米国のトランプ大統領による包括的な関税の発表を受けて、株式市場および仮想通貨市場全体が急落するなか、ビットコイン(BTC)は依然として「底堅さの兆し」を見せている──世界最大の仮想通貨取引所バイナンスが4月7日に発表したリサーチレポートでそう述べている。
記事執筆時点の取引では、ビットコインは約1%上昇し、7万9000ドル台で推移している。これに対し、米大型株で構成されるS&P500は横ばい、金の先物は約1.5%下落している。
バイナンスはレポート内で、「直近の関税発表にもかかわらず、ビットコインは伝統的なリスク資産が崩れる場面でも価格を維持し、あるいは反発するなど、一定の底堅さを示している」と指摘している。
特に注目されるのは、長期保有者によるビットコインの保有量が増加している点であり、「これは、最近のボラティリティの中でも強い確信が維持されており、大規模な投げ売りが発生していないことを意味する」とレポートは述べている。
トランプ氏は4月2日、米国への大半の輸入品に対し最低10%の関税を課すとともに、57カ国からの輸入品には「相互的」な追加関税を適用すると発表した。
これを受け、S&P500やナスダックなど主要米株指数は軒並み10%以上の下落となり、貿易戦争への懸念が市場を圧迫している。
なお、ビットコインも約12%下落しているが、仮想通貨市場全体の時価総額が4月2日以降およそ25%下落しているのと比べると、比較的底堅く推移しているといえる。
「現在、『相互関税』の応酬が続き、グローバル市場が長期的な貿易分断という見通しに適応するなか、ビットコインが“安全資産”としての立ち位置を再び確立できるかが注目される」とバイナンスは述べている。
Source: Binance Research
変化する資産間の相関関係
また、ビットコインと「究極の安全資産」とされる金との相関係数は、過去90日間で平均0.12と低水準にとどまっているとバイナンスは報告している。
一方で、株式市場との相関係数は0.32とやや高いが、「短期的な揺れがあるとはいえ、ビットコインは依然としてマクロ経済的に独立した資産としての性質を取り戻す余地がある」とレポートは分析している。
「鍵となるのは、ビットコインが株式市場との長期的な低相関パターンに戻れるかどうかだ」と報告書は述べている。
Source: Binance Research
現時点では、ファンドマネージャーにとって安全資産としては金が好まれているようだ。バイナンスが引用した調査では、「貿易戦争が起きた場合、金を保有したい」と答えた回答者が58%に達した一方、「ビットコイン」と答えたのはわずか3%だったという。
バイナンスは最後に次のように述べている。「市場参加者は、保護主義的なグローバル経済の中で、ビットコインが非国家的・パーミッションレスな資産としての魅力を維持できるかを注視している」。