2021年初、仮想通貨ビットコインが高値を更新し続けている。背景にあるのが新型コロナウイルスによって引き起こされた世界的な経済危機だ。経済対策で各国政府が紙幣を大量に刷り、実質ゼロ金利がニューノーマルになる中、人々は金融・財政の健全性について疑念を強め代替資産である暗号通貨(仮想通貨)へと向かった。特にビットコインはインフレに対するヘッジとしての地位を確立しつつあるといえよう。
またビットコインの根底にあるブロックチェーンや暗号化技術の応用に対する注目も再び集まっている。ネット社会におけるプライバシーの問題を解決する可能性があるからだ。IT大手や国家がユーザーのデータをより緻密に把握することに対する恐怖感も相まってブロックチェーン技術はより進化していくだろう。
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混沌とする世界情勢を背景に、仮想通貨・ビットコインは2021年、どう動いていくのだろうか。コインテレグラフでは仮想通貨・ビットコインの技術や相場に詳しい専門家に、2021年の注目ポイントについて話を聞いた。
2021年の仮想通貨・ブロックチェーン分野の注目ポイントはこれだ

米Hyperledgerエクゼクティブディレクター ブライアン・ベーレンドルフ氏
ビットコイン相場におけるボラティリティが引き続き続く。一方でブロックチェーン、分散型台帳、スマートコントラクトの利用は引き続き拡大するだろう。厳しい経済情勢が続く中、ブロックチェーンの社会実装に向けた実証実験は減るかもしれないが、逆に企業はマーケットシェア争いではなくより他企業との協力関係づくりに動くと見ている。(食品業界における)「フードトラスト」がよい例だ。
もしあなたの業界がビジネスプロセスの中核に分散型台帳ネットワークを導入していない場合、2021年末までには導入することになるだろう。その際使用されるのはガバナンス(統治手法)が最もオープンで、最も参加しやすいネットワークを持つブロックチェーンコンソーシアムとなるだろう。

米財務省 通貨管理局 通貨管理官代理 ブライアン・ブルックス氏
仮想通貨は銀行のあり方に大きな影響を与えるだろう。(インターネットと図書館の関係のように)。
1995年以前にも10年間の歴史があったインターネットが、プログラマーだけでなく誰もがアクセスできるようになって初めて普及したように、2021年には仮想通貨も同様の移行が始まると予想している。今後は、シリコンバレーで働いているような人だけでなく誰もが利用できるツールとしての仮想通貨が広まる臨界点に近づいていると考えている。
ただ仮想通貨が今後一般的に受け入れられていくかどうかは保証されてはいない。仮想通貨の開発者、取引所運営社等はマネーロンダリング防止のコンプライアンス、不正行為の検出と防止、さらには仮想通貨産業が一定の規模に成長する前に終わらせなければならない多くのことに焦点をあてる必要がある。

(カルダノ開発にかかわったとされる)仮想通貨技術企業IOHK チャールズ・ホスキンソン氏
(ブロックチェーン技術を)広く普及させるためには、業界全体が協力して仕事をする必要がある。テクノロジービジネスでは「たこつぼ」の中で仕事をすることはなく、仮想通貨の分野でも同じことだ。ある1つのプラットフォームが「勝たなければならない」という態度を取り続けると、自分の足を撃つ危険性がある。2021年はこの点で正念場だ。優先順位をユーザーのための企業連携におくことができれば、ブロックチェーンを使ったソリューションは普及していくだろう。
また2021年には発展途上国において前例のない規模でブロックチェーンが採用されることになるかもしれない。ブロックチェーンは既存のインフラを必要とせずに全人口に対応できるように拡張できるからだ。またブロックチェーン技術がようやく成熟してきたことも背景にある。

仮想通貨NEOの創始者 ダー・ホンフェイ氏
2021年はブロックチェーンが主流になっていく年になる。2020年、ビットコインは機関投資家にその価値を証明し、分散型金融はブロックチェーンの変革力を見せつけた。また新型コロナがグローバル社会のさまざまな亀裂を明らかにする中、より多くのブロックチェーンを活用したソリューションを展開することが急務であることが示された。2021年に向けてこうしたトレンドが減速することはない。

分散型ブラウザBraveの元プロダクト責任者、Lean Outの元編集者エリッサ・シェビンスキー氏
資金力のあるプレイヤーが着実に仮想通貨事業のコマをすすめていくだろう。資金的な観点から、独立系の事業体より大企業による動きのほうが活発となるだろう。もちろんビットコインはニュースになり続ける。
世界的に政府や各国財政政策への不信感が高まっている。米財務省でさえサイバー攻撃によってハッカーに侵入されているのだ。そんな中米ドルで資産をもっていることが賢明だろうか。これらのことを考えると仮想通貨に強気にならざるを得ない。

米コーネル大学コンピューターサイエンス准教授、IC3共同ディレクター エミン・ガン・シラー(Emin Gün Sirer)氏
2021 年には分散型金融分野において、異なったブロックチェーンを跨る(クロスチェーンの)エコシステムがより広がるだろう。例えばユーザーは利回りを追って複数のチェーン上の同じデジタル資産を買う。またブロックチェーンネットワークがより効率化(例えば秒速以下のファイナリティとより安い手数料)して新たな実用例も立ち上がってくるはずだ。
また(コンセンサス形成に参加しているフルノードの数で測る)本質的な分散化と「オンチェーン・ガバナンス」が最大の関心事項となる。ユーザーは現状多くのブロックチェーンが中央集権型であり、それにはリスクが伴うことに気づきはじめているからだ。
最後に機関投資家や企業は単に投資として仮想通貨を購入するだけではなく、データやコンプライアンスの要件に合わせてカスタマイズできるプラットフォーム上に実際のアプリケーションやインフラストラクチャを構築するために動き始めるはずだ。

米商品先物取引委員会 委員長兼最高経営責任者 ヒース・ターバート氏
あらゆる市場がデジタル化していくというのがマクロ的なトレンドだ。そしてデジタル資産もその一部だ。デジタル資産とその基盤となるテクノロジーは、従来の境界線を押し広げている。保守的な予測となるがデジタル資産は今後も活発な分野であり続けるだろう。
デジタル資産、特にその基盤となるブロックチェーン技術は、経済とグローバル市場全体にとって大きな可能性を秘めている。この分野でのイノベーションは今後も盛り上がらなくてはならない。金融サービス業界は様変わりしている。孫の世代にはまた変わっているだろう。市場は常に進化し続けなければならないのだ。
デジタル資産市場とその技術には地理的な境界がないことを身をもって実感してきた。規制当局は変化し続けるこの業界に対して、原則に基づいた協調的に取り組むことが重要だ。

仮想通貨マイニング機器メーカー最大手ビットメイン アメリカ地区セールスディレクター アイリーン・ガオ氏
現在進行中の(ビットコイン)強気相場は2017年とは異なる。原動力となるのが個人投資家による投機ではなく金融市場への統合というテーマに変化した。2021年には金融機関や規制当局からの関心が引き続き高まるだろう。
(ビットコイン)マイニングの分野においては、新型コロナで遅れていたマイニング施設の展開が米国で再開される可能性が高い。ビットメインでは顧客からのニーズにあわせマレーシア拠点をより効率化した。マイニング施設を拡大したいというニーズに応えるために顧客との連携を強めているところだ。

英仮想通貨投資顧問企業コインシェアーズCEO ジーンマリー・モグネッティ
2020年のビットコイン相場は2013年と2017年と同様のパターンだった。現状の値動きと取引量を分析すると、ビットコイン相場には一種の強い動的エネルギーがあることを示している。この傾向が続くとすれば2021年ビットコイン価格は急速に値上がりしていく可能性がある。
注目すべきはコインシェアーズのETPやグレイスケールのビットコイン・トラスト等ビットコイン投資ファンドが日々採掘可能なビットコインを上回る数のビットコインを取得し続けるものが出てくることだ。よって2021年には2017年または2013年の上昇トレンドが繰り返されると考えている。今回違うのは熱狂の中で上がっていくわけではないという点だ。

ビットコイン開発に携わった開発者でプログラミングブロックチェーン講師 ジミー・ソング氏
2021年は巨大なビットコイン強気相場となる。機関投資家の参入も増える。ただこれまでと同じで、ブロックチェーン分野は目立った動きはないだろう。また投資家はビットコイン以外のものは詐欺だということを知ることになる。

仮想通貨イーサリアム共同創業者・米コンセンシス創業者 ジョセフ・ルービン氏
2021年には「分散型金融」の使い勝手が向上し一般の人にも広がっていくだろう。 次世代インターネット(Web 3.0)の分野においては、分散型ストレージ、分散型帯域幅、分散型価値がより統合されていくと予想する。例えばコンセンシスでは既にファイルコインとイーサリアムを繋ぐブリッジ(橋)を開発している。また分散型ストレージであるIPFSを使ったInfuraというサービスは昨年300TB(テラバイト)分のデータを転送するほど成長した。Web 3.0にはよりオープンなコンテンツ作成を可能にするポテンシャルがある。
またコンセンシスではイーサリアムのスケーリング(規模化)にも引き続き協力していく。イーサ1とイーサ2の統合は2021年に実施となる可能性がある。それにより、より柔軟で拡張しやすい決済レイヤーが誕生することを期待している。
思い起こすと1990年代初頭にはインターネットで合法的に何かを買うことはできなかった。ところが今ではネットで株も買える時代だ。金融サービスの流通が変わる。これはブロックチェーンがもたらす大きな革新で、2021年にこの流れは続くだろう。本当の意味での21世紀が2021年にスタートしたと見ている。

Hedera Hashgraph及びSwirlds Inc.共同創業者兼CEO マンス・ハーモン氏
2021年には分散型金融、トークン化、ビジネスロジックのレイヤー2への移行という3つのトレンドが交錯することで、パブリック・ブロックチェーンを企業が採用する道が開かれる。プライベート・ブロックチェーン導入の試みから得た厳しい教訓と相まって、企業はパブリックな分散型台帳ネットワークにより接近していくだろう。
今日デジタル通貨(トークン)は新興企業が資本を調達するための手段としてだけでなく、広いサプライチェーン全体における経済活動に使われるように設計されつつある。デジタル通貨やステーブルコインそして分散型金融は、金融をより迅速かつ低コストにする。融資や保険の分野にも広がっていくのではないか。
これまでパブリックブロックチェーンの活用に及び腰だった企業の姿勢も変わってくる。レイヤー2ネットワークでビジネスロジックを実行させ、コンセンサスと仲裁にレイヤー1を使用することができることに気付きつつあるからだ。このアプローチはパブリック・ネットワークの利点(分散型信頼)とプライベート・ネットワークの利点(低コスト、スケーラビリティ、プライバシー、規制遵守)を組み合わせたものだ。これらのトレンドが交差することで企業が日常的な業務で分散型台帳を使用するための基盤が整っていく。2021年には企業によるブロックチェーンの採用が加速するだろう。

(IoTに強いブロックチェーンを展開する)IOTA財団のモビリティ・自動車部門長 マシュー・ヤージャー氏
2021年はブロックチェーンが社会実装されていく転換期となる。特に医療、エネルギー、モビリティ、サプライチェーン分野でより安全なブロックチェーン・アーキテクチャの検証が行われていくだろう。
技術的には(閉鎖された)パーミッションド・ブロックチェーンと(開かれた)パーミッションレス・ブロックチェーンの相互運用性等が高まりビジネスに使われるだろう。IoT(インターネット・オブ・シングス、モノのインターネット)に特化したブロックチェーンとクラウド上のブロックチェーンが繋がっていく。

機関投資家向け仮想通貨カストディ企業 米BitGoのCEO マイク・ベルシュ氏
2021年はビットコインのテーゼである「資産の希少性が長期的な価値に最も重要である」ということを機関投資家が受け入れる年になる。新型コロナの世界的なまん延、機関投資家によるビットコイン市場参入、ビットコインの強い値動き等が多くの投資家を引き寄せるだろう。
マネーの未来は「国境を越えてビジネスを行うための透明性とコスト効率」と「いかに人々が経済的な安定と自由をかなえることを助けられるか」にかかっている。これらを実現させるために2021年も成長を加速させようと思っている。

アーンスト・アンド・ヤング ブロックチェーン技術主幹兼グローバルイノベーションリーダー ポール・ブロディ氏
2021年には企業がイーサリアムを採用し始める。一部の企業はプライバシー対応の分散型金融を試すだろう。また分散型金融のセキュリティや監査機能は急速に成熟していく。
金融以外の産業分野でも分散型アプリが広がる。その際、分散型アプリDAppsからZApps(ゼロ知識証明技術を活用し個人情報保護を強化したアプリ)の時代になっていく。
ステーブルコインに関する初の規制フレームワークも出てくるだろう。

Bitcoin.com代表 ロジャー・バー氏
ビットコインはほとんどの年で前年よりよい動きをしてきた。これは2021年も変わらないだろう。

米ブロックストリーム社 チーフストラテジーオフィサー サムソン・モウ氏
2021年にはより多くの機関投資家がビットコイン市場に参入し、価格は信じられないほど上がるだろう。だがこの波にのって儲けようとする詐欺師も増え「草コイン」も大量に増えるだろう。

ブロックチェーンID管理システムのCivic社CEO ヴィニー・リンガム
2021年は分散型ストレージ、分散型金融、「非政治的な(集権的に運営されていない)デジタル通貨」が飛躍する年になる。値動き的にはビットコイン、イーサリアム、ファイルコインのパフォーマンスが一番大きいだろう。ただしイーサリアムは今年スケーリング問題は解決しないと2022年以降うまくいくとは限らない。
<終>
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