国際通貨基金(IMF)は、フェイスブックの独自仮想通貨リブラをはじめとするステーブルコインのメリットとリスクについて解説するブログ記事を掲載した。ステーブルコインのリスクとして、「テック企業の新たな独占」や「政府の通貨発行益減少」など6つのポイントを指摘している。

IMFは19日、「デジタル通貨:ステーブルコインの台頭」という記事を掲載。著者はIMFディレクターのトビアス・エイドリアン氏と、IMF金融資本市場局のトマソ・マンシーニ・グリフォリ氏だ。

ステーブルコインのメリット

ブログ記事の中では、ステーブルコインのメリットとして「低コスト、グローバルなリーチ力、速さ」の3つを大きなものとして挙げている。さらに次のようにメリットをまとめている。

「最も大きな魅力は、ソーシャルメディアを使うのと同じように、簡単に取引を行うことができるネットワークだ。ペイメントは単なる送金行為以上のものであり、人々をつなぐ社会的なエクスペリエンスになる。ステーブルコインは、ユーザー中心の企業によって設計され、デジタルライフへのより良い統合の可能性を提供するだろう」

ステーブルコインの6つのリスク

ステーブルコイン導入には大きなメリットがあるとしつつ、6つの潜在的なリスクがあるとも著者らは指摘する。

銀行の金融仲介機能の低下

ステーブルコインが普及すれば、銀行の預金が減少し、銀行の金融仲介機能が失われる可能性があるというリスクだ。

新しい独占の発生

テック系大企業がこれまで、ユーザーのデータを独占してきたことを例にあげ、金融分野のデータでも新たな独占が発生するリスクがあるというものだ。著者らは、データ保護やデータコントロール、データ所有権について、新しい基準を作る必要があるだろうと指摘する。

弱い通貨の脅威に

インフレ率が高く、安定していないような国の「弱い通貨」が、ステーブルコインに席捲されてしまうリスクだ。もちろん現在でもこういった弱い通貨がある国では、現地通貨の代わりにドルに逃避する現象(ドル化)が既にある。著者らはステーブルコインが「ドル化の新しい形になる」と指摘する。

こういった新興国ではステーブルコインの流通を制限する可能性があるとも予測する。

違法行為を促進するリスク

マネーロンダリグ(資金洗浄)やテロ資金確保といった違法行為にステーブルコインが利用されるリスクだ。著者らは、こういったリスクを回避するため、規制当局側も新しいテクノロジーに適応する必要があると指摘する。

通貨発行益へのリスク

通貨発行益(シニョリッジ)とは、政府(中央銀行)が通貨の額面とその製造コストの差から得る利益のことだ。ブログでは通貨発行益が減少するリスクがあると指摘する。利子が付かないステーブルコインが普及すれば、利子が付く法定通貨から「利益を吸い上げてしまう可能性がある」というものだ。

消費者保護の問題

銀行預金であれば制度によって保護されているが、ステーブルコインでも消費者保護や金融安定の取り組みが必要になるだろうと指摘する。ステーブルコインの法的位置づけを明確にし、消費者保護の取り組みを進める必要があると述べている。1つのアプローチとして「マネーマーケットファンド」のように規制することで、事業者に資本維持を要求する案を提示している。

翻訳・編集 コインテレグラフ日本版