会社員が給与の手取りから、まとまった資金を貯金や投資に回していくには、支出を抑えること、節約が欠かせない。節約は、効率的な資産形成の第一歩であり、大変重要な手段だ。

「節約」と聞くと、「貧乏くさい」「生活を切り詰めるのはきつい」「面倒」といったネガティブなイメージを抱くかもしれない。しかし、やり方を工夫すれば、現在の生活をそれほど変えることなく大きな節約効果を得られる。

この記事では、20代・30代の会社員が取り組みやすい簡単で効果の大きい節約術を、12個のポイントに厳選した。

支出は手取りの何割まで? どれくらい節約すれば良いの? 

節約術を紹介する前に、手取りに対する支出の目安を確認しておこう。

金融広報中央委員会の調査によると、年間手取り収入に対する支出の割合は、20代・30代では7〜9割が一般的だ。残りの1割〜3割を貯金や投資に回している。もちろん世帯人数や年収によって異なるので、詳細は以下の記事で確認してほしい。

支出の目安、貯金と投資の割合は? 世帯・年収別で詳細解説【20〜30代】

一般的な支出の目安を上回っている人は要注意だ。すぐに節約に取り組んで、まずはみんなと同じ範囲にまで支出を抑えよう。

これから積極的に資産形成をしていきたい20代・30代の会社員であれば、手取りの8割以内で生活し、残りの2割を貯金や投資に回すことを最低限の目標にしたいところだ。

早いうちから節約に取り組んで投資の元手を増やすことで、節約は長期的な資産運用の成果に大きな影響を与えることになる。

節約は固定費の見直しが最優先 

節約の基本は固定費を抑えることだ。

支出は「固定費」と「変動費」の2つに分けられる。

節約は固定費の見直しが最優先

固定費とは、定期的(毎月・毎年など)に一定額がかかる支出だ。代表的なものに家賃や保険料、スマホ代などがある。

変動費は使用回数や使用量に応じてかかる支出で、食費や交際費、レジャー費などが該当する。

節約に取り組むなら、まずは固定費を見直すのがおすすめだ。固定費の見直しは最初は少し手間がかかるが、一度見直せばその節約効果はずっと続く。また、変動費より固定費のほうが節約できる金額が大きい。

変動費は、安いものを買ったり買い物を控えたりすれば、即時に節約できる。ただし、変動費の節約は我慢が伴うのでストレスを感じやすく、節約できる金額も少ない。

忙しい会社員は、まずは節約効果の大きい固定費の見直しから取り組もう。余裕があれば変動費の削減も考慮しよう。

20代・30代会社員におすすめの節約術12選!

ここからは、20代と30代の会社員におすすめの節約術を12個紹介する。特に「保険」「住居費」「車両費」「教育費」「スマホ代」の5つは、見直すと大きな節約効果を得られる。まずはこれら5つの支出を見直し、必要に応じてその他の節約にも取り組むといいだろう。

20代・30代会社員におすすめの節約術12選!

保険の見直し

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2019年)」によると、生命保険加入者の年間払込保険料の平均は19万6000円(男性23万4000円、女性16万8000円)となっている。

夫婦で生命保険に加入している場合は、年間約40万円を生命保険に支払っているわけだが、もし子どもがいない共働き世帯の場合、自分が亡くなったときに生活費に困る人がいなければ生命保険に入る必要性は低いだろう。不要な保険を解約するだけで年間数十万円の節約が可能だ。単身者の場合も、扶養家族がいなければ生命保険の必要性は低いかもしれない。

遺族年金や高額療養費制度、傷病手当金といった公的保障制度(社会保険)も利用できるので、ある程度の貯金があるなら、生命保険や民間の医療保険に入らないのも選択肢だ。

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ライフステージの変化等によって、加入プランを適宜見直すことも効果的な節約になる。保険料が月2000円安い商品へ乗り換えできれば、今の生活を変えることなく年2万4000円の節約を達成できる。

まずは現在加入中の保険が本当に必要なのかを検討し、不要な場合は解約しよう。子育て中で一定の保障が必要な場合は、保険料が安い掛け捨て保険を利用するといいだろう。

万が一の事態には保険金はいくらあれば足りるのかを計算し、必要以上の保障を得るために高い保険料を払っていないか確認しよう。

保険の見直しは節約効果が大きい

家賃が安い物件への引っ越し

賃貸暮らしの場合は、現在より家賃が安い物件に引っ越すことで生活費を下げられる。引っ越しをして家賃が月2万円下がれば、年間24万円の節約となる。

引っ越しは手続きや荷物整理などが必要で、費用もかかる。それでも、家賃が大幅に下がれば短期間で元が取れるだろう。

賃貸物件の家賃は築年数やエリア、最寄り駅からの距離などに左右される。入居するなら新しい物件がいいかもしれないが、新築や築浅の物件は家賃が高い傾向にある。

築年数が古くてもリフォームやリノベーションが行われ、良好な状態を維持している建物も存在する。賃貸住宅情報サイトなどを利用して、定期的に物件情報をチェックするといいだろう。

最近では、「敷金・礼金・仲介手数料・更新料ゼロ」「フリーレント(家賃が一定期間無料)」の物件も増えている。賃貸物件を探す際は、家賃だけでなく初期費用や更新料にも注目しよう。

家賃の見直しは長期的な節約効果が期待できる

住宅ローンの借り換え

持ち家の場合、住宅ローンの借り換えによって毎月の返済額や総返済額を減らせるかもしれない。借り換えを検討する目安は以下の通りだ。

  • 住宅ローン残高1000万円以上
  • 住宅ローン残返済期間10年以上
  • 借り換え前後の金利差1%以上

住宅ローンの借り換えには手数料がかかるが、総返済額の減少分が手数料を上回れば借り換えるメリットがある。

3つの条件がすべて当てはまらなくても返済額を減らせる可能性はあるので、まずはインターネットで情報収集をしてみよう。金融機関が提供する「住宅ローンの借り換えシミュレーション」を利用すれば、事前に借り換え効果を試算できる。

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自動車を手放す

自動車は本体価格が高いのはもちろん、駐車場代やガソリン代、自動車税、車検代といった維持費もかかる。自動車を手放せば、それだけで月数万円〜数十万円の節約効果が期待できる。

首都圏のように公共交通機関が発達している地域に住んでいるなら、自動車がなくても生活できるのではないだろうか。自動車に乗る頻度が少ない場合は、カーシェアリングを利用する方法もある。

カーシェアリングとは、必要なときに自由に自動車を使えるサービスだ。会員登録をしてスマホなどで予約をすれば、時間単位で自動車を利用できる。利用時間に応じて料金がかかる仕組みで、ガソリン代や保険料もかからない。

休日しか自動車に乗らないのなら、所有よりカーシェアリングのほうが経済的といえるだろう。

自動車が必要な地域に住んでいる場合は、「中古車で購入価格を抑える」「現金購入で無駄な利息を払わない」「軽自動車にして維持費を節約する」といった工夫をすることで、車両費の節約が期待できる。

カーシェアリングを利用したり中古車を買うことで大きく節約できる

教育費の見直し

「子どもの将来のために教育費は惜しまない」という考え方もあるだろう。しかし、教育費は支出が際限なく膨らみやすいため、老後の生活に影響が出る恐れがある。資金不足で奨学金に頼ることになれば、将来子どもに返済負担を背負わせることになるかもしれない。

いくら教育費にお金をかけても、子ども自身にやる気がなければ結果は伴わないだろう。また、複数の塾や習い事をかけ持ちすると、すべてが中途半端になってしまうリスクもある。教育費を聖域にせず、子どもと話し合って本当に必要なものにお金を使うことが大切だ。

最近では、安価な料金で利用できるオンライン学習サービスも増えている。必要に応じて検討するといいだろう。

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教育費を聖域にせず、子どもと相談して不必要なものであえば削減しよう

格安SIMへの乗り換え

スマホ代を節約したい場合は、格安SIMへの乗り換えが選択肢となる。格安SIMは「MVNO」と呼ばれる通信事業者が提供するサービスだ。携帯電話の基地局を持たず、大手携帯電話会社(キャリア)に設備を借りているので、通信サービスを安く提供できる。

キャリアから格安SIMに乗り換えることで、毎月のスマホ代が安くなる可能性がある。契約プランや毎月のデータ使用量にもよるが、格安SIMなら月1000円程度で利用できるプランもある。

格安SIMに乗り換えても、現在の携帯番号はそのまま引き継げる。また、キャリアから回線を借りているため、キャリアと格安SIMで回線の質に大きな差はない。契約する通信会社を替えるだけで、月数千円節約できるのは大きなメリットだ。

2人以上世帯の場合、家族全員が格安SIMに乗り換えればさらに大きな節約効果を得られる。あくまでも目安だが、スマホ代に月5000円以上払っているなら格安SIMへの乗り換えを検討しよう。

格安SIMへの乗り換えるのもおすすめ

自宅インターネット代の見直し

スマホ代を見直す際は、一緒に自宅のインターネット回線も見直そう。一部のMVNOでは、インターネット回線も提供している。スマホとインターネットを一緒に契約すると、基本料金の割引を受けられるサービスもある。

自宅のインターネット回線にWifiルーターを導入すれば、複数台のスマホをWifiに接続して利用すればスマホの通信量を抑えられるため、スマホ代の節約にもつながるだろう。

固定電話の解約

スマホを持っていれば、固定電話を使う機会は少ないのではないか。固定電話の使用頻度が少ないなら解約を検討しよう。解約するだけで、月数千円程度の節約になる。

「大した金額ではない」と思うかもしれないが、積み重なると大きな金額になる。少額だからといって軽視せず、使っていない固定電話があるならすぐに解約手続きをしよう。

新聞の解約

新聞を読むのが当たり前だと思い、何となく購読を続けていないだろうか。紙の新聞は網羅性に優れており、短い時間で世の中の動きを把握できる。しかし、インターネットが普及したことで、紙の新聞を読まなくても最新情報を確認できるようになった。

ネットニュースやSNS、ネット検索を利用すれば、新聞を読まなくても必要な情報を入手することは可能だ。

新聞は月数千円の購読料がかかるので、それに見合う価値を得られているかを考えてみよう。新聞を購読する必要性を感じないなら、解約するのも選択肢といえる。

不要な定額サービス(サブスク)の解約

「動画配信サービス」「書籍・雑誌の読み放題サービス」「スポーツジム」など、毎月料金がかかる定額サービス(サブスク)を利用していないだろうか。定額サービスはお得だが、利用しないまま料金だけを払い続けているケースもある。

毎月の料金は少額でも、解約が遅れるほど出費は増えていく。使っていない定額サービスがある場合は、すぐに解約手続きをしよう。

チリも積もれば山となる。不要な定額サービス(サブスク)の解約も一つの節約

ガスと電気を1つにまとめる

電力自由化により、ガスと電気の契約は好きな会社・プランを選べるようになった。ガスと電気を1つにまとめると、基本料金の割引や各種サービスを受けられる。

契約の切り替えは難しいものではなく、ガスや電気の品質が落ちることもない。窓口が1本化され、問い合わせなどの手間が省けるのもメリットだ。

エリアによって利用できる電力会社は異なるので、複数の電力会社を比較して光熱費が安くなる会社・プランを選ぼう。

節税する

節税で手取りを増やし、投資の元手を増やそう

「節税は個人事業主やフリーランスがやるもの」と思うかもしれないが、会社員でもできる節税策は意外と多い。上記で説明してきた支出を抑える節約術とは少し異なるが、節税することで実質的に手取りを増やし、より多くの資金を投資に回すことができる。

たとえば、投資信託で老後資金を準備したいと考えているなら、税優遇制度のiDeCoの活用を検討しよう。高い節税効果がある。

大体の会社員の場合において、最大で年額27万6000円をiDeCoの枠で投資でき、その投資額分の住民税と所得税、そして運用益にかかる税金を納める必要がなくなる。たとえ運用益がゼロだったとしても、所得税率が10%の人であれば、住民税と合わせて27万6000円×20%=5万5200円の節税が可能だ。※iDeCoは口座管理費等で、毎年数千円程度の費用がかかる。

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個人年金保険とiDeCo 年金を作るならどっちがお得?

会社員が気軽に取り組める節税策は他にも「ふるさと納税」がある。ふるさと納税は、(ワンストップ特例制度を利用した場合)住民税の納税先である自治体を自由に選択でき、原則として自己負担2000円で、その自治体から地域の名産品がもらえる制度だ。

節税というよりは翌年納める住民税を前払いするような形だが、その地域の名産品を2000円で手に入れられるようなものであり、得になるだろう。ふるさと納税では高級牛肉などの特産品が人気だが、トイレットペーパーやタオルなどの日用品も選べるため、普段の支出を減らすという目的においても活用できる。

住宅ローンでマイホームを購入する場合は「住宅ローン減税」が利用できる。住宅ローン減税は、住宅ローン年末残高の一定割合が各年分の所得税額から控除される制度だ。会社員の場合、初年度は確定申告が必要だが、2年目以降は勤務先で年末調整を受けられる。

以下のページで会社員でも実践しやすい節税対策を紹介しているので、利用できるものがないか確認してみよう。

会社員が実践しやすい節税対策11個を解説 手取りを増やそう

節約は資産形成のはじめの一歩

節約にはネガティブなイメージがあるかもしれないが、資産形成のはじめの一歩だ。特に固定費の見直しなら、今の生活をそれほど変えることなく大きな節約効果を得られる。

会社員が短期間で収入を大きく増やすのは、よほど大きな成果を達成しない限り難しいだろう。支出を見直して月5万円節約できれば、収入が月5万円増えるのと同じだ。将来のために貯蓄を増やしたいなら、無理のない範囲で節約に取り組んでみよう。