ブロックチェーン分析企業サイファートレースは2月12日、2019年第4四半期の仮想通貨関連犯罪レポートを発表した。仮想通貨犯罪は、取引所のハッキングから、ポンジ・スキーム(出資金詐欺)、ピラミッド・スキーム(ネズミ講)、出口詐欺(exit scam)に移行しているという。取引所ハッキングによる被害額は3億7070万ドル(約407億2000万円)で66%減少(2018年比)、詐欺・窃盗・不正使用による被害額は41億ドル(約4503億5000万円)と533%増加(2018年比)した。

(出典: サイファートレース

またサイファートレースは、米銀行上位10行中8行が、P2P形態含め不正な仮想通貨取引所に口座を持つ者による不適切な取引をサポートしてしまっていると明らかにした。EUの場合は上位10行のうち5行において、不正な仮想通貨取引所に口座を持つ者が存在したそうだ。

詐欺・窃盗・不正使用による被害額増加は、適切なKYC(本人確認)を行わないP2P取引所口座、盗難IDにより不正に作成した取引所口座を利用しマネーロンダリング(資金洗浄)を経た資金が、従来銀行に流れ込む可能性を示唆しており、FATF(金融活動作業部会)の規則を遵守する銀行など金融機関がAML(マネーロンダリング対策)リスクにさらされるという。

同時にサイファートレースは、FATFが2019年6月21日に公表した仮想通貨ガイダンスにおいて、AMLのため仮想資産サービス提供者(VASP)にトラベル・ルールを要求した点にも触れ、ほとんどの銀行は取引所・仮想通貨サービスプロバイダーを「マネーサービス事業者(MSB)」として識別・監視できていないと警告。VASPについては、サイファートレースが主導する顧客情報共有用オープンソースソフトウェア「TRISA(トラベル・ルール情報共有アーキテクチャ)」の統合・テストを複数企業が開始していると主張している。

トラベル・ルールは、取引の際に金融サービス提供者同士が顧客情報をお互いにシェアすることを定めたルールで、VASPが送信者・受取人の氏名や口座番号などを収集・共有することが定められている。米国・中国・日本・韓国・EU諸国を含むFATFを構成する37ヵ国に適用され、2020年6月には実施予定だ。

リスクのある銀行は?

サイファートレースの調査によると、米銀行トップ10行は毎年20億ドルの不正な仮想通貨取引を処理している状態にあるという。また規制当局により、2019年は世界中の銀行に対してAML違反関連の罰金が62億ドル(約6810億円)発生したそうだ。最大の罰金額は51億ドル(約5602億円)、最大罰金額を除いた罰金の平均金額は8540万ドル(93億円)だった。

トラベル・ルール導入などの規制により、2020年はこの罰金額が増加する可能性があるという。プレスリリースによると、サイファートレースのスティーブン・ライアンCOOは、「仮想通貨が従来の金融サービスと絡み合うようにつれ、AMLとCFT(テロ資金供与対策)に関するコンプライアンス・リスクが高まっている」と述べた。さらに、「現在、仮想資産は銀行口座や決済ネットワークに広がっており、銀行はリスク対処方法を見つける必要がある。このリスクの軽減には、コンプライアンス担当者は新しい資産クラスとしての仮想通貨を可視化するツールとインテリジェンスを活用する必要がある」と明かした。

同社デビッド・ジェバンズCEOは、次のように続けた。

「好むと好まざるにかかわらず、従来考えられていたよりも、銀行は多くの仮想通貨関連の口座と決済ネットワークに関係している。銀行は不正な仮想通貨関連ビジネス、テロ資金、その他のリスクの発見に向けた新たな機能を必要としている」


翻訳・編集 コインテレグラフ日本版

 

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