一般NISAとは、2014年1月にスタートした少額投資非課税制度だ。株式や投資信託といった金融商品から発生した利益には、通常約20%の税金がかかる。しかし、一般NISAでは非課税で運用できるため、効率的に資産を増やせる。
ただし、一般NISAにはデメリットもあるので、特徴を理解したうえで利用することが大切だ。今回は、一般NISAの仕組みや運用シミュレーション、注意点について解説する。
一般NISAとは
一般NISAの概要は以下の通りだ。
対象者 |
日本在住の20歳以上の人(口座開設年の1月1日現在) |
非課税対象 |
株式・投資信託などから得られる配当金、分配金、譲渡益 |
口座開設可能数 |
1人1口座 |
非課税投資枠 |
年間120万円まで(5年間で最大600万円) |
非課税期間 |
最長5年間 |
投資可能期間 |
2014年~2023年(2024年から新NISAに衣替え) |
一般NISAのポイントについて詳しく確認していこう。
口座開設の条件
一般NISA口座は、日本に住む20歳以上の人なら誰でも開設できる。20歳以上かどうかは、口座開設する年の1月1日現在の年齢で判断する。開設できるのは1人1口座までだ。
NISAには、一般NISAのほかに「つみたてNISA」もある。一般NISAとつみたてNISAは選択制で、どちらか一方を選ぶ必要がある。
一般NISAの投資対象商品
一般NISAの主な投資対象商品は以下の通りだ。
- 上場株式
- 投資信託
- ETF(上場投資信託)
- J-REIT(不動産投資信託)
一般NISAの対象商品は金融機関によって異なり、外国株式や海外ETFに投資できる証券会社もある。FX(外国為替証拠金取引)や仮想通貨(暗号資産)は、一般NISAの対象外となっている。
年間120万円まで非課税で運用できる(最長5年間)
一般NISAは、年間120万円(5年間で最大600万円)まで非課税で運用できる。投資の利益には税金がかかるが、一般NISA口座で購入した金融商品については利益に課税されない。
たとえば、株式投資で50万円の利益が出た場合、通常は利益に復興特別税含め20.315%課税されるので、実際に受け取れるのは約40万円だ。しかし、一般NISAで運用した利益は非課税となるため、利益50万円がそのまま手元に残る。
通常(特定口座など) | 一般NISA |
|
①利益 |
50万円 | 50万円 |
②税金(20.315%) |
10万1575円 | 課税なし |
手取り額(①-②) |
39万8425万円 | 50万円 |
一般NISAで購入した金融商品で利益が出れば、税金分だけ手元に残る金額が増えるので、効率的に資産を増やせる。
「ロールオーバー」で非課税期間の延長が可能
一般NISAで5年間の非課税期間が終了したときは、以下3つの選択肢がある。
- 売却する
- 課税口座(特定口座、一般口座)に移す
- 翌年の非課税枠に移す(ロールオーバー)
何も手続きを行わなければ、非課税期間が終了したときの時価で課税口座に移管される。また、翌年の非課税枠にロールオーバーをして、非課税期間を延長することも可能だ。ロールオーバーを利用すれば、結果として、最大10年間非課税で運用できる。
ロールオーバー可能な金額に上限はなく、時価が120万円を超えていても、そのすべてを翌年の非課税枠に移せる。
たとえば、一般NISAで年120万円を投資し、5年後に非課税期間が終了したときの時価が180万円の場合、180万円すべてを新たな非課税枠に移すことが可能だ。
2024年から一般NISAが新NISAに衣替えをするため、2024年以降の非課税枠に移す場合は、投資上限額が異なるので注意しよう(詳細は後述する)。
一般NISAの口座開設と投資・売却までの手順
一般NISAの口座開設について
一般NISA口座を開設するには、取扱金融機関(証券会社、銀行)で口座開設手続きを行う必要がある。
金融機関によって、一般NISAで取引できる商品は異なる。また、すべての金融機関を通じて1人1口座しか開設できないので、比較検討した上で金融機関を選択することが大切だ。
金融機関の変更は可能だが、変更しようとする年の9月末までに変更の手続きを完了しなくてはならない。その年に一般NISA口座ですでに金融商品を購入していた場合、変更できるのは翌年の投資分からとなる。
金融商品の購入・売却手順
一般NISAで金融商品の購入・売却を行う手順は、課税口座と大きな違いはない。購入時は、買い注文画面の口座区分で「(一般)NISA」を選択すれば、一般NISA口座で金融商品を購入できる。
積立投資の場合も、口座区分を「NISA」にする以外は通常の設定方法と同じだ。
また、一般NISA口座で購入した金融商品には払い出し制限がないため、いつでも売却できる。売却方法も課税口座とほぼ同じだが、口座区分が「NISA」になっていることを確認しよう。
一般NISAの利用でどれくらい得をするかシミュレーション
一般NISAを利用すると、どれくらい得をするか気になるのではないか。ここでは、一般NISAの運用シミュレーションを2つ紹介する。
国内株式を購入して5年後に売却するケース
まずは、国内株式を120万円で購入して毎年5万円の配当金を受け取り、5年後に180万円で売却するケースについて確認しよう。5年間で得られる利益は以下の通りだ。
配当金 |
25万円(5万円×5年間) |
譲渡益 |
60万円(180万円-120万円) |
利益合計 |
85万円 |
課税口座の場合、利益85万円に対して約20.315%課税されるため、利益から税金が17万2677円差し引かれ、手元に残るのは67万7322円となる。一方、一般NISAは利益に税金がかからないので、利益85万円をそのまま受け取れる。
毎月10万円(年120万円)を積み立てるケース
次は、積立投資のケースについて確認しよう。毎月10万円を積み立てながら5年間運用した場合、投資元本と運用成績は以下のようになる。
運用利回り |
投資元本 | 評価額 | 利益 |
1% |
600万円 | 614万9905円 | 14万9905円 |
3% |
600万円 | 646万4671円 | 46万4671円 |
5% |
600万円 | 680万608円 | 80万608円 |
仮に積み立てた金融商品をすべてを売却するとしよう。
課税口座の場合は利益に課税されてしまうため、利益から約20.315%の税金が差し引かれる。運用利回り5%では5年間で80万608円の利益が出ているが、税金が16万2643円かかるので、手元に残るのは63万7964円だ。
しかし、一般NISAなら利益80万608円がそのまま手元に残る。また、売却せずに非課税期間が終了した分を翌年の非課税枠にロールオーバーし、さらに非課税で運用を続けることも可能だ。
一般NISAの注意点
すでに保有している金融商品を一般NISA口座に移せない
特定口座や一般口座などですでに保有している金融商品は、一般NISA口座に移せない。もし移す場合には一度売却する必要がある。また、一般NISA口座で保有している金融商品を、他の金融機関の一般NISA口座に移すこともできないので注意が必要だ。
非課税枠は翌年以降に繰り越しできない
一般NISAでは、その年の非課税枠の未使用分があっても、翌年以降に繰り越しできない。たとえば、1年間に一般NISAで投資した金額が80万円で、その年の非課税枠が40万円余っても、翌年の非課税枠は120万円までとなる。
一般NISAを利用する場合は、その年の非課税枠を使い切れるような投資計画をたてるといいだろう。年120万円を投資するのが難しい場合は、非課税枠が年40万円のつみたてNISAを検討しよう。
再投資・スイッチングは非課税枠が必要
スイッチングとは、投資した商品を入れ替えることだ。一般NISA口座内で配当金や分配金の再投資やスイッチングを行う場合は、新規購入と同じように非課税枠が必要になる。
たとえば、一般NISA口座でA株式を60万円分購入し、同じ年にA株式を売却してB株式を60万円分購入すると、年間120万円の非課税枠を使い切ってしまう。非課税枠を効率よく利用するために、スイッチングは慎重に判断しよう。
課税口座で保有している金融商品との損益通算はできない
一般NISAで生じた損失は、課税口座で保有している金融商品の利益との損益通算はできない。また、損失を最大3年間繰り越せる「譲渡損失の繰越控除」も適用されない。
一般NISAは非課税で運用できるので利益が出れば有利だが、損失が生じると課税口座より不利になる可能性がある。
短期投資(デイトレード)には向かない
一般NISAの非課税メリットを活かすには、投資方法の選択が重要だ。
短期間のうちに何度も売買を繰り返すデイトレードなどの短期投資は、一般NISAには向かない。売買するたびに非課税枠が必要になるため、短期間で非課税枠を使い切ってしまう可能性が高いからだ。
一般NISAには5年間の非課税期間があり、ロールオーバーすれば最長10年間非課税で運用できる。「株式の長期保有」「投資信託の積立投資」など、長期投資で資産を増やす方法を選ぶのがおすすめだ。
一般NISAは2024年から新NISAに衣替え
2020年度税制改正によって、一般NISAは2024年から新NISAへ衣替えのうえ、5年間延長される予定だ。新NISAは2階建ての制度となり、年間の投資上限額は以下のようになる。
- 1階部分:20万円(積立投資のみ)
- 2階部分:102万円(上場株式、投資信託など)
原則として、2階の非課税枠を利用するには1階の積立投資を行う必要がある。ただし、一定の投資経験者が2階で上場株式のみに投資する場合は、1階の積立投資は不要だ。
2019年以降に一般NISAで購入した金融商品は、2024年以降の新NISAにロールオーバーが可能となる。
投資するなら非課税投資枠を賢く使おう
一般NISAは、年120万円まで非課税で運用できるのが最大のメリットだ。利益に税金がかからないので、効率的に資産を増やせる。ただし、損失が生じると損益通算等ができないため不利になる可能性があることや、2024年以降は新NISAへの制度変更が予定されている点には注意しよう。一般NISAの他にも「つみたてNISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」など、税制面で有利に投資できる制度がある。資産運用する際は、これらの制度の利用を検討しよう。
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