世界中で議論を巻き起こしているフェイスブックの独自仮想通貨リブラ。そのインパクトはどこにあるのか?

10月11日に東京で開催されたブロックチェーンイベント「Not For Sale」。その中で、マネックスグループの松本大CEOと、ブロックチェーン・テクノロジー関連事業を手掛けるLayerXの福島良典CEOが、フェイスブックの仮想通貨リブラを巡って対談を行った。

インターネット企業が金融システムを持つインパクト

福島氏は、ブロックチェーンによってフェイスブックのようなインターネット企業が金融ネットワークをオープンに持てるということがインパクトだ指摘する。

「全銀ネットなり日銀ネットなりの金融システムは、今までは銀行や証券会社しかアクセスできなかった。それがブロックチェーン・DLT(分散型台帳技術)によって、インターネット企業なら少なくとも技術的には誰でも持てるようになった」

フェイスブックだけでなく、「アマゾンやグーグル、アリババがやりだす可能性もあるかもしれない」(福島氏)。

フェイスブックが金融システムを作れば、インスタを使うコマース企業に直接融資するといった展開もあり得るだろうと、福島氏は予想する。

グローバル通貨が生まれる

松本氏は「各国通貨を超えた、グローバル通貨が生まれるイメージ。そういう可能性を開いた」と、リブラの意義を強調する。

ただ、米国のドル基軸通貨体制は「安全保障とも直結している」とし、各国政府が簡単にリブラが認められないだろうとも予想する。

「プロトコルやルール、すべての人が納得するものを作らないといけない。時間は掛かるだろうね。誰もが納得する共通の運営ルールを作れるか。しかもお金が絡むとなると様々な利害関係もある。そこが最大の難しさ」

実際、世界各国の政府や専門家からマネーロンダリングといった犯罪への悪用や、金融システムを不安定化させるといった懸念が噴出している状況だ。

技術面では難しさも

福島氏は、リブラは「プログラマブルマネー」だと指摘する。単なる電子マネーではなく、お金の価値以外にも様々なデータを付与することができるようになるということだ。

アンチマネーロンダリングなどをどう技術的にプログラムで実装するか。「今までは人の手で実行していた規制部分をプログラム的に自動化する姿になるだろう」と、リブラの未来を予想する。そこには当然、技術的な難しさも伴うと語る。

「規制と技術が絡まり合うようなことになる。果たして本当にワークするのか。技術の面ではまだ発達が必要な部分。時間がかかるかもしれない」

リブラ実現の可能性は?

今月14日、フェイスブックやアンドリーセン・ホロウィッツ、コインベース、ウーバーなど21の企業・団体が、リブラの発行体となるリブラ協会を発足させた。果たして、リブラは仮想通貨発行というゴールまでたどり着けるのか?

福島氏は「ユーザーに実際に使わるようになるのは五分五分ではないか」と予想。松本氏は「最終的にうまくいかないかもしれない…」と語る。

松本氏は「リブラはパンドラの箱を開けた」と語る。中国のデジタル人民元、もしくはデジタルドルといったデジタル通貨の可能性を一気に加速させる起爆剤となったという評価だ。

「ネットの世界でも共通のルールを作るのには時間がかかった。ブロックチェーンでも同じではないか。リブラをきっかけに世界中の政府が大騒ぎしているけれども、これをきっかけにアクセプタブルなルールが作られていくだろう」

福島氏は、今後、様々な企業が経済圏を作る中で、その経済圏同士の相互運用性(インターオペラビリティ)が大きなテーマとなるとも指摘する。

「楽天やアマゾンの経済圏を出てしまえば、そのポイントは意味がなくなる。交換レートのある通貨的なものになれば、そこをブリッジすることが可能となる」

そこをブリッジする手段としてブロックチェーンの価値もあるとの考え方だ。もちろん「どうやって経済圏同士の合意を作るかという課題はある」(福島氏)が、システム同士を結び付けることの社会的便益は高いと強調した。

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