SBIホールディングスの北尾吉孝CEOは、2020年3月期第1四半期(4-6月期)の決算発表会で日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)を痛烈に批判した。

こないだ、もうどうしようもないなということで、自主規制団体の理事を降りてきた。あまりにもお粗末な話

30日の決算説明会で北尾氏は上記のようにJVCEAを非難した。7月2日付けで北尾氏はJVCEAの理事を退任したが、その理由は明らかになっていなかった。

北尾氏によると、JVCEA設立前に2つの団体が「喧嘩をしていた時」に北尾氏が間に入って話が進むように努力をしてきたが、2人の副会長候補の取引所が業務改善命令を受けた。このため北尾氏が「これから自主規制団体の旗揚げをしようという時に業務改善命令を受けてもう無理でしょう」と理事会で発言して候補から降ろしたという経緯があったという。

その上で北尾氏は、会長でマネーパートナーズの奥山泰全氏について「そもそも交換業をやっていない」ことを問題視。次のように述べた。

交換業をやっていないのに会長を続けるというのは、いかがなものかと。どうしてもやりたいという一心でやっているから、いろいろなところで僕から見るとトンチンカンなことばっかりやっているんだけど。金融庁も呆れ返っとった(中略)この団体でやっている限り、かならず問題が起きますよ。すでにビットポイントがやられたでしょう

こうした状況に対して北尾氏は、外部の理事を入れるように要請したものの、北尾氏の想定通りに話が進まなかったという。

さらに北尾氏によると、JVCEAが金融活動作業部会(FATF)に「(規制が)厳しすぎる。日本は立ち上がったばかりだから優しいルールを適応するべきだ」と手紙を出したという。北尾氏はこれに「激怒」し、「FATFの言う通りに全部やらないとダメだ」と訴えたそうだ。

「そうでなければ、日本で健全なクリプトアセットの交換業者は誕生しない。そして少なくとも、金商法に慣れた会社の子会社が主導権を取って行かなければダメ(中略)FATFはうちに来るでしょう。なんかもう本当にお粗末」

FATFは6月21日、マネーロンダリング(資金洗浄)対策のためのガイダンスを公表した。仮想通貨取引所やウォレット業者などを含む仮想資産サービス提供者(VASP)の間で顧客情報の共有が求めらることになった。

顧客保護の観点から規制強化に賛成する意見がある一方、技術面やコスト面で懸念の声が出ている。また「銀行業界がFATFにプレッシャーをかけて彼らにとって有利なルールを作らせた」という見方も出ている

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JVCEAに対する北尾氏の怒りは収まらない。

STO(セキュリティー・トークン・オファリング)の自主規制もJVCEAがやろうとしていることにも反対。「十把一絡げ」の証券業協会でも「無理だろう」と発言した。

北尾氏は、新たな団体の立ち上げを考えており、基本的には「楽天さんやカブコムさん、マネックスさんという所と一緒に作るべきと考えている」と話した。

「少なくとも技術に対して分かっている。あるいは金商法について十分に分かっている。こういうところでやらないとダメだ。イニシャル・コイン・オファリング(ICO)がどれだけの詐欺を起こしたんですか?」

今月4日、北尾氏がSTOの新団体設立準備を進めていることが明らかになっていた

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追記:7月31日21時

コインテレグラフ日本版は、JVCEAにコメントを依頼しているものの、執筆時点で返信は来ていない。