仮想通貨関連スタートアップの多くが、実態に見合わない高額な評価額を掲げることで、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達の機会を逃している──そう指摘するのは、仮想通貨特化型VCである10Tホールディングスの最高経営責任者(CEO)、ダン・タペイロ氏だ。
5月14日にトロントで開催されたコンセンサス・カンファレンスのパネルディスカッションで、タペイロ氏は次のように語った。
「なぜか創業者やCEOたちは、自社の収益の50倍から80倍の評価額で資金調達すべきだと考えている。それでは我々の出資者にリターンを返すのが非常に難しくなる」
そのため10Tホールディングスでは、評価額が高すぎる案件については、たとえビジネスモデルに魅力を感じても、最初から投資対象外としているという。
「そうした案件の多くは、我々にとっては最初から除外される。どれだけ優れたビジネスでも、初期の評価額が適切でなければ投資しない」
実際、10Tホールディングスは過去に200件以上の案件を評価額の理由で見送っており、その中には破綻したFTXやブロックファイ、セルシウスも含まれていたと明かした。
タペイロ氏によれば、同社が投資対象とするのは、評価額が4億〜5億ドル以上でありながら、評価額/収益の比率が10倍以下のプロジェクトであるという。
VCにとっては、評価額が現実的であるほど、リスクを抑えながら高いリターンを得られる可能性が高くなる。また、次回の資金調達やエグジット(出口戦略)においても合理的な評価が有利に働く。
「評価額は極めて重要な要素だ」とタペイロ氏は強調した。
ピッチブックの5月13日のレポートによれば、2025年第1四半期における仮想通貨スタートアップへのVC投資額は、前四半期比で100%以上増加し、60億ドルに達した。一方で、案件数の増加は8.8%にとどまっており、評価額が高止まりしている現状を裏付けている。
VCはトークンと株式を組み合わせるべき
同じパネルに登壇したパンテラ・キャピタルのダン・モアヘッドCEOは、VCが仮想通貨スタートアップに投資する際には、未公開株式とトークンを組み合わせて受け取ることを推奨した。
「それぞれにメリットとデメリットがある。市場は常に振り子のように動く。トークンが割高で、株式が割安な時期もあれば、その逆もある。だからこそ投資家は、株式とトークンの両方に幅広く分散投資するべきだ」
モアヘッド氏が率いるパネラ・キャピタルは、10Tよりも積極的な投資戦略を取っており、投資先スタートアップの86%でリターンを上げている。さらに、そのうち22社は評価額10億ドル以上のユニコーン企業に成長しているという。