フェイスブックが今年6月にホワイトペーパーを発表した独自仮想通貨リブラ。発表後すぐに各国の金融規制当局などが懸念を表明した。今月16、17日には米上下院で公聴会が予定されている。現在までに出ている各国のリブラに関する記事をまとめた。今後も動きが多くあることが予想されている中で、何が議論されているのか、コインテレグラフの記事で復習しておこう。

「規制・コントロールが必要」

多くは「規制・コントロールが必要」と強く主張している。特に渦中の米国のほか、金融安定理事会などの国際機関は危機感をあらわにしている。

米民主党ウォーターズ議員

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米民主党のウォーターズ議員は、フェイスブックのリブラを監視する規制機関がないと指摘し、「まるで何のステップも踏まずに銀行を始めるようなもの」と述べた。

リブラが米ドルの脅威になることにも懸念を表明した。

「フェイスブックは独自通貨を作っている。それは、ドルの代わりになるだろう。現時点で彼らを止めて我々がコントロールすることがかなり重要だ」

金融安定理事会

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金融安定理事会(FSB)は「フェイスブックの仮想通貨リブラが導入される場合これまでとは異なる規制枠組みが必要になる」との認識を示している。FSBのランダル・クオールズ議長(米FRB副議長)は、大阪で開かれたG20サミットを前に各国リーダー宛に書簡を送り、仮想通貨(暗号資産)がもたらす潜在的なリスクについて警告した

国際決済銀行

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国際決済銀行は、「巨大企業の台頭は、規制当局や中央銀行がルールを改定する必要性を促しており、SNSやeコマースなどを運営するプラットフォーマーをコントロールするための新たな規制が必要だ」と述べている。

ドイツ連邦金融監督庁(BaFin)のフェリックス・フーフェルト長官

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「我々はただ見ているだけにはいかない。いかなる方法であっても適切に対応しなければならないだろう。世界規模で、少なくとも欧州規模で、基本的な基準を策定できることを望む」

免許の必要性を指摘

フランス中銀総裁

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フランス中銀のフランソワ・ビルロワ・ド・ガロー総裁は「マネーロンダリング防止規則(AML)を遵守し、銀行業の免許を取得する必要がある」と発言した。

「リブラユーザーが持つ匿名性によってリスクが増大する」とし、リブラがAMLを遵守し、取引やユーザーのデータを保護しなければならないと指摘した。

肯定派

トランプ米大統領の元経済アドバイザーでスティーブン・ムーア氏

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保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のフェローでトランプ米大統領の元経済アドバイザーを務めたスティーブン・ムーア氏は「興味深い。これ(リブラ)は、中央銀行にとって、プライベート通貨という競合が現れるという新たな挑戦だからだ」と肯定的な姿勢を示している。

懸念・否定派

規制コントロールまで強く意見しているわけではないが、懸念を示している機関や人物もいる。

オーストラリア準備銀行(RBA)のフィリップ・ロウ総裁

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「フェイスブックのリブラは、我々が普段使っている通貨のようになる前に、乗り越えるべき壁がいくつもある。(中略)対処すべき規制上の問題が多くあり、しっかりしたビジネスケースがあることを確認する必要がある。結論に飛びつく前に、吟味すべきだろう」

ジョセフ・ルービン

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イーサリアムの共同創業者であるジョセフ・ルービン氏は「非中央集権の羊の服を着た中央集権の狼のようだ」と非難した。

リブラのユーザーは仮想通貨よりも、通貨バスケットに信頼しなければいけない点が中央集権的であるという。

米下院金融委員会

「2億人超のフェイスブックユーザーにとってだけでなく、投資家や消費者、グローバル経済にとって、深刻なプライバシー、商取引、国家安全保障、金融政策上の懸念を生む」

サイバーセキュリティの脆弱性も予測されるとし、何兆ドルもの無保険のデポジットが失われる可能性もあり、消費者はプライバシーと国家安全保障上の重大な懸念にさらされることになるとも述べている。

ノーベル経済学賞受賞者スティグリッツ教授

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ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授は、リブラが、資金洗浄といったアンダーグラウンドの世界で重宝されることを危惧した。

中立派

シンガポールの中央銀行、シンガポール金融管理局(MAS)

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フェイスブックのリブラが安価な決済システムを提供し、金融システムにアクセスできない人々(アンバンク層)をサポートするなど、潜在的な利益があると述べた。

だが一方で、規制当局側は、巨大テクノロジー企業であるフェイスブックが、どのようにシステムを運用するのかを注視する必要があるとも語った。