年金は、2015年(平成27年)に厚生年金へと一元化された。


年金保険の保障内容

年金保険の加入者またはその家族が受給できる年金には、以下の3種類がある。

  • 老齢年金:老後の生活保障として原則65歳以上の人に支給される年金
  • 遺族年金:被保険者が亡くなった場合に、所定の要件を満たす残された家族に支給される年金
  • 障害年金:病気やけがなどで所定の障害等級に認定された場合に支給される年金

国民年金に加入する人は、上記の年金について「基礎年金」を受給する権利がある。また厚生年金に加入する人は、基礎年金に加えて「厚生年金」も受給できる権利がある。たとえば厚生年金に加入する会社員は、要件を満たすと老後に「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の両方を受給できる。


年金保険の被保険者と保険料

年金保険のうち国民年金保険の被保険者は、以下の通り第1号、第2号、第3号に分かれている。

  • 第1号被保険者:自営業やフリーランスなど
  • 第2号被保険者:会社員や公務員など厚生年金に加入する人
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養される配偶者(例:専業主婦・専業主夫)

厚生年金の被保険者は、同時に国民年金保険の第2号被保険者でもある。

第1号被保険者が支払う国民年金保険料は、定額だ。2021年(令和3年度)の年金保険料は、1万6610円である。また国民年金保険料は、本人と配偶者それぞれが保険料を負担する必要がある。なお国民年金保険料は、1年分や2年分を前納することもできる。前納をすると保険料が割引となる。

厚生年金の保険料は、健康保険と同様、標準報酬月額に所定の保険料率を乗じた金額を、被保険者と事業者が折半して支払う。なお厚生年金保険料には、加入者自身や第3号被保険者の国民年金保険料も含まれているため、別途負担する必要はない。

年金保険まとめ

介護保険

介護保険は、老化や病気などで介護が必要になった人を社会全体で支えあうために導入された制度だ。介護保険の加入者が病気やけが、老化などの理由で介護が必要な状態となり、自治体から「要介護認定」または「要支援認定」を受けると、所定の介護サービスが原則1割の自己負担で利用できる。※所得によっては2割負担や3割負担となる。

要介護認定は、要支援1〜2、要介護1〜5まである。介護の必要性は、要支援1がもっとも低く、要介護5がもっとも高い。要介護1〜5に認定された場合に利用できる「介護サービス」には、訪問看護や訪問入浴など在宅で受けられるサービスや、介護老人保健施設・特別養護老人ホームに入居できる施設サービスなどがある。要支援1または2と認定された場合は、所定の「介護予防サービス」を利用できる。

介護保険に加入するのは、40歳以上の人だ。介護保険の被保険者は、65歳以上の人が対象である「第1号被保険者」と、40〜64歳の人が対象である「第2号被保険者」に区別されている。

第1号被保険者は、原因を問わず要介護や要支援の認定を受けると、介護サービスを一定の自己負担で利用できる。第2号被保険者の場合は、がんや関節リウマチなど老化に起因する16種類の特定疾病が原因で要介護認定を受けなければ、介護サービスを利用できない。

介護保険料は、第1号被保険者の場合、所得に応じて市町村が決めている。また保険料は、年金からの天引き、または納付書による納付のどちらかで納める。

第2号被保険者のうち健康保険に加入する会社員や公務員などは、標準報酬月額に応じて決まる介護保険料を、健康保険料と合わせて納める。国民健康保険に加入する介護保険の第2号被保険者は、前年の所得に応じて決まる介護保険料を、国民健康保険料と合わせて納める。

介護保険まとめ

雇用保険

雇用保険とは、企業が倒産したり自らの都合で退職したりして労働者が失業した場合に生活を心配することなく新しい就職先を見つけられるよう給付をする制度だ。

雇用保険に加入していた人が失業状態となった場合に、ハローワークで求職の申し込みをし、7日間の待期期間が経過すると「基本手当」を受けられる。基本手当の金額は、年齢や給与額によって異なるが、失業前の6カ月間の平均賃金の5割〜8割で、給付額の上限・下限が定められている。
※自己都合退職の場合は、さらに2カ月の給付制限期間が終わらなければ基本手当の支給は開始されない。

雇用保険の加入者が受けられる手当は、ほかにも失業中に再就職先が決まった場合に要件を満たすと受けられる「就業促進手当」や、教育訓練受講費用の一部を支給してもらえる「教育訓練給付金」、育児休業中に受けられる「育児休業給付」がある。

雇用保険に加入するのは、以下の要件に該当する人だ。自営業やフリーランスは原則として雇用保険に加入しない。

  • 雇用期間が31日以上見込まれる
  • 労働時間が週に20時間以上
  • 学生や顧問などでない

雇用保険の保険料は、事業所と折半で支払う。労働者(被保険者)が自己負担する保険料は、基本給や賃金総額残業手当など合計した賃金総額に、所定の保険料率をかけて計算する。保険料率は、一般の事業が3/1000、農林水産や建設事業など一部の事業が4/1000だ。※2021年度(令和3年度)の保険料率

雇用保険まとめ


労災保険(労働者災害補償保険)

労災保険とは、業務をしている最中や通勤の途中で、けがや病気、障害を負った労働者やその親族に対して給付をする制度だ。たとえば「工場内での作業中、機械に巻き込まれて指を切断した」「通勤中に電車と接触して死亡した」などに該当すると給付を受けられる。

労災保険の給付には、休業中の賃金を補償する「休業補償給付」、けがや病気が治るまでの医療費を給付する「療養補償給付」や、所定の障害状態に該当した場合の「障害補償給付」、亡くなったあと残された家族に支払われる「遺族補償給付」などがある。

職種を問わず、労働者を1人でも雇っているのであれば、事業所は労災保険に加入しなければならない。労働者とは、正社員だけでなくパートやアルバイトも含まれる。

労災保険の保険料は、事業所が全額負担するため、労働者自身は負担する必要はない。

労災保険まとめ

狭義の社会保険

会社員や公務員などが加入する健康保険と厚生年金保険を「(狭義の)社会保険」、労災保険と雇用保険を「労働保険」と呼ぶ場合がある。

法人や個人事業者など、社会保険が適用される事業所に常時使用される70歳未満の人は、収入や性別、国籍などに関係なく、社会保険に加入しなければならない。常時使用される者とは、事業所で常時勤務して給与を得ている従業員を指す。

パートやアルバイトについては、かつては週30時間働いていなければ(狭義の)社会保険に加入できなかった。それが2016年(平成28年)10月1日から適用範囲が拡大され、週30時間働いていなくても、以下の1〜5のすべてに当てはまると(狭義の)社会保険に加入できるようになっている。

  1. 被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える適用事業所で勤務する
  2. 労働時間が週に20時間以上
  3. 賃金月額が8.8万円以上である
  4. 学生でない
  5. 1年以上の雇用期間が見込まれること

また2017年(平成29年)4月からは、従業員が500人以下の会社でも、労使合意があれば会社単位で社会保険への加入が可能となった。

社会保険の適用事業所とは

社会保険の適用事業所には「強制適用事業所」と「任意適用事業所」がある。強制適用事業所とは、社会保険への加入を義務付けられている事業所であり、事業主や従業員の意思とは関係なく、健康保険や厚生年金へ加入しなければならない。

強制適用事業所となるのは、株式会社を始めとした法人の事業所や、従業員が常時5人いる個人の事業所である(農林漁業、サービス業を除く)。強制適用事業所であるにもかかわらず社会保険に加入しないのは、違法である。

任意適用事業所とは、強制適用事業所の対象外となる事業所のうち、従業員の半数以上が社会保険の適用事業所になることを同意し、事業主が適用の申請をして厚生労働大臣の認可を得られた事業所だ。

社会保険と民間保険の違い

民間保険とは、生命保険や医療保険、がん保険など、民間の保険会社が社会保険の保障(補償)をカバーするために販売する金融商品だ。ここでは、社会保険と民間保険の違いを解説していく。


保障(補償)内容

社会保険のうち医療保険や介護保険は、一定の自己負担で医療行為や介護サービスを受けられる「現物支給」の制度だ。民間の保険会社が販売する医療保険や介護保険は、保険会社が定める支払い要件に該当すると定額の保険金や給付金が支払われる「現金支給」が原則である。

公的な年金保険は、加入すると老齢・死亡・障害の3つの年金を受給できる権利が得られる。民間保険の場合は、老後の年金をカバーする場合は「個人年金保険」、亡くなったあとの残された家族の生活費をカバーする場合は「定期保険」や「収入保障保険」など、加入する目的に応じて商品を選択する必要がある。

また社会保険は、加入先によって細かい違いはあれど、大部分の保障(補償)内容は共通している。一方で民間保険は、加入する保険会社によって保障(補償)内容や保険金・給付金の支払要件、取り扱われている商品など大幅な違いがある。

なお、雇用保険や労災保険を補完するための民間保険は販売されていない。


加入要件

社会保険は、所定の要件に当てはまる人は必ず加入しなければならない。一方、民間保険への加入は任意であり、加入するかどうかは個人の判断に任されている。

また契約を申し込むときに、保険会社に健康状態を告知して審査を受ける必要があり、審査結果によっては加入できない点も民間保険の特徴だ。


保険料

社会保険の保険料は、基本的に加入する人の所得や家族構成、居住するエリアなどによって決まる。※社会保険の種類によって、保険料の計算方法は異なる。 

 一方で、民間保険の保険料は、加入する人の年齢や選択した保障(補償)プラン、加入先の保険会社などで異なるのが一般的だ。また告知した健康状態によっては、保険料が割増となる場合がある。

【関連記事】
資産形成・資産運用とは【老後2000万円問題に備える】
節税しながら自分で年金を作る制度「iDeCo」を解説