SBIホールディングスは26日、3月期の決算を発表したSBIバーチャルカレンシーズの初年度黒字化、本日北尾吉孝CEOが役員に就任したリップル社との提携強化の方針、マイニング事業の展望、STO発行検討などを明記しており、仮想通貨・ブロックチェーン関連で今後も積極的に事業展開していく方針を打ち出した。

SBIVC、初年度に黒字化達成

SBIバーチャルカレンシーズ、3月期通期(2018年4月1日~2019年3月31日)の税引き前利益が約3.6億円で、サービスローンチ初年度に黒字化を実現したと発表した。

今後SBIバーチャルカレンシーズは、今国会での提出される見込みの金融商品取引法と資金決済法の改正案を見据えて、新たな取り組みを開始する方針だ。

板取引に関しては、各種規制へ対応するために開始予定を3月から7月に延期。新規の取扱通貨については以下の3つの基準を元に判断すると発表した。

・原則として時価総額5000億円以上(低い時価総額は51%攻撃による不正な取引配信のリスクがあるため)
・不健全なハードフォーク等の見通しが無いこと
・上記のほか、流動性・安全性・収益性などを加味して決定

また、レバレッジ取引については、第1種金融商品取引業に該当する見通しであることを踏まえて、グループとして取り組みを決定する方針だという。

追記

北尾氏は、板取引の開始が遅れたことについて不満の声があったが「最大の理由は仮想通貨関連法の改正」と説明した。

またレバレッジ倍率の上限が何倍になるか決まっていないことにも触れ、「問題がないように、一旦決まってから開始することが大事」と強調した。「今、むちゃくちゃな倍率でやっているところがありますけど、そんな所は大損こいていくんじゃないですか?」と付け加えた。

さらに新たに設けた通貨の上場基準を遵守していくことを強調。SBIバーチャルカレンシーズは、今月16日、新たな上場基準に照らし合わせて仮想通貨ビットコインキャッシュ(BCH)の取り扱いを廃止した

北尾氏は、去年11月にハードフォークで分裂したビットコインキャッシュを上場廃止にした理由について次のように述べた。

「せっかくビットコインキャッシュを推してやろうと思ったのだが、ジハン(ビットメイン創業者)とクレイグ(Nチェーンのチーフサイエンティストで自称サトシ・ナカモト)が戦っちゃって、ABCとSVができた。結局ジハン側が勝ってビットコインキャッシュという名前を継承するようになったが、両方の時価総額がかなり落ちた

世界の約3割のハッシュレート獲得を目指す

先月、SBIは、マイニングチップ製造およびマイニングシステムの開発を行うSBIマイニングチップ(SBIMC)を設立した。欧州、米国、アジアなど電気料金の安価な地域で電力確保を進めるほか、米国の大手半導体素粒子メーカーと連携し、「世界シェア3割のハッシュレート獲得」を目指す。

追記

今月9日、中国国家発展改革委員会(NDRC)が、仮想通貨のマイニングの禁止を検討していると報じられた。北尾氏は「中国勢が中国本土でのマイニングが禁止されるようになる」とし、「我々はその間隙を縫ってどんどん増やして3割まで持っていきたい」と述べた。

リップル社との提携強化

4月26日にリップル社の役員に就任した北尾CEO。今回の決算でも、リップル社との提携強化の方針を打ち出した。

SBIは、先日法人化した銀行間送金アプリを手がけるマネータップについて、リップル社からの出資受け入れを検討していると発表。出資受け入れ時期は「国内金融機関からの出資受け入れがひと段落した段階」とし、目的は「技術連携の強化や国際送金に関する取り組み推進」を掲げた。

マネータップは、すでにリップルのブロックチェーン基盤の決済サービス「xCurrent」を採用。手数料や維持コストの削減、送金スピードの改善につなげている。前回の決算発表会で北尾氏は、仮想通貨XRPの採用が義務になるリップル社のxRapidの将来的な採用を示唆していた。

追記

ペイペイやJコインなどキャッシュレス決済サービスが次々に登場する中、北尾氏は「チャージ不要」「送金先にアプリ不要」である点がマネータップの優位性になると強調した。

STOを検討

「6月までに予定される」金融商品取引法の改正に伴いSBIは、トークンを用いた資金調達であるセキュリティ・トークン・オファリングの実施を検討している。一般的に株など既存の金融商品を紐づけたトークンと定義されるセキュリティー・トークン。市場での期待は高まってきており、先日には仮想通貨取引所Quoineの代表取締役Head of CEO Officeである紺野勝弥氏が今後、STOが仮想通貨業界をリードするという見方を示した

SBIは、「法改正後、速やかなSTOによる大規模な資金調達を検討中」と述べている。