サークルの最高戦略責任者(CSO)であるダンテ・ディスパルテ氏によれば、GENIUS法案にはあまり注目されていない条項が含まれており、それがテクノロジー大手やウォール街の巨大金融機関によるステーブルコイン市場の支配を防いでいるという。
「このGENIUS法案には、私の遺産として“リブラ条項”とでも呼びたい内容がある」とディスパルテ氏は13日、ポッドキャスト「Unchained」で語った。銀行以外の事業者がドル連動型トークンを発行するには、「サークルのような企業に近く、銀行とは異なる」独立した法人を設立し、独占禁止法の審査を受けたうえで、米財務省の委員会による拒否権審査を経なければならない。
銀行側も例外ではない。ステーブルコインを発行する銀行は、法的に分離された子会社にその業務を置き、バランスシート上には「リスクテイクなし、レバレッジなし、貸付けなし」の形で保有しなければならないとディスパルテ氏は述べた。
この構造は、JPモルガンなどが提案してきた預金型トークンモデルよりも「さらに慎重」だという。「このルールによって、最終的な勝者は米国の消費者と市場参加者、そしてドルそのものになる」と付け加えた。
GENIUS法案、超党派で可決
先週、民主党102名を含む300票超の賛成で下院を通過した「米国ステーブルコインの国家的イノベーションを導く法案(GENIUS法案)」は、米ドルが世界のデジタル通貨競争で「ルールに基づく」優位性を持つことを可能にするとディスパルテ氏は主張する。
「仮想通貨はついに望んでいたものを手に入れた。すなわち正当性、法的および規制上の明確な道筋、そして競争の機会だ」と語った。
この法案では、発行資産が100億ドル未満であれば州ごとの資金移動業ライセンス制度が維持されるが、それを超えた場合は全国的な信託銀行チャーターを取得する必要がある。
また、利付型ステーブルコインの禁止、厳格な情報開示基準、裏付けのない“ステーブル”トークンに対する刑事罰の導入などが盛り込まれている。ディスパルテ氏は「テラのような実験は終わった」と述べた。
ただし、一部からは、利回りの禁止が消費者の利用を妨げ、海外発行体に有利に働く可能性があるとの批判もある。ディスパルテ氏は、利回りは「セカンダリーマーケット上のイノベーション」であり、基盤が確立された後は分散型金融(DeFi)プロトコルを通じて提供されるのが望ましいと主張した。
利回り禁止でDeFiに追い風か
GENIUS法案による利付ステーブルコインの禁止は、投資家の需要をイーサリアム基盤の分散型金融(DeFi)プラットフォームへと誘導する可能性がある。
アナリストのニック・パックリン氏やCoinFundのクリストファー・パーキンス氏は、利回りのインセンティブが失われることで、オンチェーンでの受動的収益を求める手段としてDeFiが主流になるとし、「ステーブルコインの夏」は「DeFiの夏」へと移行するかもしれないと予測している。
この禁止措置は特に機関投資家にとって重要である。個人投資家と異なり、機関は受託者責任の下でリターンを生み出す必要があるため、利回りの機会は不可欠だ。アナリストらは、特にDeFi分野の中でも総預かり資産(TVL)で圧倒的シェアを持つイーサリアムへの機関資金の流入が今後加速するとみている。
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