韓国が機関投資家の仮想通貨市場参入を見据え、仮想通貨の取引と上場に関する規制を強化している。2025年6月に施行される新ルールでは、非営利団体による仮想通貨の寄付受領・売却を認める一方、仮想通貨取引所の売却にも制限が課される。
韓国金融委員会(FSC)は5月20日、第4回の仮想資産委員会において新たな制度を最終決定したと発表した。非営利団体が仮想通貨の寄付受領や売却をするには、過去5年分の財務監査記録を有していることが求められ、さらに各団体内に「寄付審査委員会」を設置し、受領の適格性や換金戦略を審査する必要がある。
マネーロンダリング対策として、すべての寄付は本人確認済みのウォン建て口座を通じて受領され、銀行・取引所・団体がそれぞれ責任を持つ体制が導入される。また、換金対象となる仮想通貨は、国内主要取引所3社以上に上場している通貨に限定され、受領後すぐに換金することが原則とされる。
仮想通貨取引所については、ユーザーからの取引手数料として受け取った仮想通貨を、運営費用の範囲内でのみ売却することが認められる。ただし、1日あたりの換金量は計画額の10%以内に制限される。
さらに、売却できる通貨は、ウォン建ての主要取引所5社における時価総額上位20トークンに限定され、取引所が自社プラットフォーム上で自己保有のトークンを売却する行為は禁止される。
ミームコインや「ゾンビトークン」は排除へ
新たなルールでは、急激な価格変動による市場の不安定化を抑えるため、上場トークンに一定の流通量を求めるほか、上場直後の成行注文を一時的に制限する。
取引高が極端に少ない「ゾンビトークン」や、明確な実用性がないミームコインについても厳格な審査対象となり、流動性やコミュニティの活動指標を満たさない場合は上場廃止が義務付けられる。
6月以降、取引所や非営利団体は実名口座の申請が可能となり、年内には上場企業やプロ投資家にも実名口座の提供が拡大される予定だ。
韓国政界では仮想通貨支持の動きも
韓国政界では仮想通貨を巡る改革への支持が広がっている。
「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、韓国ウォンに連動したステーブルコインの発行を提案しており、国外への資本流出の抑制と金融主権の強化を目指している。李氏は政策フォーラムで、ステーブルコインが国内資産の流出を防ぎ、テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)といった外資系ステーブルコインへの依存を軽減するべきだと述べた。
李氏はあわせて、現物型の仮想通貨ETF(上場投資信託)の合法化も掲げており、与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)氏も仮想通貨ETF導入への支持を表明している。現物ETF導入をめぐっては、超党派での推進機運が高まりつつある。