ステーブルコイン「USDコイン(USDC)」の発行者であるサークルは、マルチパーティ計算(MPC)ウォレットサービスのベータ版をリリースしたと発表した。この新サービスは、分散型金融(DeFi)アプリ、Web3ビデオゲーム、電子商取引サービス、ブロックチェーンアプリケーションの開発者が、特定のユーザー向けにカスタマイズされたウォレットを作成できるようにする。最初はイーサリアム、アバランチ、ポリゴンで利用可能となる。

MPCウォレットは、ユーザーの秘密鍵を複数のシャードに分割し、分散ネットワークを通じて配布することでセキュリティを確保する。これは、多くのWeb3開発者が利用している新しいウォレット技術だ。MPCウォレットはアプリケーションのプログラミングインターフェースを介してアクセス可能となる。

サークルのブログ投稿によれば、新サービスは開発者に「最適なウォレットのセキュリティと制御の設定を選択する」ことを可能にする。例えば、一部の開発者は、完全にサークルに依存しないように独自のMPCノードをホストしたい開発者がいるかもしれない一方、他の開発者はサークルのノードに接続する簡単な方法を選びたいかもしれない。開発者はまた、「ユーザーとトランザクション署名の責任を共有する」ことを選ぶこともできる。これにより、ユーザーがキーを失った場合に回復することが可能となる。また、ユーザーにすべてのトランザクションに署名を求めることで、製品をノンカストディアル化することも可能という。

サークルの共同創設者でCEOのジェレミー・アレール氏によれば、新サービスはUSDCの利用促進にとって不可欠だ。

「サークルのプログラマブルウォレットは、USDCやオープンブロックチェーンベースの決済などのデジタル資産のグローバルな普及と利用を推進する戦略の中心的な柱の一部だ。この新プラットフォームは、サークルのWeb3サービスにとっての第一歩であり、開発者の一般的な問題点を緩和するためのものである」とアレール氏は語った。

MPCウォレットは物議を醸してきた。広く使用されているマルチチェーンのMPCブリッジが7月7日にハッキングされ、投資家が1億ドル以上を失った。その後、マルチチェーンチームはすべてのMPCシャードがCEOの管理下のクラウドサーバーに保存されていたことを認めた。

サークルの製品管理上級ディレクターのガガン・マック氏は、コインテレグラフに対する電子メールで、新サービスは「社内で開発・維持され、外部のベンダーには依存していない」と述べ、サードパーティのクラウドストレージシステムは使用されないとしている。さらに、マック氏は「一部の開発者や企業はMPCノードをホストすることを好むかもしれない」と述べ、それを希望する場合には許可されるとした。マルチチェーンはパートナーが自身のノードをホストすることを許可していなかった。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン