老後2000万円問題をきっかけに、若い世代でも貯金や投資に取り組む人が増えている。しかし、20代・30代は結婚・出産といったライフイベントがあり、子育てや住宅取得にもまとまったお金がかかる。手取りのうち、貯金(預金)や投資に回す割合はどれくらいが最適だろうか。支出の目安、投資の割合の決め方を解説する。

手取りのうち貯金と投資に回す割合の目安

手取り収入のうち、支出はどれくらいまで許容でき、貯金や投資にはどれくらい回せばよいのだろうか。支出と貯蓄(預金・貯金・投資)に回す比率を決める判断材料として、金融広報中央委員会の調査結果を確認してみよう。

家計の金融行動に関する世論調査(2020年)」によると、手取り収入に対する貯蓄の割合は以下の通りだ。

【年代・世帯別】年間手取り収入から貯金や投資に回す割合

20代と30代の年間手取り収入(臨時収入を含む)に占める貯蓄(預金・貯金・投資)の割合は以下の通りだ。

 

貯蓄に回す割合 20代(2人以上世帯) 20代(単身世帯) 30代(2人以上世帯) 30代(単身世帯)
5%未満 4.8% 7.1% 7.5% 7.9%
5~10%未満 19.0% 12.3% 11.8% 12.6%
10~15%未満 28.6% 14.4% 29.7% 17.2%
15~20%未満 4.8% 3.3% 10.4% 4.6%
20~25%未満 23.8% 10.4% 12.7% 10.9%
25~30%未満 0.0% 3.5% 2.8% 1.3%
30~35%未満 0.0% 9.5% 5.2% 8.6%
35%以上 4.8% 17.2% 4.2% 14.2%
貯蓄しなかった 4.8% 22.3% 9.0% 22.5%
無回答 9.5% 0.0% 6.6% 0.0%
平均貯蓄割合 13% 18% 13% 16%

平均貯蓄割合よりも注目したいのは最頻値だ。

世帯主が20代の2人以上世帯では、手取り収入のうち「10〜15%未満」を貯蓄(預金・貯金・投資)に回す家庭の割合が最も多く、28.6%だった。

20代の単身世帯は「貯蓄しなかった」人の割合が22.3%と最も多いが、貯蓄している20代の単身者の中では、手取りのうち「35%未満」を投資に回す人の割合が最も多く、17.2%だった。

世帯主が30代の2人以上世帯では、手取り収入のうち「10〜15%未満」を貯蓄(預金・貯金・投資)に回す家庭の割合が最も多く、29.7%だった。

30代の単身世帯は「貯蓄しなかった」人の割合が22.5%と最も多いが、貯蓄している30代単身者の中では、手取りのうち「10~15%未満」を投資に回す人の割合が最も多く、17.2%だった。

逆の言い方をすれば、手取り収入のうち、支出が許容されている割合は、20代・30代ではおおよそ7〜9割ということだ。

2人以上世帯は子育てや住宅取得などでお金がかかるため、計画的に貯金をしようとしている世帯が多いと考えられる。単身世帯は貯蓄しなかった人が多い一方で、手取りの3割以上を貯蓄に回す人が少なくない。

 

【年収別】年間手取り収入から貯金や投資に回す割合

次に、年収別に手取りから貯蓄(預金・貯金・投資)に回す割合を見ていこう。

2人以上の世帯が、手取りから貯蓄に回す割合を年収別にみると以下の通りだ。

2人以上世帯の年収 貯蓄しなかった 貯蓄に回す割合平均
収入はない

84.6%

0%

300万円未満

51.4%

4%

300~500万円未満

35.9%

7%

500~750万円未満

19.9%

10%

750~1000万円未満

13.5%

14%

1000~1200万円未満

12.5%

16%

1200万円以上

5.7%

20%

 

単身世帯が、手取りから貯蓄に回す割合を年収別にみると以下の通りだ。

単身世帯の年収 貯蓄しなかった 貯蓄に回す割合平均
収入はない

79.7%

5%

300万円未満

44.3%

10%

300~500万円未満

21.5%

16%

500~750万円未満

14%

19%

750~1000万円未満

17.9%

22%

1000~1200万円未満

20%

36%

1200万円以上

33.3%

18%

以上で、年間手取り収入に占める貯蓄(預金・貯金・投資)の割合を、世帯・年代・年収別に確認した。自分の属性と照らし合わせて、貯金や投資に回す金額の参考にしてほしい。

支出と貯蓄の割合を決めよう

 

貯金と投資の割合の決め方3つ

手取りのうち、支出の目安と貯蓄に振り分ける目安がわかった。それでは、貯蓄のうち、貯金と投資の割合は、どのように決めたら良いのだろうか。

貯金と投資の割合に正解はない。人によって年齢や家族構成、リスク許容度は異なるため、自分に合った貯蓄と投資の割合を見極める必要がある。しかし、初心者が自分で割合を決めるのは難しいだろう。

ここでは、貯金と投資の割合を決める方法を3つ紹介する。

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①リスク許容度を考慮する

リスク許容度とは、投資元本の損失に耐えられる度合いのことだ。人によってリスク許容度は異なる。性格や投資スタンス、家族構成などから自分のリスク許容度を検討し、貯金と投資の割合を決める。

100万円が手元にある時に、「60万円は絶対に確保しておきたい」と思うなら、60万円を貯金に、残り40万円を投資に回すといった具合だ。

株式の場合、過去には日経平均株価が一時的に3〜5割程度下落する場面もあった。100万円投資すると、時価が70〜50万円に減ってしまうイメージだ。株価暴落に見舞われても損失に耐えられるように、貯金と投資の割合を検討しよう。

どんな金融商品に投資するかによってもリスク許容度は変わってくる。

国内外の株式に分散投資をする投資信託であれば、一時的に基準価額が下がることはあっても、価値がゼロになるリスクは低いだろう。しかし、個別株投資は投資先企業の倒産で価値がゼロになる可能性がある。FXや仮想通貨は値動きが激しく、相対的にリスクは高まる。

リスク許容度を検討する際は、家族構成も重要なポイントだ。

単身者で住宅ローンがない状態であれば、リスクをとって投資割合を増やすのも選択肢といえる。一方で、子育て中でマイホームを購入している場合は、教育資金や住宅ローン返済資金を確保するために貯金の割合を高めてもいいだろう。

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②年齢で決める

現在の年齢から貯金と投資の割合を決める方法だ。「100-年齢」を株式などのリスク資産への投資割合とする考え方で、年代によって割合は以下のようになる。

  投資 貯金
20代 80% 20%
30代 70% 30%
40代 60% 40%
50代 50% 50%
60代 40% 60%
70代 30% 70%
80代 20% 80%

「100-年齢」は、株式と債券の割合を決めるのによく使われるが、債券と貯金は、ともにリスクが低い資産であるため、同じ括りにして考えても特に問題ない。

一般的には、年齢が高くなるにつれて許容できるリスクは小さくなっていく。若いうちは働ける期間が長いので、投資で損失が生じても勤労収入でカバーできる。しかし、高齢になると働ける期間は短くなり、老後資金を確保する必要もある。

年齢とともに投資比率を下げていけば、リスクをコントロールしながら投資を続けられるだろう。

 

③貯金と投資の割合を1:1にする

年齢やリスク許容度から決めるのが難しい場合は、貯金と投資の割合を1:1にする方法もある。収入から毎月4万円貯められるなら、「貯金と投資に2万円ずつ回す」といった具合だ。

貯金と投資の割合を1:1にすれば、株価が上昇すればリターンを得られるし、下落しても損失を抑えられる。また、投資はインフレに、貯金はデフレに強いといわれる。貯金と投資を半分ずつにすれば、インフレとデフレのどちらにも対応できるだろう。

 

貯金と投資の割合を決める際の注意点

病気やケガ、リストラなどで働けなくなっても生活できるように、生活防衛資金として最低でも生活費3カ月分程度の現金を準備しておこう。生活費6カ月〜1年分の貯金を用意できるとより安心だ。

投資を始めるのは、生活防衛資金が準備できてからでも遅くはない。まずは貯金に取り組み、まとまったお金ができた段階で投資を検討するといいだろう。

 

貯金と投資の割合は、リスク許容度や家族構成を考慮しよう

「手取りのうち貯金と投資(貯蓄)に回す割合」と「貯金と投資の割合」に正解は存在しない。年齢やリスク許容度、家族構成などから自分に合った比率・割合を見極めることが大切だ。

しかし、あえて提案すれば、これから積極的に運用して資産形成をしようとしている20代・30代は、手取りのうち貯蓄に回す割合は20%を確保し、支出は手取りの80%に抑えておきたい。貯金や投資に20%を回すのが難しい場合は、手取りの10〜15%を目標にしよう。

手取りから生活費を払い、残りを貯金・投資に回すのは難しい。手元にお金があれば使ってしまうからだ。給与が入ったら先に手取りの10〜20%を貯蓄に回し、残ったお金で生活するようにすれば無理なくお金を貯められるだろう。

まずは手取りの20%を目安に先取り貯蓄を始めてみよう。そして、生活防衛資金を確保できたら、無理のない範囲で少しずつ株式などへの投資の割合を増やしていこう。

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