2017年は仮想通貨とブロックチェーンの年だったといっても過言ではないだろう。
きっかけとなったのは世間の注目を浴びたビットコインの値動きだ。年初の950ドルから2万ドルまで急激な価格上昇を遂げた。
ビットコインに連れるように仮想通貨市場全体の時価総額も膨れ上がり、12月中には6000億ドル(約68兆円)をつけた。
また、仮想通貨(トークン)発行を通して資金調達を行うICOも急激な成長を見せた。16年に1~2件/週だったのが、17年には週に数十件のICOが実施されるまでに至った。
コインテレグラフでは年末年始の特集シリーズとして17年の振り返りと18年の展望を行う。
今回はこの驚くべき1年に他社と比べてよい成績を上げた会社を振り返ってみたい。
Ethereum(イーサリアム)
時価総額:約8兆円
ご存知の通り、イーサリアムはスマートコントラクトを動かす非中央集権型のプラットフォームだ。スマートコントラクトとは、人的介在なしにブロックチェーン上のコードを通して自動的に契約を執行する仕組みだ。
若きヴィタリック・ブテリンと元アマゾンのヴァイスプレジデントだったジェフリー・ウィルクが2015年7月に立ち上げた。
17年にはICOの4分の3がイーサリアム上で実施されるほど一番人気の資金調達プラットフォームになっている。
約1300万人が同プラットフォームを使っており、そのトークンであるETH(イーサ)も現在ビットコインとリップルに次ぐ時価総額を誇っている。
Vitalik Buterin
Jeffrey Wilcke
ちなみに共同創始者である「神童」ヴィタリック・ブテリンは、ブルームバーグによって2017年「最も影響力を持つ50人」に選出されている。
IOTA(アイオタ)
時価総額: 約1兆円
IOTAはオープンソースの分散台帳でIoTに特化している。「タングル」という技術を使っており従来のブロックチェーンにあるブロックやマイナーという概念がない。そのため主要仮想通貨と異なり取引手数料がなく、高速で大量の取引を処理できる。新たな取引をするためには、先行する二つの取引を承認しなくてはならない仕組みだ。
IOTAは16年7月に起業家のデイビッド・サンステバ氏とドミニク・シャイナー氏によって立ち上げられた。(コインテレグラフによるインタビューはこちら)
17年11月には米会計事務所大手PwC、マイクロソフト、ドイツテレコム、富士通などと連携しIoT上のデータをやり取りするプラットフォームもリリースした。
また今年独大手自動車部品メーカーのボッシュからの大型投資もうけている。
David Sønstebø
Dominik Schiener
17年11月までで、IOTAプラットフォームは6万5000人のユーザーに使用されているという。
Coinbase(コインベース)
時価総額: 約2200億円(GDAX)
コインベースは仮想通貨のウォレットと交換プラットフォームとして最大手だ。ビットコインキャッシュを扱うという発表をしただけで、同通貨の価格を大幅に押し上げた。また、コインベースはニューヨーク州金融サービス局から認可を受ける3つのブロックチェーン関連プロジェクトのうちの一つで、16年にはGDAX(グローバルデジタルアセットエクスチェンジ)という名称のもと統合された。
コインベースは米国で初めて認可された仮想通貨取引所で米証券取引委員会に監督をうけており、正統な仮想通貨取引所といえる。
民泊仲介サイトのAirbnbやデロイト、IBM等でのキャリアを有するブライアン・アームストロング氏と元ゴールドマンサックス出身のフレッド・アーサム氏によって2011年7月に立ち上げられた。
Brian Armstrong
Fred Ehrsam
現在GDAXは1330万人のユーザーに使用されている。
Ripple(リップル)
時価総額: 約9兆円
リップルはリアルタイム決済及び両替システムで、送金を主眼とする。2012年に立ち上げられたリップルは銀行間のリアルタイム決済に応用されている。
現在リップルは世界中の75以上の銀行と連携し決済システムを開発している。17年12月には日本と韓国の銀行もこれを利用して銀行間の決済コストを下げようとする試みがはじまっている。
リップルは2012年10月に元ヤフー!幹部のブラッド・ガーリングハウス氏と起業家ステファン・トーマス氏によって創業された。
Brad Garlinghouse
Stefan Thomas
Brave(ブレイブ)
時価総額: 約380億円
ブレイブは広告をブロックするウェブブラウザだ。ブレイブを使うとサイト読み込みが格段に速くなるという。間違えて広告をクリックした際にダウンロードされる恐れのあるマルウェア対策も備えている。
ジャバスクリプト言語を作った張本人でモジラの共同創始者でもあるブレンダン・アイク氏とC++プログラマーのブライアン・ボンディー氏によって17年5月に立ち上げられた。
Brendan Eich
Brian R. Bondy
ブレイブは200~300万人に使われていると推測される。27秒で約40億円を調達した最も高速なICOとしても話題になった。
Qtum(クオンタム)
時価総額: 約5000億円
QtumはUTXO(未使用のトランザクションアウトプット)を基盤としたスマートコントラクトのシステムで、プルーフオブステイク(PoS)を採用している。また、「アカウント・アトラクション・レイヤー」を使用してビットコイン・コアとイーサリアム・バーチャル・マシーンを統合させている。また、プルーフオブステイク方式はネットワークをスケールさせる余地を大幅に広げている。
17年12月28日には、Qtumは中国最大のビデオホスティングサービスである暴風(バオフォン)との提携を発表し、音楽と映像業界を変えようとしている。
パトリック・ダイ、BitSE出身のニール・マヒ、ジョルダン・アールスによって17年3月に立ち上げられた。
Patrick Dai
Jordan Earls
2017年、フォーブス中国版はパトリック・ダイを「30歳以下で注目すべき30人」に選出している。
OmiseGO(オミーゼゴー/オミセゴー)
時価総額: 約1800億円
2017年6月に長谷川潤とドニー・ハリンサットによって立ち上げられた非中央集権型の決済プラットフォームだ。創業者たちはトークンの流動性を高く保つためのメカニズムを開発した。イーサリアムを基盤としており、決済システム、ゲートウェイ、金融機関をつないでいる。創業者自身はまだあまり知られていないかもしれないが、そのアドバイザーにはヴィタリック・ブテリン、ガヴィン・ウッド、ジョセフ・プーン、ロジャー・バーなど有名な開発者達が名を連ねる。タイ財務省にも支援をうけている。
Jun Hasewaga
Donnie Harinsut
17年8月にはイーサリアムを基盤とするトークンとして初めて10億ドル(約1100億円)の時価総額を突破した。
Steem(スティーム)
時価総額: 約800億円
スティームは非中央集権型のソーシャル・パブリッシング・ネットワークで、投稿への「いいね」の数で著者への報酬が決まる仕組みだ。また、Steem上で新たなトークンを発行して資金調達をすることもできる。
Ned Scott
Dan Larimer
ネッド・スコットとダン・ラリマーによって2016年7月に立ち上げられた。
現在では50万人に使用されているという。
Augur(オーガー)
時価総額: 約1000億円
オーガーは現実のイベントを対象とした予測市場だ。何かが起こると確信したらその予測に対して賭けることができる。イーサリアムを基盤としているため、スマートコントラクトを通して支払いが行われる。そしてブロックチェーン上で予測内容が記録されるため、事後の予測改変はできない仕組みだ。
Jack Peterson
Joey Krug
ジャック・ピーターソンと著名ファンドであるパンテラキャピタル在籍のジョーイー・クルッグによって2015年8月に創設された。
Golem(ゴーレム)
時価総額: 約500億円
ゴーレムは初のオープンソースの非中央集権型スーパーコンピューターで、同ネットワークは参加するユーザーのコンピューターの力を借りて作動している。生物学、DNA解析、暗号学、離散対数、機械学習、ビッグデータ等、大きな計算力が必要な領域に活用される。
Julian Zawistowski
Piotr Janiuk
2016年11月にジュリアン・ザウィストウスキとピオートル・ジャニウクによって立ち上げられた。
使用ユーザー数は今年400万人に達したという。