コーネル大学の貿易政策担当教授であり、ブルッキングス研究所の上席研究員であるエスワード・プラサド氏は、中国のデジタル人民元が国際決済通貨としての人民元の役割を強化するものの、「世界の準備通貨としてのドルの地位にほとんど影響は与えない」と分析している。

プラサド氏は、プロジェクト・シンジケートで発表したオピニオン記事の中で、中国のデジタル人民元は最終的に国際決済に使われる可能性があるが、米ドルの地位を脅かすには程遠いと述べている。

まず、現実的なデータから指摘する。中国の人民元は2016年に国際通貨基金(IMR)の特別引出権(SDR)の構成通貨の1つとなったが、それでも人民元の国際決済シェアは2%を下回っている状況だ。人民元建てで保有されている世界の外貨準備のシェアも約2%となっている。

中国は2015年にSWIFTシステムをバイパスする、クロスボーダーインターバンク決済システムを同州している。プラサド氏は、将来的にデジタル通貨電子決済(DCEP)と、このクロスボーダー決済システムがリンクされ、デジタル化する可能性を指摘している。

そうなれば、中国と貿易・金融で強いつながりのある発展途上国は、デジタル人民元で「直接、取引の請求と決済を開始する可能性がある」と記している。

国際通貨となるために必要な信頼

デジタル人民元がグローバル化する可能性を予測したプラサド教授だが、「それでも、DCEP自体は、外交の投資家が人民元を準備通貨と見なすかどうかにはほとんど影響は与えない」と主張する。

それは、中国が依然として、資本の流入・流出を制限し、人民元の為替レートを中央銀行が管理している。そのような政策は「すぐに大幅に変化しないだろう」と、プラサド氏は指摘する。

中国の人民元が安全な通貨としてみなされるには「信頼が必要だ」と、プラサド氏は強調する。

「それは法の支配の遵守と政治システムにおける確立されたチェック&バランスによって促進されるものだ」

中国の共産党一党支配のシステムは、そのような信頼を生むチェック&バランスの保証するものではないと、プラサド氏は指摘する。

米国はトランプ政権による統治の混乱があることは、プラサド氏も認めているが、相対的な米ドルの地位は揺るがないとみている。

「国際金融ではすべてが相対的だ。米国は経済的優位性、深く流動的な資本市場、そして依然として確固たる制度的枠組みは、米ドルが世界に主要な準備通貨としてライバルを持たないことを意味する」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン