ホワイトハウスは水曜、かねて注目されていた仮想通貨に関する報告書を公表した。166ページに及ぶこの文書には、銀行政策、ステーブルコイン、不正資金対策など、仮想通貨業界の多岐にわたる側面への政策提言が盛り込まれているが、ビットコイン(BTC)準備金に関する新たな展開は見られなかった。

報告書には、ビットコイン準備金が今年3月に設立されたことには一応言及があるものの、それ以降の進展や戦略的活用に関する内容は含まれていない。

ビットコイン至上主義者らは、政府がエルサルバドルのように積極的にビットコインを購入する政策をとるべきだと主張しており、今回の結果に失望を示している。

報告書提出の時のトランプ大統領ら Source: Bo Hines

ホワイトハウス報告書、準備金構想に踏み込まず

1月23日、就任からわずか3日後に、ドナルド・トランプ米大統領は「デジタル資産市場に関する大統領作業部会」を設立した。そこでは180日以内に政策提言をまとめるよう指示されていた。

それ以降、米政府は仮想通貨に積極的な姿勢を見せており、多くの関係者は戦略的ビットコイン準備金に関する大幅な進展を期待していた。ホワイトハウスが準備金に関する最新情報を含むと報じられた際には、ビットコイン支持者のピート・リッゾ氏が「シートベルトを締めろ」とフォロワーに呼びかけたほどだ。

Source: Pete Rizzo

しかし報告書では、ビットコインについて何度も言及されており、仮想通貨業界の起点としての位置づけもされているものの、「戦略的ビットコイン準備金」に関する記述は最終ページに1度きりにとどまった。

しかもその内容は、3月6日の大統領令で定められた条項をそのまま繰り返しただけのものであった。

この結果に、ビットコインコミュニティは落胆の声を上げている。米国の仮想通貨マイニング・ホスティング企業コンパス・マイニングの最高収益責任者CJ・バーネット氏は、コインテレグラフの取材に対し、「今回のホワイトハウス報告書に戦略的ビットコイン準備金の明確な記載がなかったのは、機会損失になるだろう」と語った。「市場はリーダーシップを期待していたのに、あいまいな内容しか得られなかった」と指摘する。

またバーネット氏は、準備金の進展がないことが「不必要な不確実性」を生み、米国が他国に後れを取るリスクをはらんでいると警鐘を鳴らした。

インフルエンサーのジョージ・ボディーン氏は、ビットコイン準備金をめぐる不作為を「政府による新たな裏切り」と表現した。

一方で、より楽観的な見方もある。カナダのWeb3投資家のカルビン・エア氏は、報告書にビットコインの記述があること自体が前進だとし、「多くの人がビットコイン準備金に関する詳細がないことに失望しているが、仮想通貨の仕組みを詳細に説明しようとしている文書を作った点は評価すべきだ」と述べた

ビットコインジャーナリストのスージー・ヴァイオレット・ワード氏は、「この報告書は明確な政策転換を示している。初めてビットコインが他のデジタル資産とは区別され、個別に引用・理解された」とし、「準備金に関する詳細は少ないが、ビットコインが戦略資産として扱われていること自体、政策スタンスが変化している証左だ」指摘する

ホワイトハウスは政策の明確化を強調

ビットコイン準備金に関する記述は少なかったものの、報告書には仮想通貨規制のアップデートに向けた詳細な政策提案が含まれている。

大統領デジタル資産諮問委員会の事務局長、ボー・ハインズ氏によれば、報告書で示された政策提言はすでに3段階に分けて実行に移されているという。

  1. 解体フェーズ:バイデン前政権下で導入されたルールの撤廃

  2. 構築フェーズ:業界と協力し、成長を促す法整備を進める

  3. 実装フェーズ:法律として施行する段階

報告書の主な目的の1つは、デジタル資産に関する「分類体系」を確立し、それが証券か商品かを判定することにある。その中で、仮想通貨の現物市場に関しては商品先物取引委員会(CFTC)が監督すべきであり、証券関連には米証券取引委員会(SEC)が関与すべきと提言している。

また、銀行が仮想通貨のカストディ(保管)業務や関連サービスを提供できるようにすること、銀行免許の取得プロセスをより簡潔かつ透明にすることも報告書には盛り込まれた。

課税に関しても、米国内では各機関が異なる扱いをしており、仮想通貨保有者にとって長年の懸案だった。今回の報告書では、デジタル資産を証券または商品に準じた「新たな資産クラス」として、税法を修正した上で課税すべきとの提言がなされている。

ハインズ氏は、「規制強化に逆戻りするような状況を絶対に起こさないためにも、政策と法整備によって仮想通貨の採用を推進する」と述べた。

なお、バイデン政権下の規制環境は「オペレーション・チョークポイント 2.0」と揶揄されたが、ハインズ氏は「われわれが3.0に直面することはない。それを防ぐ最良の方法の1つが採用である」と強調している。

とはいえ、ビットコイン準備金の本格導入には、もう少し時間がかかりそうだ。

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