ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が、仮想通貨に裏付けられた同国の新通貨の流通が8月20日に始まると発表した。現地の国営報道機関、テレスールが25日に報じた。

 テレスールの報道によると、新通貨のボリバル・ソベラノ(ソブリン・ボリバル)は既存の通貨であるボリバル・フエルテ(VEF)から5桁切り下げとなり、石油に裏付けられたデジタル通貨のペトロ(PTR)に紐づけられるという。ベネズエラ政府は今年2月にペトロを立ち上げている

 マドゥロ大統領は、この措置はベネズエラの金融・財政システムを「抜本的な方法で」調整するためのものだと指摘し、今回の通貨切替えとペトロへの紐づけは「生産的で、多様性があり、持続可能な経済モデル」の発展に向けた「大きな希望」だと述べた。

 同大統領は、この措置はインフレや現金不足の解決に役立ち、ベネズエラ人には日常となったATMへの長蛇の列を緩和できるとも述べた。

 マドゥロ大統領はペトロへの信頼を表明し続けており、この国家が裏付けるデジタル通貨は「最終的には技術的にも金融的にも確固たるものとなり」、「国内及び国際的な全ての経済活動」で使われるようになると断言している。

 一方で、今回の通貨切り替えは複数の金融専門家から批判を受けている。ローカル10の報道によると、経済学者のマキシム・ロス氏はこの措置は「何も解決しない」と主張したという。

 野党議員で経済学者のアンヘル・アルバラド氏もこの動きに批判的で、CNBCに対し「通貨の桁を切り下げても事態は改善しない」し実際には経済のインフレに有効ではないと語った。

 またベネズエラでは16年後半から、高インフレによって通貨ボリバルの価値が急落しているため、ビットコイン(BTC)を買う動きが広がった。今年に入ってからBTC購入の動きが再び活発となっており、4~6月にかけてBTCの購入量が急増していた

 ベネズエラ政府は最近、ペトロを財源とする複数の社会事業を始めている。7月には住居・住環境省が、ペトロを財源としてホームレス向けの住宅建設に着手する計画を明らかにしている。5月にはマドゥロ大統領が、若者や学生による取り組みを支援するペトロを財源とした仮想通貨銀行の立ち上げを発表している