欧州連合(EU)は、デジタル資産を利用して制裁逃れを行い、親ロシアの偽情報キャンペーンを資金面で支援した個人や組織に対して新たな制裁を科した。

EUの15日の発表によれば、9名の個人と6つの法人に制裁が課された。対象には、親ロシア的な偽情報を拡散したことで知られるクレムリン系インフルエンサー、シメオン・ボイコフ氏(通称オージー・コサック)も含まれている。

ボイコフ氏は、2024年の米大統領選におけるジョージア州での不正投票を示唆するフェイク動画の拡散にも関与したとされている。TRMラボの15日のレポートによれば、彼は現金および仮想通貨を通じて複数のチャネルで寄付を募っていた。

同レポートによると、ボイコフ氏は顧客確認(KYC)を実施していないリスクの高いロシアの取引所と関わりがあり、現金から仮想通貨への交換サービスやダークネット市場を通じて資金を受け取っていた。

ボイコフ氏の関連ウォレットでの資金の流れ Source: TRM Labs

ロシア発ステーブルコイン企業も制裁対象に

制裁の対象には、モルドバの2024年大統領選およびEU加盟の是非を問う国民投票に対し、買収工作を通じて影響を及ぼそうとしたとされる企業A7 も含まれている。同社は、モルドバから逃亡中のオリガルヒ、イラン・ショール氏によって設立されたという。彼は国内3行から10億ドルを国外に流出させるために同社を利用したと報じられている

この企業は、すでにイギリス政府によって今年5月にモルドバ選挙介入の責任を問われて制裁を受けている。A7はルーブル建てのステーブルコイン「A7A5」とも関連があり、この通貨は、ロシアで制裁対象となった仮想通貨取引所ガランテックスの後継と目されるグリネックスにおいて主要な決済手段として台頭している。

仮想通貨が地政学的対立に果たす役割

TRMラボによれば、A7の設立目的は当初、ウクライナ侵攻後のロシアによる貿易を促進することだったとされている。TRMラボは、グリネックスおよびA7A5が「中央アジア経由で中国からロシアへのデュアルユース(軍民両用)物資の輸入に関与している可能性が高い」と指摘する。

デュアルユース物資とは、民生用・軍事用いずれにも利用可能な技術、素材、機器のことを指し、兵器開発や監視装置への転用が可能であるため、多くの国で輸出が厳しく規制されている。これには民間用コンピュータのプロセッサからミサイル誘導装置、衣料用の綿素材や火薬成分となる化学物質まで含まれる。

TRMラボはEUの決定について、「資金の流れから偽情報の拡散に至るまで、影響工作のライフサイクル全体に関与する個人およびインフラを標的とすることで、EUはより包括的な対抗戦略への転換を示している」とコメントしている。

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