仮想通貨取引所ビットゲットのグレイシー・チェン氏は3月26日、ハイパーリキッドが自社の永久先物取引所で発生したJELLYトークンに関する事件への対応を「未熟かつ非倫理的」と非難し、このままでは「FTX 2.0」になりかねないと警鐘を鳴らした

中央集権的運営への疑問

3月26日、ハイパーリキッドはJELLYトークンの永久先物契約を上場廃止とし、「不審な市場活動の証拠」が見つかったとして、利用者に補償を行うと発表した。チェン氏によれば、この判断は、ハイパーリキッドが持つ比較的少数のバリデーター間の合意によってなされたもので、ネットワークの「見かけ上の分散性」に対する懸念を改めて浮き彫りにした。

チェン氏は、「革新的で分散型の取引所を標榜しながら、実際の運営はオフショアの中央集権的取引所に近い」と指摘し、「ハイパーリキッドはFTX 2.0になりつつある」との見解を示した。

FTXとは、サム・バンクマン-フリード氏が運営し、2022年に崩壊して詐欺罪で有罪判決を受けた仮想通貨取引所だ。

チェン氏はハイパーリキッドを違法と断定したわけではないが、その対応を「未熟かつ非倫理的、そしてプロフェッショナルではない」と批判した。

「JELLY市場を一方的に閉鎖し、望ましい価格で強制決済を行った判断は、非常に危険な前例を作る」とし、「取引所の基盤は資本ではなく信頼であり、それを失えば回復は極めて困難」と述べている。

JELLYトークンを巡る経緯

JELLYは、Venmo共同創業者イクラム・マグドン-イスマイル氏が手掛けるWeb3ソーシャルメディアプロジェクト「JellyJelly」の一環として、2024年1月にローンチされた。

DexScreenerによると、立ち上げ当初は時価総額2億5000万ドル近くに達したが、その後急落し、数百万ドル規模にまで下落した。ところが3月26日、バイナンスがJELLYの永久先物取引を開始したことを受け、時価総額は再び2500万ドル近くまで回復した。

しかし同日、あるハイパーリキッドのトレーダーが「JellyJellyに対して600万ドル規模のショートポジションを建てた」が、その後「オンチェーン上で価格を意図的に吊り上げて清算させた」と、Web3企業APコレクティブの創業者アビ氏がXで報告した

BitMEX創業者アーサー・ヘイズ氏はこの件について、「ハイパーリキッドが分散型だと信じているふりはやめよう」と述べ、「トレーダーはその実態など気にしていない」と皮肉を込めて述べる。

また、「HYPEトークンはすぐ元の水準に戻るだろう。ディジェン(投機家)は結局ディジェンであり続ける」と投稿している。

相次ぐトラブル

ハイパーリキッドは今月12日にも、イーサリアム(ETH)の約2億ドル規模のロングポジションをクジラが意図的に清算したことで、流動性プールHLPの預託者に約400万ドルの損失を与える事件に見舞われた。

この経験を受け、ハイパーリキッドはポジションの担保要件を引き上げる措置を講じている。資産運用会社ヴァンエックの1月のレポートによると、ハイパーリキッドは現在、レバレッジを利用した永久先物取引の市場において約70%のシェアを占める最大手である。

永久先物(通称パープス)とは、満期のないレバレッジ付き先物契約であり、USDCなどの証拠金を担保として預け入れることで取引が可能となる。

L2Beatによれば、ハイパーリキッドのバリデーターセットは2つあり、それぞれ4人のバリデーターで構成されている。対照的に、ソラナやイーサリアムは、それぞれ約1000個および100万個以上のバリデーターによって支えられている。

バリデーター数が多いほど、ブロックチェーンが少数の関係者によって操作されるリスクが小さくなるとされている。