フランス国内で仮想通貨関連の誘拐事件が相次いでいることを受け、フランス政府は仮想通貨業界の起業家とその家族に対する保護措置を強化する方針を打ち出した。米メディアのポリティコが報じた。
新たな保護措置には、警察緊急回線への優先アクセス、自宅のセキュリティ評価、法執行機関による安全対策のブリーフィングなどが含まれる。
ブリュノ・ルタイヨ内務相は、これらの措置を仮想通貨業界を狙った一連の攻撃に対応する包括的な取り組みの一環として導入した。
「仮想通貨業界の幹部に対する誘拐事件が繰り返されており、これに対して即時的かつ短期的な具体策を講じ、犯罪を未然に防ぎ、抑止し、妨害することで業界を守っていく」
また警察官に対しては、仮想通貨のマネーロンダリング対策に関する訓練も実施される予定だという。
ルタイヨ氏は、仮想通貨業界の国内関係者らと面会し、対策強化に向けた協議を行った。これは、過去数カ月間で仮想通貨に関連した誘拐事件が3件発生したことを受けたものだ。
仮想通貨関連の誘拐事件が多発
最新の事件は5月13日に発生した。フランスの仮想通貨取引所ペイミウムのピエール・ノワザCEOの娘と孫が、白昼堂々のパリ市内で誘拐されかけた。地元警察によると、犯人は2人をワゴン車に押し込もうとしたが、ノワザ氏の娘が犯人のひとりから銃を奪い、遠くへ投げ捨てたことで襲撃は失敗に終わったという。
En plein Paris, un homme a été violenté par des individus cagoulés, habillés tout en noir. Ils tentaient de l'enlever. Un homme a surgi, extincteur à la main, pour les faire fuir. →https://t.co/P0qV6PR40v pic.twitter.com/9f4r2Gi7ho
— Le Figaro (@Le_Figaro) May 13, 2025
その10日前の5月3日には、仮想通貨起業家の父親が身代金目的で数日間拘束されていたところを、パリ警察が救出した。この事件では、犯人側が700万ユーロを要求していたとされる。
また、1月21日には仮想通貨ハードウェアウォレット企業レジャーの共同創業者であるダビド・バランド氏が、フランス中部の自宅から誘拐された。バラン氏は翌22日の警察の作戦によって救出された。
ルタイヨ氏は今週初め、これらの事件には相互に関連がある可能性が高いとの見方を示している。
仮想通貨保有者への物理的な脅威
サイファーパンクのジェイムソン・ロップ氏が管理するGitHub上のデータベースによれば、2014年以降、仮想通貨に関連する強盗・誘拐事件は150件を超えており、2025年だけでもすでに23件が報告されている。
ロップ氏は、犯人の多くがSNS投稿や公開イベント、ミートアップなどを通じてターゲットを特定していると警告する。
同氏は特に、信頼できない相手とのピア・ツー・ピア(P2P)取引、SNS上での財産の誇示、仮想通貨関連のブランド衣服の着用などは控えるべきと主張している。