米国の情報機関が、ドルが世界的な優位性を失う可能性と最善の対応策に関するリスクシナリオをモデル化する研究者を募集している。
この募集は2月14日、米国の情報機関を統括する国家情報長官室(ODNI)が掲載した。
この仕事では、世界の基軸通貨としてのドルの地位に対する脅威、特に仮想通貨や中国・インドなどの新しい経済大国の台頭を評価するのが任務となる。
候補者は、ODNIが資金提供するインテリジェンスコミュニティ(IC)ポスドク研究フェローシッププログラムに2月28日までに応募する必要がある。
国家情報長官とは、国家安全保障に関するすべての情報問題について、米大統領や国家安全保障会議に報告する役割を担う。CIAといった米国の情報機関を統括し、情報収集活動全体を指揮している。
米ドルの優位性に対する懸念
フェローシッププログラムのトピックの説明には「米国はその金融パワーにより少なからず国際的な支配を維持している」という文言から始まっている。
その説明には、世界の準備通貨としての米ドルの役割が、米国が敵と認識した国家に対する制裁を効果的に実施できることを概説している。
ドルの供給と配分をコントロールすることは、対外債務の額を確定し、世界的な貿易の大部分の支払に使用されているため、米国の地政学的、戦略的、経済利益に沿うように世界の国々に圧力をかけることができているわけだ。
しかし、ODNIは次のように米ドルの優位性に対する懸念を示している。
「世界の準備通貨としての地位を米ドルが維持するのには、多くの脅威が存在する。中国やインドなどの国は、米国の経済成長と競合する可能性があるほど、大きく経済成長を遂げている。多くの仮想通貨支持者は、グローバルな仮想通貨もしくは国家が発行するデジタル通貨が米ドルを弱体化させる可能性があると予測している」
したがって、研究者はこれらのリスクシナリオの研究やモデリング、およびドルの戦略的優位性を奪う可能性のある予測不可能な「ブラックスワン」イベントを研究する必要がある。
ODNIは「歴史的事例および将来のシナリオに新しい統計的および人工知能的アプローチ」を適用できる人材、つまり経済学・金融、そして新しい「オルタナティブ・バンキング・メカニズム」を熟知している人材を求めている。
このような研究は、世界経済における米国の地位をどのように保護するのが最善かについて新たな洞察をもたらし、情報機関が不安定な展開を予測し、戦略を実施するのに役立つと期待されている。
「米ドルがその地位を失った場合、国家安全保障上の利点がなくなり、米国は脆弱になってしまう。このプロジェクトは、国家安全保障コミュニティがこの経済危機に備え、予防することを可能にするだろう」
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン
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