国際商工会議所(ICC)は22日、ブロックチェーン技術を使い、グローバルな貿易や商取引のデジタル化を加速させる構想を発表した

ICCやシンガポール政府、大手金融機関などが協定に署名。日本の大手金融機関や商社なども複数参加している。

マスターカードやスタンダードチャータード銀行などのほか、日本からは丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事といった大手商社、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行といったメガバンク、損保ジャパン日本興亜、東京海上、NTTデータが参加している。

紙ベースのプロセスをデジタル化

この新しい取り組みは、シンガポールに拠点を置くブロックチェーン企業パーリン(Parlin)が構築するデジタル取引プラットフォーム「トレードトラスト(Trade Trust)」を使用するICCトレードフロー・アライアンスの一部だ。

このイニシアティブは、貿易取引を紙ベースのシステムからデジタルに転換させることが狙いだ。これにより時間や運用コストが削減され、人為的ミスや偽造といった問題発生も削減される。
参加する企業は、分散型台帳技術を自社の事業に統合することが可能となる。

スタンダードチャータード銀行は「デジタルソリューションを活用し、より速く、より安全で、より効率的かつ透明な貿易取引を可能にする大きなチャンスがあると考えている」と述べている。

またシンガポールのDBS銀行は、次のようにコメントしている。

「真正性を確立することは、ビジネスプロセス、貿易および貿易金融の中でも最も厄介なものであり、物理的な紙の束から移行する必要がある。デジタル技術、特に分散型台帳技術は、これを解決するのに適しているが、これには世界規模での主要プレイヤー間の調整が必要だ」

ブロックチェーンでデジタル文書を管理

ブロックチェーン企業パーリンは、ICCトレードフローがシンガポール政府のトレードトラストのネットワークの上に構築されると、コインテレグラフに語った。

これはパブリックブロックチェーン上で取引文書をやり取りするための様々な取引プラットフォーム・フォーマット間の相互運用性を可能にする多国間のオープンな技術的フレームワークだという。

シンガポール政府は、デジタル化推進を推進する情報通信メディア開発庁(IMDA)やエンタープライズ・シンガポール(シンガポール企業庁)を通じ、プラットフォームの促進・適用を進める。またシンガポールでの取引に基づく専用の試験を行うという。

ICCトレードフローは現在、45日間かかっていたプロセスを20日間に短縮することができている。パーリンはこれを24時間以下にまで短縮することを目指す。

さらにICCトレードフローにより、取引パートナーは信用状や船荷証券などをデジタル化し、交換・検証・認証することが可能になるという。

国際貿易で新しい投資機会創出

パーリンは将来的に、より多くの中小企業もネットワークに参加できるようにしたいとしている。また資産がブロックチェーン上でデジタル化されることで、新しい投資機会を創出させることになると主張している。

「これは、新しいオルタナティブな貿易金融を可能にし、複雑で時間のかかる紙ベースのフレームによって現在締め出されている投資家が投資に参加できるようになり、デジタル化された物理的資産を取引できるようになる(政府系ファンドや、年金基金やファミリーオフィスなどだ)。全く新しい金融デリバティブが、貿易と貿易金融の世界で可能になる」

「これは、ブロックチェーンによって、国際経済をより効果的、包括的かつ持続可能なものにするというビジョンの一部だ」と、パーリンは強調している。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン