米調査会社ファンドストラット代表のトム・リー氏は8日、コインテレグラフ日本版のインタビューに答え、インターコンチネンタル取引所(ICE)の仮想通貨業界参戦によってビットコインETFの重要度が下がったと指摘し、ビットコイン価格は年末にかけて2万ドル以上になるというこれまでの見方を維持した。7日に米国証券取引委員会(SEC)がCboe BZX取引所への上場を求めていたビットコインETFの決定を延期してから仮想通貨相場は低調だが、リー氏のビットコインに対する強気姿勢は変わっていない。
リー氏によると、ビットコインETFが注目されていた理由は機関投資家の仮想通貨業界への参入を促せることだったが、ICEが新たに立ち上げた仮想通貨プラットフォーム「バックト」が代わりにその役割を十二分に担えると解説。ビットコインETFの延期は確かに失望だったが、ICEのポジティブ要素がそれを上回るという見解を明らかにした。
「ICEのニュースは、機関投資家の参入のために必要とされたビットコインETFの価値を下げた。なぜならICEは規制に基づいて市場の監視をする上、ビットコインの現物引き渡しを行い、資産管理(コストディ)サービスを提供するため機関投資家は楽に取引できる」
リー氏は、もちろんビットコインETFが重要ではないという訳ではないと発言。「伝統的な株式市場でETFは特定の株に対する需要の20%を占める」と言われていて、仮想通貨市場の場合は「特定の仮想通貨に対する需要の40%を占めることになる」とそのインパクトの大きさを認めた。ただ実用面で機関投資家の参入を促す上で、ICEの方が規模の大きな話だと主張した。
「コカ・コーラを買うのと同じくらいビットコインの購入が楽になる。もしあなたが伝統的な機関投資家でビットコインの取引をしたいとしたら、口座を開設してウォレットを作り、そのウォレットをどうやって守るかを考え、店頭取引のブローカーや取引所と関係を築き、取引上限額を決めて承認されないといけない。しかし、ICEを使えばICEを介すだけですむ」
とはいってもICE新会社設立のニュースに対して仮想通貨市場の反応は薄い。これについてリー氏は、3つの要因を挙げた。
まず、ICEの認知度が米国以外で低い点。伝統的な金融市場と異なり仮想通貨市場の約8割は米国外での取引だとした上で、米国外でのICEの知名度の低さが相場の熱狂度の低さに繋がっていると分析した。またホワイトハウスの組織である移民税関捜査局(ICE)と名前が被っている点も指摘した。
次にICEで実際に取引開始できるのが11月であることをあげた。
そして、投資家は去年12月に始まったビットコイン先物の二の舞を恐れているのではと解説。ビットコイン先物が始まってからビットコイン価格が下落基調であることから、今回のICEが11月以降のビットコインの下げ要因になると考えているのではと予想した。ICE は11月にビットコイン先物を上場させる計画だ。ただリー氏は、ビットコイン先物よりICEは大きなニュースだと付け加えた。
一方、機関投資家の動向に加えてリー氏が注目しているのは、アジアからの資金流入だ。
「アジアは重要な市場だ。富の拡大が進んでいるからね。今や米国より中国の方が多くの億万長者生み出している。仮想通貨市場はアジアの繁栄を表しているといっても過言ではない。そしてアジアには多くの若者が存在する。世界には今17歳から37歳の若者であるミレニアル世代が25億人いて、そのうち12億人が東アジアに住んでいるとされている」
こうしたポジティブ要因に加えてリー氏は、ビットコインのマイニング費用が年末までに9000ドルになると従来の見立てを再度指摘して、今年、ビットコインが2万ドル以上になる可能性はまだあると予想した。
参考記事
ビットコイン2万5000ドル予想を堅持の理由とは?=ファンドストラット リー氏
ビットコインのシェアが拡大傾向、反発の本当のサインは市場占有率=ファンドストラット社トムリー