米証券取引委員会(SEC)のヘスター・ピアース委員は、8日に行われたスピーチの中で、仮想通貨規制について、起業家精神とイノベーションを損なうことなく進めることが重要であると語った。また仮想通貨への拙速な規制適用よりも、仮想通貨業界による自主的な取り組みの重要性を指摘した。

ピアース委員は、昨年7月にウィンクルボス兄弟が申請していたビットコインETF(上場投資信託)を拒否した際、この決定に異を唱える声明を発表した。このことから仮想通貨コミュニティの中では「クリプトママ」の愛称で呼ばれている。

ピアース氏は、新しい業界への規制整備のプロセスには時間が掛かる可能性を指摘しつつ、現行の法制度を毀損することなく、仮想通貨・ブロックチェーン業界を発展させるため、SECが適切に行動しなければならないと強調した。

我々が適切に行動すれば、この新しいフロンティアでのイノベーションを発展させることができる。証券法の目的、つまり投資家の保護、資本形成の促進、公正で秩序ある効率的な市場の確保などを損なうことなく」

ピアース氏は、仮想通貨に関する明確な法的枠組みの整備で遅れが生じていることについて触れ、曖昧さが存在することは悪いことばかりではないとも指摘した。

「ブロックチェーンのプロジェクトがより成熟するにつれ、我々はより明確な線を引くことができるようになるかもしれない。明確な線を引くことが遅れることは、技術がより自由になることにつながるかもしれない」

ピアース氏はICOに求められている情報開示を例に挙げる。ICO市場の熱狂が覚めた後であれば、各ICOプロジェクト自身が投資家の資金を集めるため、自主的に開示を進めていくだろうとピアース氏は語る。また証券取引法が施行される前に証券取引所が行っていたように、仮想通貨取引所がICOプロジェクトに開示を要請するようになる可能性もあると指摘する。

またピアース氏は、過剰な規制について懸念も表明した。米国での証券か否かの判断基準となる「ハウィーテスト」について、「トークンオファリングは、従来の証券発行と完全に一致するわけではない」と指摘し、ハウィーテストをICOに適用する際には「注意深く行う必要がある」と語った。

スピーチの中では、昨年12月に共和党のウォーレン・デービッドソン議員と民主党のダーレン・ソト議員が提出したデジタル資産を米証券法の対象外とする法案についても言及。ピアース氏はそのような取り組みが規制の曖昧さを解決する可能性があると語った。