新型コロナウイルスにマーケットが本腰をあげて注目し始めたのは今年の3月中旬からだろう。
トランプ大統領が欧州からの渡航を禁止すると発表する中、新型コロナウイルスによる経済不安が一気に高まり株など伝統的なマーケットが崩壊。ビットコインなど仮想通貨も投げ売りの対象となり、3月13日金曜日には一時50%以上のマイナスを記録した。
「流動性の危機」と言われ、経済危機への懸念が高まる中、投資家が株でも金でもビットコインでも持てる資産をとりあえず現金化したというのが大方の見方だ。
あれから1ヶ月以上が経った。ビットコイン市場は7500ドル付近まで回復している。株価はV字回復ならぬU字回復やW字回復、L字回復など様々な予測がされているが、ビットコインはどうなるのだろうか?
楽観論
「安全資産」としての本領発揮はこれから
ビットコインが安全資産として本領を発揮すると考える専門家が注目するのは、2008年の金融危機の時の金(ゴールド)の動きだ。
2008年の金融危機発生直後、金はリスク資産のS&P500と共に急落。現金化を急ぐ投資家が引き起こす「流動性の危機」の犠牲となった。しかし、その後の推移を見てみると、S&P500が低迷を続ける一方で金は反発した。
今回、ビットコインはS&P500や金と共に暴落したが、今後は「デジタルゴールド」であるビットコインはS&P500からデカップリング(価格の乖離)すると期待する投資家は少なくない。
「フリーマネー」説
新型コロナによる経済悪化を防ぐために米連邦準備理事会(FRB)やECBなど世界の中央銀行がなりふり構わず金融緩和策に打って出ている。マーケットに溢れるマネーは新型コロナの終息が近くにつれてフリーマネーとして行き場を探す。その時、ビットコインなどの資産が行き先となるとする説だ。
100倍レバレッジが有名な仮想通貨取引所ビットメックスのアーサー・ヘイズCEOなどが「フリーマネー」説の提唱者だ。同CEOは、今年3月時点で、「フリーマネーの波を吸収するために両手で仮想通貨を買い始めなければならなくなる」と指摘し、ビットコインが年末までに2万ドルを回復すると予想した。
「中央銀行の印刷機が猛獣モードになる中、ビットコインは年末にかけて1万ドルから2万ドルに戻るはずだ。それぞれの中央銀行が金利をゼロにして終わりのない金融緩和を発表する。しかし、2008年や2009年の初期に見られたように、当たり前の話に思えること(つまり、中央銀行が印刷して金やビットコインのような資産が上昇すること)は最初は明らかにならないものだ」
マネーとしての健全性
3月13日にビットコインが50%以上暴落した直後、「今朝、ビットコインを買ったよ」と言ってのけたツワモノがいる。米仮想通貨投資会社モルガン・クリーク・デジタル創業者のアンソニー・ポンプリアーノ氏だ。同氏が根拠したのは、ビットコインのマネーとしての健全性。不透明な金融政策に左右されず技術的にも素晴らしいビットコインの可能性を信じている人にとっては、「むしろ今が買い」という信念だ。
政府による大規模な財政出動、中央銀行による利下げや量的緩和で法定通貨の価値は下がり、インフレのリスクが高まる。ポンプリアーノ氏は「ビットコインはまさにこういうシナリオのために作られた」と主張した。
悲観論
ビットコイン”死亡”説
今回の暴落にあたりビットコイン死亡説を唱える専門家は、テクニカル分析家に多い。
友人同士であるピーター・ブラント氏とアレッシオ ・ラスターニ氏は、長年ビットコイン支持派だったのだが今回の暴落には腰が引けたようだ。
13日の暴落を受けてブラント氏は、「ビットコインは50%の確率で10万ドル、50%の確率で0か実質的に0になる可能性があると言ってきた。7500ドルを下回った時点で、私はゼロに賭ける」と発言。事実上のビットコイン取引からの撤退した。
ラスターニ氏は、ブラント氏に先駆けて撤退を表明。3月10日時点で、3つのテクニカル指標が集まる8300ドルの水準を下回ったことを重大視し、「ビットコイン取引をやめた」と述べた。
ちなみにブラント氏とラスターニ氏は、今年1月にコインテレグラフのユーチューブチャンネルで共演。当時は2人ともまだ強気だった。
S&P500と相関が過去最高
ビットコインは「安全資産」のはずなのに「リスク資産」であるS&P500との相関が高まり、事もあろうに最近は過去最高を記録してしまった。リーマンショックを上回ると言われる今回のコロナ経済危機から株価は一段安になるという見方が高まる中、ビットコインとの相関の高さは気になるところだ。
ブロックチェーン分析を手がけるロングハッシュは、4月初頭にかけてビットコインとS&P500の相関関係が過去最高を記録。「デジタル・ゴールド」としてのビットコインの用途に疑問符がついたことになると指摘した。
(出典:LongHash 「ビットコインとS&P500の相関関係」)
仮想通貨・FXトレーダーのひろぴー氏も、コインテレグラフ主催の第2回トレーダーズライブに出演し、このトレンドが続けばビットコインをリスク資産として捉えなければならなくなるとし、警戒を続けると話した。