マスターカードは9日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)のテストをしたい中央銀行を対象とした独自ツールをリリースしたと発表した。

国際決済銀行(BIS)の今年1月レポートによると、中央銀行の70%以上が何らかの形でデジタル通貨のアイデアを検討している。ただ実際的なコンセプトや実験に移行したものはまだほとんどないが、マスターカードがリリースしたツールは、デジタル通貨のテストをより簡単にすることを目的としている。

このツールは、中央銀行がCBDCのユースケースを評価できるように、様々なタイプのトランザクション環境をシミュレートする。この仮想テスト環境では、銀行や金融機関、消費者間でのCBDCの発行や配布、交換のシミュレーションを可能にする。

マスターカードは、パートナーとなる中央銀行や技術コンサルタント企業などがこのツールを使用してCBDCの技術設計の有効性や、提案されたユースケース、および既存の決済方法との相互運用性を評価するように求めている。

また発表の中で、マスターカードは、仮想サンドボックスの可能性の1つは「マスターカードが世界中で受け入れられているすべての場所で、消費者がCBDCを使用して商品やサービスの支払を行う方法」を検証することも可能だと述べている。

マスターカードのデジタル資産担当のエクゼクティブ・バイスプレジデントのラジ・ダモハラン氏は、「新しいプラットフォームは、中央銀行が現在および将来の意思決定をサポートするものだ」と述べ、CBDCのイノベーションをマスターカードとして協力していく考えを示している。

マスタ―カードはこれまで、2019年のフェイスブック主導の仮想通貨プロジェクト「リブラ」への参加表明を含め、様々なタイプのブロックチェーン・分散型台帳技術(DLT)領域への関心を示していた。たた、リブラへの参加については、リブラを巡る世界的な逆風があったため、後に参加を撤回することとなった

世界的にCBDCの検討進む

中央銀行デジタル通貨(CBDC)への世界的関心が高まっている。既に中国では、一部の地域でデジタル人民元のテストを開始したとの報道も出ている。中国人民銀行の幹部は、2022年に開催が予定されている北京冬季五輪でデジタル人民元を使えるようにするとの目標を示している

また最近ではブラジルの中央銀行が、CBDCを検討するための研究グループを設立したことを発表した。この研究グループでは、CBDCを導入することのメリットや影響を多角的に分析することを目指している。

日本においても、今年7月に日本銀行の決済機構局内にデジタル通貨グループが新設され、専任者を配置して、デジタル通貨の検討を進めている。

米国のボストン連邦準備銀行も、マサチューセッツ工科大学(MIT)とデジタル通貨に関する共同研究に取り組んでいる

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン