世界の指導者たちは仮想通貨をどう考える?分散化でどう中央権力の補強を目指すか

 仮想通貨市場が規制や政治の動きに対して敏感なことを踏まえれば、世界の指導者たち(そして彼らの仮想通貨に対する考え)が仮想通貨市場の今後の行く末を決定づけるうえで極めて重要となるのは明白だ。多くの指導者たちは過去数ヶ月間のあいだ傍観し、仮想通貨の有機的な発展を(多かれ少なかれ)受け入れてきた。だが、公的機関の行動を起こす時がいよいよ近づいている兆しも出始めた。その時、ビットコインとその他の仮想通貨は政府による「取り締まり」をまともに受けるか、または好意的な支援による恩恵を受けるかのどちらかになるだろう。

 しかし、仮想通貨に対して世界の指導者たちが共有している唯一にして一貫したスタンスを探り当てるのは難しい。ビットコイン、イーサリアム、その他のプラットフォームについて相いれない発言を行っている指導者は多いし、何の意見も表明していないものも多い。だが、雑音の渦巻く最中にあって一つはっきりしているのは、指導者の多くは今まさに実在している仮想通貨について熱心でなくとも、理論上のブロックチェーン技術については熱心であるということだ。

 これが仮想通貨にとって不運な影響を与える可能性がある。そのような立場が、分散型プラットフォームと対立しつつ、より集中型で政府公認の代替品を利する協調行動につながる場合だ。一方では、コミュニティ主導の仮想通貨による分散化がその擁護者の主張どおり強力だったなら、結局のところ、世界の指導者たちが仮想通貨についてどう考えているかなど長期的には全く取るに足りないことなのかもしれない。
 

ドナルド・トランプ:ビットコインを「見張っている」

 現在、米国のドナルド・トランプ大統領は仮想通貨について話すことにそれほど熱心ではないように思われる。だが、彼の周囲の人々が仮想通貨についての発言に注目することで、彼自身のビットコインに対する基本的なスタンスを推測できる。彼らの言葉は(総じて)控えめ、または限定的だったが、トランプ大統領はもしかすると、現時点の西側諸国において最も仮想通貨に共感している指導者ではないかと思われる。

 トランプ第45代大統領に近い人物がつい最近発した表明の一つは、アメリカ合衆国国家経済会議の第11代委員長(17年1月~18年4月)にしてゴールドマン・サックス元社長のゲイリー・コーン氏によるものだ。コーン氏は「グローバル仮想通貨」がやがて登場するだろうという自らの考えを認めた。ビットコイン過激派にとっては残念なことに、コーン氏はそのようなグローバルトークンはビットコインではないと考えている。出現して未来に権勢をふるうコインが何であれ、「マイニングコスト、電力コスト、またはそれに類するものに基づいている」はずがないと考えているためだ。

 言い換えると、コーン氏は「ビットコイン以外のブロックチェーン」派閥の一員であり、もはやトランプ大統領の最高経済顧問ではないものの、トランプ大統領の周囲にいる他の人物も(トランプ大統領自身を含めて)その考えの共鳴者だと思われる。アメリカ合衆国行政管理予算局のマージー・グレイブス最高情報責任者は9月、米政府が分散型台帳技術の使用事例を調査していると明かした。ちょうど同じ頃、別のホワイトハウス当局者たちがブロックチェーンの採用が定着するために必要なデータ標準規格の採用を呼び掛けていた。

 このようなブロックチェーンに対する熱意が、仮想通貨に対する同様の態度も期待させる結果になっていたとしても、そのような期待は11月30日の記者会見中に大いにくじかれた。「そもそも大統領はこのこと、具体的にはビットコインに関心をもっているのか?」と質問を受けたとき、ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は次のように答えた。

「それが(トランプ大統領の)見張っているものだと知っている」

 実を言うと、このような警戒心の大半は国土安全保障顧問のトム・ボッサート氏によって維持されていた。彼はビットコインがトランプ政権にとって心躍る対象というよりも懸念の対象であるとほのめかしていた。

 10月のジェフ・セッションズ司法長官による発言もおそらく、ホワイトハウスが既存の仮想通貨を解決策というよりかは問題として捉えている事実を示唆していた。その一方、トランプ大統領のもう一人の元ブレーンであるスティーブ・バノン氏の最近の発言は、大統領のビットコインに対する個人的見解がもっと同調的であることを示唆しているのかもしれない。3月、バノン氏は「通貨の価値を低下させ、低過ぎる賃金を生み出す中央銀行から逃れる」こと、そして各個人が自分の個人データの支配権を(必ずしもトランプ大統領を支持していない)テクノロジー企業から取り戻すことを実現する手段として仮想通貨を支持した。

 彼はこの発言に続き、6月には仮想通貨を「画期的だ」と表現した。 これについてトランプ大統領がその(自ら8月に解任した)首席戦略官と完全に意見を一致させていると推測するのは飛躍し過ぎではあるものの、減税を導入し、小さな政府を支持する大統領であれば、「中央当局から支配権を取り戻す」技術も好むかもしれないとの推定はそれほど飛躍していない。それでもやはり、SECやCFTCによる仮想通貨を緩和しようという傾向の高まりが何らかの兆しでもない限り、たとえトランプ大統領がビットコインに対して個人的に熱心であるとしても、それが短期的に見て新しい政府方針につながるとは考えづらい。

EU:オタクも多いが、ビットコインよりブロックチェーン

 話をアメリカからEUに移そう。おそらく、そこでもビットコインよりブロックチェーンを支持する同様の態度が広く行きわたっていると述べても驚かないだろう。イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、イタリアの政府全てが仮想通貨規制を導入する意図があると説明している。そして、それら政府が仮想通貨取引に抱く疑念における共通テーマは、その安全性およびマネーロンダリングとの密接な関係だ。

 イギリス政府は12月、仮想通貨取引所が利用者に対して匿名での取引を許可すること、および本人確認を行わないことを違法とする法案の提出に意欲があると明かした。イギリス大蔵省のステファン・バークレー経済長官は次のようにのべた。

「私たちは仮想通貨取引プラットフォームと一部のウォレット事業者を、マネーロンダリング対策およびテロ資金供与対策の規制の枠内に取り込む交渉を進めることにより、仮想通貨利用にまつわる不安の解消に取り組んでいる」

 同じく、フランスのブリュノ・ル・メール財務大臣は1月、フランスとドイツが3月のG20サミットで仮想通貨規制の導入を目指す共同推進に乗り出すと発表した。そのような協調的行動は、仮想通貨の統制に対するまさに最高レベル(例として、ドイツのアンゲラ・メルケル首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領といったレベル)による承認が両国に存在していることを意味する。とは言え、EUとG20の指導者たちは仮想通貨に大きな注意を払っていた(そして今なお注意を払っている)にもかかわらず、3月にアルゼンチンで開かれたサミットで合意された具体的な行動は何もなかった。出席した20人の財務大臣たちは仮想通貨がマネーロンダリング、租税回避、さらにはテロ資金供与に利用されるかもしれないという不安を共有してはいたものの、仮想通貨が金融の安定を脅かすほど巨大であると確信していたものがあまりに少なかった。このため、具体的な勧告の策定は7月に行われる次回のG20会合まで延期されることに決まった。

 この勧告が特に好意的なものになる可能性は低いが、ヨーロッパという環境において、ビットコインやそれに類似するものに対するそれほどの敵意が常に存在するわけでないことは指摘に値する。15年7月、当時のデーヴィッド・キャメロン首相はロンドンに本社を置くデジタル資産会社のブロックチェーン社を東南アジアへ向かうイギリスの貿易代表団の一員に選んでおり、イギリス政府が仮想通貨に対して肯定的なスタンスだったことが示唆される。とりわけ、そのスタンスは分散型台帳だけではなく、仮想通貨全般に対するものだった。当時のキャメロン首相に次ぐナンバー2の指導者だったジョージ・オズボーン財務大臣も同年3月、デジタル通貨のもたらす機会の研究に1000万ポンドの資金を提供すると発表していた。

 イノベート・ファイナンス @InnFin  オズボーン財務大臣、#bitcoin ATMで現金を引き出す 

 興味深いのは、オズボーン前財務大臣が14年8月にビットコインを引き出している様子を写真に撮られるほどのビットコインオタクだったことだ。そして、今なお政権の重要な地位についている人々の中にも仮想通貨を個人的に支持している人物はいそうである。エマニュエル・マクロン大統領も16年3月、フランソワ・オランド政権下で財務大臣を務めていた頃、ウォレットのレッジャーブルーを手にしている姿を写真に収められている。さらに彼は同月、フランス証券市場の証券をある種の仮想通貨資産に変更することを目的とし、ブロックチェーン技術を利用することになっていたであろう法律を提案していた。

 レッジャー社 @LedgerHQ フランスのエマニュエル・マクロン @EmmanuelMacron 経済大臣。次世代型ブロックチェーンセキュリティー機器のレッジャーブルーを手にしている。 

 しかし、こういったビットコイン支持の兆候も全ては昨年の仮想通貨に対する大きな投機ブーム以前に見られたものだ。このブームは最終的に、スペインからオランダまで、各国の財務大臣たちが仮想通貨取引のリスクを警告する結果を招いた。それ以降、現在のイギリスのテリーザ・メイ首相やエマニュエル・マクロン大統領といった人物たちが仮想通貨について触れるのは、規制や「監視」といった文脈の中だけとなっている。1月の世界経済フォーラムにおいて、マクロン大統領は演説の中で次のように述べている

「私はIMF(国際通貨基金)が国際金融システム全体の秩序を保つ権限をもつことに賛成する。 そのシステム全域において、規制逃れが起きている。たとえばビットコイン、仮想通貨、シャドーバンキングといったものだ」

 

 しかし、EUの頑なな姿勢については注目に値する例外もわずかに見られる。マルタのジョゼフ・ムスカット首相は17年2月、ブリュッセルで行った演説の中で、ヨーロッパは「ビットコインの大陸」になるべきだと力説した。
 

「仮想通貨の隆盛は遅らせることはできても止められはしない。そのような取引を裏で支えるシステムは伝統的なものよりもはるかに効率的で透明性も高いという事実を、苦労して受け入れている金融機関も存在する」

 それ以降、EU諸国が総じて仮想通貨に対する警戒心を強めているにもかかわらず、マルタだけはますます歓迎する姿勢を強めている。バイナンスとOKExの両社はそれぞれ今年の6月と4月、同国において存在感を確立した。そして現在、EU諸国の中でマルタだけが仮想通貨に好意的な小国というわけではない。リトアニアも今年、協調的な行動に踏み出し、仮想通貨界にとって前向きな枠組みとガイドラインの策定を行ったためである。同じバルト諸国のエストニアも同様の動きを見せたが、国独自の仮想通貨を創設する計画は欧州中央銀行からの批判を受けて凍結された。

東アジア:仮想通貨革命のさなかの取り締まり

 西洋から離れてみよう。仮想通貨と仮想通貨取引に対していっそう抑制的なスタンスが目立つのは中国だ。17年9月、中国政府はICOだけでなく、仮想通貨取引所をアジアの国で運営することまで禁止した。2月に禁止が強化され、国外の取引所も禁じられた。3月の習近平国家主席の再選にもかかわらず、これらは全てまだ存続している。習主席は「中国の非常に長い歴史の中でも稀に見る熱烈な自由貿易支持派」と報じられている。

 習主席は一見したところ、分散型通貨が中国国内で流通するのを許すほどの自由貿易支持派ではないようだが、彼もまたブロックチェーン技術の大ファンの一人だ。習主席は5月、世界を作り変える「技術的革命」の一部としてブロックチェーン技術を称賛した。

「人工知能、量子情報、モバイル通信、モノのインターネット化、ブロックチェーンに代表される新世代の情報技術がそのその応用範囲の中で飛躍的進歩を加速させている」

 習主席(と同時に中国政府)のブロックチェーン技術に対する支援は中国が昨年、登録されたブロックチェーン特許の数で世界のトップに立った理由を説明しているはずだ。また、4月に発表されたおよそ16億ドルというブロックチェーンプロジェクト向けの政府による追加財政支援を考慮すれば、中国が18年も再びこの座に着く見込みは極めて高い。

 しかし、そのすぐ後を韓国が追うことになるだろう。同国の政府も同じくビットコインよりブロックチェーンを好んでいる。韓国の金東ヨン企画財政部長官は2月、分散型台帳の画期的な潜在力について語った。彼は中国人民銀行との会合中、次のように述べた

「ブロックチェーン技術は第4次産業革命を巻き起こす重要な技術革新である。よって、企画財政部は仮想通貨市場の規制に対しては慎重な見方をするつもりだ。仮想通貨の負の使用事例について、当部は厳しい規制を課していく」

 韓国は確かに「仮想通貨の負のユースケース」に関して言えば、強硬路線をとってきた。韓国の一般市民の間で、仮想通貨取引に対する熱が広まったにもかかわらずだ。李洛淵首相は11月、次のような発言まで行った。

「学生を含む韓国の若者が手っ取り早く金を稼ごうと飛び付くケースや、仮想通貨が麻薬取引や詐欺的なマルチ商法といった違法行為に利用されるケースもある。(中略)放置すれば、これが深刻な歪みや社会病理的な現象を引き起こしかねない」

 そういった強硬な発言は、その前後の数か月のうちに韓国政府が取った(そして取る恐れのあった)規制措置と密接に関連していた。その措置の中には9月のICO禁止や1月の匿名による仮想通貨取引の禁止も含まれている。しかし、取引の全面的な禁止は寸前で中止され、文在寅も1月、少なくとも短期的には、完全禁止することはないと発表した。

 この「禁止しないこと」の確認は複数の政府が仮想通貨に関して行った(そして行い続ける)180度の方針転換を示している。これは日本の安倍晋三首相で最も顕著に見られている。彼は14年3月、悪名高いマウントゴックス破綻の1か月後にビットコインは通貨でないとする政府の立場を表明する文書を発表した。日本の銀行によるビットコイン口座の提供を禁止するとともに、ビットコインの仲介業務を禁じる決定の一環として、安倍首相は次のようにのべた。

「ビットコインは日本の通貨でも海外の通貨でもなく、日本の銀行法はもとより、金融商品取引法に記載されている取引とも異なる」

 しかし、初期の仮想通貨業界がマウントゴックス事件から立ち直り、日本が世界第2位の仮想通貨市場となるにつれて、安倍首相(と日本政府)の立場は徐々に軟化した。日本は16年5月、ついに仮想通貨を通貨として認めて、 国内の銀行による取り扱いを可能にしたうえ、仮想通貨取引所が規制の枠内で運営することを許可する動きを受け入れた。それ以降、仮想通貨を正式に認めるという同国の先駆的なアプローチは大半の西欧諸国による規制の焦点とある程度の一致は見ているものの、日本のケースでは規制が「支援と促進」という極に傾いている。

プーチン:彼はやるのか?やらないのか?

 再びヨーロッパに話を戻してみると、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は仮想通貨に対してドナルド・トランプ大統領とほぼ同程度に曖昧なスタンスを取っている。しかし、プーチン大統領のケースでは、この曖昧さは仮想通貨とブロックチェーンについて話すことを嫌う姿勢から来るものではない。むしろその逆だ。17年7月、G20サミットにて、プーチン大統領の仮想通貨技術に対する初めての意見とみなしてよい発言がなされた。

「国際経済の産業的な新秩序への移行はデジタル技術の発展に支えられている。わが国はこの領域における国際的な規制を形づくる上で、G20が指導的役割を担うかもしれないと考えている」

 そのような発言は「産業的な新秩序」を作り上げる可能性を高める形で仮想通貨を規制したいというロシア側の願望を示唆していた。一方、プーチン大統領やロシア政府によるその他の発言は状況をややこしくするばかりだ。イーゴリ・シュワロフ副首相は17年8月、国営仮想通貨「クリプトルーブル」の導入計画について詳しく説明した。これがロシア国内で合法的に取引できる唯一のデジタル通貨になる予定だった。彼はロシアのニュースネットワークに「私は生まれつつあるクリプトルーブルの支持者だ」とのべ、次のように語った。「私たちはもはや仮想通貨を厳重に保管することができない。事態は進展し続けるだろう。(中略)しかし、それは国内経済に損害を与えるのではなく、むしろ強化する形で進展すべきだ 」

 続いて、ロシアがビットコインやその他の仮想通貨を合法化する規制の枠組みを導入する予定であると報じられた。ロシアのアントン・シルアノフ財務相は9月、モスクワ金融フォーラムで次のようにのべた。「政府は仮想通貨の重要性をはっきりと理解している。それらを禁止することに意味はなく、規制する必要がある」これは非常に楽観的な材料となっているものの、プーチン大統領自身が10月、ビットコインと仮想通貨の非合法化を求めたことでこの発言が否定された。大統領は、「犯罪活動、脱税、さらにはテロ資金供与の資金を洗浄する機会に加えて、詐欺計画のまん延」をもたらす危険性のため、禁止が必要だとのべた。

 この発言は同月後半、大統領が前評判の非常に高いクリプトルーブルの計画を正式に承認した際に強化されたものの、その後(さらにもう一度)、12月の会合で今後これらの計画を実現すべきかについて、アレクセイ・モӝ