米連邦捜査局(FBI)が、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)詐欺の仕組みや手口について説明した。 オランダの金融系ニュースサイトThe Paypersに2月19日に掲載されたインタビュー記事において、FBIがその見解を明らかにしている。このインタビューは、ICO詐欺への注意喚起のため掲載したもので、FBI刑事捜査部の金融犯罪課の協力のもと実現したという。

FBIの金融犯罪セクションの責任者を務めるスティーブ・ディアントノ氏がインタビューに答えている。同氏によれば、ICO詐欺の主な手口には、取締役などICO関係者の経歴詐称、実施するICOが高い注目を集めているという誤った印象操作、非現実的な収益の約束などが含まれるという。

「他の投資商品同様、収益が保証されることは決してない。できすぎた話があれば、それはおそらく詐欺だ」

また投資家に対して、あらゆる計画やその背後にある人物に注意を払うことや、物理的な住所や連絡先の入手が困難・不可能なインターネットベースの企業のみである場合には注意が必要だという。ICOによる提案がどういった法的機関の管轄のもと行われているのか、どのような法律・規制の対象となっているのか知っておくべきとも指摘している。

一般的なユーザーであっても、金融業界の自主規制・監督機構FINRA(Financial Industry Regulatory Authority)による「ブローカーチェック」システムを利用し、企業の身元や登録状況などの情報を確認できることを紹介している

著名な仮想通貨や金融商品でさえ業界の状況次第でボラティリティが高まる可能性があり、リスクが増すことを考えると、失っても構わない分だけを投資するようアドバイスした。

仮想通貨交換所や仮想通貨ATMといった合法的な事業者・プラットフォームに関しては、不正資金洗浄などを取り締まる金融犯罪取締執行ネットワーク(FinCEN)に「マネーサービス業者(MSB)」として正式登録されている必要があると指摘している。

2019年には、セキュリティー・トークン・オファリング(STO)が新たなトレンドとなると見られているが、FBIのディアントノ氏は不正行為の取り締まりの姿勢は変わらないと話す。セキュリティトークンのような資産がますます増加する傾向を考えると、詐欺犯罪の危険性も高まることに警戒する必要があると語った。

「私たちは今後、さらに多くのトークンが発行されるだろうとみている。トークンが多いほど、市場での不正行為のリスクは高まるだろう」

FBI 仮想通貨に目を光らせる

FBIはこれまでも仮想通貨を巡る犯罪行為の取り締まりや監視を行っている。

2018年6月、FBIは、ダークウェブ上での薬物売買など130件の仮想通貨が関連する捜査を行っていると明らかにした。ただし、この130件という数字は「数千件」におよぶFBIの捜査活動の「ごく一部」に過ぎないという。

またスイスの仮想通貨取引所シェイプシフトは、コンプライアンスに関するレポートの中で、2018年に世界60カ国の法執行機関の情報照会に対応したことを明らかにした。FBIからの照会件数が最も多かったとしている。

米国の仮想通貨取引所クラーケンも18年に法執行機関からの情報照会が17年比で3倍に増加した。475件の照会のうち、315件が米国の法執行機関からの問い合わせだった。

SECは偽ICOサイトで注意喚起

昨年、米証券取引委員会(SEC)は、偽ICOサイト「ハウィーコイン」を立ち上げた。詐欺ICOの典型的な特徴に対して人々の意識を高め、投資家教育を推進することが目的だ。「うますぎる投資チャンス」を謳う詐欺ICOの典型例を表現しており、ユーザーが「今すぐコインを購入」をクリックすると、投資家を詐欺から守るためにSECが作った教育サイトに飛ぶようになっている