仮想通貨取引所BitMEX(ビットメックス)のリサーチ部門が5月4日、仮想通貨イーサリアム 2.0(のPhase 0。以降ETH 2.0)立ち上げを早ければ2020年7月予定と見込んでいることを明らかにした。その一方で、既存イーサリアム 1.x(ETH 1.x)基盤のレイヤー2(L2)スケーリングソリューション、料金(gus)なしのトランザクション(取引)ソリューションが公開され始めているそうだ。
分散型金融(DeFi)のシンセティクス、L2スケーリング基盤のデモを公開
分散型金融(DeFi)プラットフォーム「シンセティクス(Synthetix)」は5月6日、ETH L2調査チーム「オプティミズム(Optimism)」との提携のもと、オプティミスティック仮想マシン(OVM)上で動作するシンセティクス取引所デモ(l2.synthetix.exchange)を開始したと発表した。
シンセティクスは、複数の資産・仮想通貨を組み合わせる形で、金など任意の資産と同等の価値を維持するというETH 1.x基盤の分散型デリバティブ。シンセティクス上で組み合わせた資産を「シンセティクス・アセット(合成資産)」または「シンセ(Synths)」と呼んでおり、独自トークンsETHを利用しピアツーピア(P2P)取引を行える。
オプティミズムは以前、非営利研究組織プラズマ(Plasma) グループとして知られていた組織。
オプティミスティック仮想マシン(OVM)は、オプティミズムが(プラズマ・グループ時代に)2019年7月に提唱。スマートコントラクトおよびdAppsのスケーラビリティを最大2000TPS(トランザクション/秒)まで改善できるL2技術「Optimistic Rollup(オプティミスティック・ロールアップ)」の中核となる存在で、 レイヤー1(L1)と連携しつつ、セキュリティ上のトレードオフなしに膨大な数のトランザクションを実行できるという。また、L1のスマートコントラクトが動作可能なEVM(イーサリアム・バーチャル・マシン)準拠の実行環境(VM)となっているそうだ。
シンセティクスの発表によると、オプティミズムは2019年10月開催のDevcon Vにおいて、カスタムバージョンのOVMを利用したユニスワップ(Uniswap)デモを公開したという。今回のシンセティクスのデモでは、カスタムコードを必要としない(一般的な)OVMのアルファ版をベースとしているそうだ。またこのOVMは、2020年後半にリリース予定という。
ETH 2.0が実現しなくても、ETH 1.xには多くの利点がある
コインテレグラフに対して、シンセティクス創業者のケイン・ワーウィック氏は、2020年初めにこの動向を予見しており、ETH 1.xはまだまだ生き残るだろうと明かした。
同氏は「ETH 2.0が実現しなくても、ETH 1.xには多くの利点がある」とし、OVMによるL2ソリューションを利用することで、毎秒数千件の取引を行えると付け加えた。
「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行せずに、ETH 1.xのスケーラビリティを大幅に改善できる可能性がある」と見ているそうだ。
ブロックチェーンゲーム用リレイヤーのベータ版メインネットが立ち上げ
Biconomy(ビコノミー)が5月4日、分散型アプリ(DApps)やスマートコントラクト向けのリレイヤープラットフォームのベータ版メインネットを立ち上げたと発表した。
分散型取引所(DEX)構築用ミドルウェア「0xプロトコル」と同様のソリューションにあたり、ブロックチェーンゲーム用のユーザー向けポータルなど基盤・インフラとなる「Relayer(リレイヤー)」を作成できる。
DAppsやスマートコントラクト、また各種サービスの内容を オフチェーン・オンチェーンのどちらで行うかなどの切り分け、抽象化などを行うことで、料金(gus)の削減を実現しているようだ。
Biconomyのソリューションを統合したDAppsは、ユーザー名とパスワードを介して利用できるようになり、スマートコントラクトや料金(gus)といった技術的なやり取りなどが不要になるという。
またBiconomyは、5月6日の発表において、メンテナンス、ガスの最適化、システムの監視、健全なセキュリティ対策の有効化などの課題・問題点が、好ましくないユーザー体験を誘発し、ユーザーの定着(ユーザーオンボーディング)を妨げていると指摘した。
ETH 1.xのアクティブなアドレス数が増加傾向か
DeFi(分散型金融)人気の高まりや、ETH 2.0公開への期待からか、ETH 1.xのアクティブなアドレス数が増加傾向にあるようだ。ETH 1.xのアクティブ・アドレス数の変動を確認できる「Ethereum Active Addresses historical chart」を見ると、2020年1月には最大でも約35万アドレス(1月16日)だったが、3月21日には約50万アドレスに到達した。同チャートを見る限り、50万アドレス以上となるのは2019年6月16日以来のことだ。
ETH 1.xの統計情報サイト「イーサスキャン(Etherscan)」を見る限り、ユニークなETH 1.x(ウォレット)アドレスの作成も加速しているようだ。
2020年1月中の1日当たりの作成件数は5万~10万の範囲に収まっていたが、2020年3月中は10万件以上の日が多くなった。2020年3月6日時点では、一意のアドレスの総数は9600万を超えている状態だ。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン