規制順守を目指したモバイル版のハードウォレット開発を手掛けるクールビックス(CoolBitX)は、8日、FATF(金融活動作業部会)の規制遵守に向けてSBI VC トレード(SBI VC)と提携し、SBI VC トレードがクールビックスのクールXウォレットの早期導入に成功したと発表した。クールビックスがコインテレグラフ日本版に明らかにした。
SBI VCは、クールビックスが開発した最初のウォレット「クールウォレットS」を2018年に採用。今回、「カスタム版の」クールXウォレットを導入した。利用者は、秘密鍵を安全に保管できるほか、複数のレイヤーにまたがるKYC(顧客確認)を通すことでのみデジタル通貨をウォレットに出庫できる。
クールビックスのマイケル・オウCEOは、次のようにSBI VCとの提携の意義を話した。
「FATFは仮想資産業界に対して厳格なKYC /AML(アンチマネーロンダリング)のガイドラインを出した。取引所などを含む仮想資産サービス提供者(VASP)を金融機関と同じように規制することになる。(中略)より安全で、より幅広い仮想通貨の普及を目指して、クールビックスの技術に基づいたKYC /AMLソリューションであるクールXウォレットにおいて、SBI VCと提携できたことを誇りに思う」
また、オウCEOは、「現在、KYC /AMLの義務は全て取引所にかかっている」と指摘。クールビックスのサービスの意義を次のように解説した。
「クールビックスは、クールXウォーレットを提供することでSBI VCと協調し、SBI VCがデジタル資産のKYC/AMlで最良の実践ができるよう支援する」
一方、SBIホールディングスの北尾吉孝CEOは次のように歓迎した。
「クールXウォレットは、SBI VCに対して、日本と海外のKYC基準を満たしながら顧客を守るための方法を分かりやすく提供した。国境を越える性質を持つデジタル資産は、地理的な境界線に決められないソリューションが必要だ。そのため、仮想通貨のさらなる普及に向けた安全なシステムであるウォレットを採用できることを喜ばしく思う」
クールビックスは、同時にVASPや個人、企業向けに、KYC /AML順守を目指す仮想資産取引とセキュリティソリューションであるシグナ(Sygna)を発表した。
FATFと仮想通貨規制
FATFは6月21日、仮想通貨によるマネーロンダリングを防ぐための新たなガイダンスを発表。世界中に存在する異なるVASP間での顧客データ共有などを求めており、技術面での課題が指摘されていた。
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オウCEOは、先月コインテレグラフ日本版に対してFATFのガイダンスに遵守することを目指したプラットフォームを今後2、3ヵ月で立ち上げる予定であると話していた。
一方、SBIの北尾氏もFATFによる規制を守ることの重要性を訴えている。先月末の決算発表会で、日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)の理事をやめた理由として、JVCEAへのFATF規制順守へのスタンスに不満があったことを明かしたあった。
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コインテレグラフ日本版はJVCEAに対してコメントを求めているものの、執筆時点で返信は来ていない。