ペイパルの新たなイーサリアム(ETH)ベースのステーブルコイン「ペイパルUSD(PYUSD)」は仮想通貨コミュニティに賛否両論を巻き起こすニュースとなっている。
この新たなステーブルコインはついにETHがメインストリームでの採用を見つけるきっかけとなるかもしれないという声がある一方、分散化と個人の資産管理に対する懸念を引き起こしている。
新たなステーブルコイン「ペイパルUSD」は8月7日にローンチされ、パクソス・トラストによって発行された。この会社はバイナスUSD (BUSD)のサポートも行っている企業だ。
PYUSDはイーサリアムをベースに構築され、「デジタル決済とWeb3のために設計された」とされており、近く米国の顧客に提供される予定だ。
このローンチはイーサリアムのメインストリーム化にとって大きな前進と見なされている。
ETH強気派であるアンソニー・ササーノ氏やライアン・ショーン・アダムス氏は、このペイパルのステーブルコインがイーサリアムを「インターネットのマネー」に近づけるだろうと考えている。
イーサスキャンによると、イーサリアムのデイリーアクティブユーザー数は現在、30万から40万人の間で推移している。
しかし、アダムス氏はペイパルを積極的に利用するアカウントが4億3000万あると指摘し、世界の80億人のうち5%以上が理論的にはペイパルの新ステーブルコインを通じてイーサリアムにオンボードする可能性があると考えている。
GnosisのCEO兼共同創設者であるマーチン・コッペルマン氏は、PYUSDをイーサリアムのベースレイヤーでローンチすることで、イーサリアムのレイヤー2もPYUSDとインタラクトできるようになると付け加えた。
米議員などからは、これを大手企業が仮想通貨を受け入れる新たな例と見ており、伝統的な決済システムに新たな息吹を吹き込むと考えている。
たとえば米下院金融サービス委員会のパトリック・マクヘンリー委員長は、8月7日の声明でペイパルのPYUSDのようなステーブルコインは「21世紀の決済システムとして有望である」と述べている。
しかし、誰もがペイパルの新ステーブルコインについて納得しているわけではない。
いくつかのスマートコントラクトウォッチャーは、PYUSDのスマートコントラクトには'freezefunds'と'wipefrozenfunds'の機能が含まれている点を指摘。これはスマートコントラクトセキュリティにおける「中央集権化での攻撃ベクトル」の典型的な例とされている。
仮想通貨研究者のクリス・ブレック氏も同様の懸念を示している。ブレック氏は、ペイパルが必要な場合にはこの議論のある機能を利用すると考えている。
デジタル資産を専門とする弁護士のサラ・ホッダー氏は、ペイパルのステーブルコインの多くの特性が検閲可能な中央銀行デジタル通貨のそれに似ていると考えている。また別のウォッチャーは、デプロイされたスマートコントラクトがペイパルによっていつでも変更できると指摘している。
一方、ブロックチェーンエンジニアのパトリック・コリンズ氏はやや中立的な視点を持ち、ペイパルのPYUSDが「壮大」であった可能性があるが、コントラクトのプログラムに使われたSolidityのバージョンが古く、コントラクトがアップグレード可能であり、ガス効率が良くないといったエンジニアリングの選択が最適でなかったと指摘する。
また、ササーノ氏は別の投稿で、ペイパルのステーブルコインが中央集権化されている一方で、イーサリアムのユーザーはそれを使うかどうか自由に選べると説明した。
ペイパルは、PYUSDは今後数週間以内にロールアウトされるとしている。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン